ビーガン肉

最近の世の中に奇妙なものが好まれているという話だ。

 主にアンダーグラウンドの世界のようだが、庶民にまでその話は伝わっている。

 都市伝説のような話だ。

 それは「ビーガン肉」と呼ばれるものが流通しているという。

 初めてその話を耳にした時は「珍しい草食動物の肉なのか?」と考えたが実際は違うらしい。

 どうも国内外のビーガン主義の人間の肉だという。

 「人肉食?」

 「タブーなのでは?」

 「犯罪だろう?」

 まさに都市伝説らしさがプンプン匂う話だ。

 最初は海外でビーガンを嫌った人が彼らとトラブルを起こし殺人にまで発展したことがきっかけのようだ。

 そしてたまたま犯人が飲食店をやっていて、ビーガンの死体を処分するのを兼ねて店のメニューにしたら大繁盛したという。

 映画にもなったほどの実話だが、実際に試してみようと各地でビーガンが行方不明になる事案が多発した。

 ビーガンの肉は美味いようだ、健康にいいらしい、不老長寿や美容に効果があるという具合に流行り出した。

 当のビーガンたちは隠れるような生活を強いられた、儲け話に乗ってきている裏組織に狙われたら逃げられない。

 隠れビーガンをあぶりだすようなことも行われているようだ。

 やり方は簡単だ。

 監禁中の食事を肉か野菜かの二択にするだけで済む。

 野菜しか食べなければ確定するが、全く食事を摂らないという反抗までをするビーガンもいるようだ。

 でもその行動そのものが証明していると思わないのだろうか。

 絶食三日目には処分されるのは決まりごとになっている。

 体内の排せつ物がきれいに無くなるので、解体に手間がかからないのでむしろ歓迎されている。

 肉を食べれば速やかに解放されるのに残念な話だ。

 そうやって世界各地で狩られたビーガンは肉となって各国の富裕層に売られているようだ。

 末端価格は金(ゴールド)の数倍になるようだ。つまり300グラムのステーキなら一千万円を超えるという。

 これだけ儲かる話だが危惧されている問題がある。

 それは資源管理だ。

 ビーガンは隠れるようになり、街のビーガン専門店は無くなってしまった。

 そこで供給業者(ビーガン拉致犯)は裏にビーガン専門店を作ることにした。

 表向きは安心安全のビーガン店。

 拉致から完全守り秘密厳守。

 価格もさほど高額じゃない善良なメニュー。

 そんな店を各地に開店させビーガンを養殖し顧客が望む肉質を提供できるようになり、より順調な供給ルートが保たれるようになった。

 今後はビーガン村をつくり、そこ住むも住人全てをビーガンだけにして何世代もビーガンというのを作り出そうとしている。

 他の地域とは隔絶されて独自の掟をつくり肉を生産する。

 ビーガン主義からすれば楽園のような世界。

 実態は自給自足の牧場なのだが。

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