第2話
それにしても、おかしいですわね? この乙女ゲームのアプリって、たしか純粋に恋愛だけを楽しむゲーム。中にはR指定ギリギリのラブシナリオが見られるコーデもありましたが、基本はイケメンと勉強ミニゲームをしたり、ライバルプレーヤーとコーデバトルをしてシナリオを進んでいくタイプのゲーム。ライバルプレーヤーはいたものの、コーデバトルは勝っても負けてもイケメンが褒めてくれたり慰めるために出てくるミニゲーム。恋の障害になるようなお邪魔虫要素である『悪役』なんてシナリオにもいないので、このように衆人環視のもとで責められるいわれはないはずですわ。
第一、ゲームでは
コテンと考えに耽りながら、山吹の房を弄るが……何も思い当たることがない。もしかして、でっち上げでもして冤罪被せて断罪する小説のヒロインの真似でもしているとか? いえ、それなら断罪された『悪役』に逆にやられてしまうのがお決まりですわよね? あまり詳しくないのですが、ネット小説では『悪役令嬢』モノが流行っていたとは聞きましたし。まあ、どうでもいいのですが。
とりあえず、聞きたくもないですが先を促しましょう。おバカたちが邪魔すぎて、目の保養時間が減ってしまっていますし。
受け取った愛用の扇を開き、顔の半分まで隠す。隠しながら少し息を整え、おバカ三人――いえ、四人衆? を見据えた。おバカたちは睨み付けられたとでも思ったのか、一瞬怯んでこちらに噛みついてきた。
「なっなんだ! 文句でもあるのかッ!?」
「貴女のような高慢な方に虐められて、ララさんも困っているんですよ!!」
「お前みたいなやつが、殿下にふさわしいと思い上がるなッ」
「…………」
代わる代わる五月蝿いですわね。今の発言だけでも充分ですが、黙っているだけで勝手に盛り上がってくれそうですわね? もう少し、様子を見てみましょうか。侍女たちがもつかは、わかりませんが。
そう思っていると、ついに四人目が小動物のようにプルプルと震えながら、潤んだ水色の瞳でおバカたちを――いえ、バカその
「アっアルくん! わっわたしは、大丈夫だから……」
「ララ、君が優しいのはよく知っているが、こう言うことはハッキリさせておかないと」
「でも……」
ちらっとこっちを見て怖がるフリ、しなくてよろしくってよ? こちらには、ニヤつく口の端が見えていますもの。ほら、みなさい。バカその
何も言葉を発していなかったせいか、小さくこぼれたため息が食堂の中にいきわたり、緊張感をもたらしてしまった。見ている側も苦痛よね。
「ひとつ、お聞きしますが。誰に向けて発言しているか、ご存じですわよね?」
「「「「……は?」」」」
あら、四人揃ってとてもおマヌケなお顔になったわね。その顔は、面白いけれど。そのままわたくしの見えないところで、コントでも始めてしまえばよろしいのに。
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