織田信長、高校生に転生する

第一章 今日から始める「天下布武」

第0話 後悔がある人生

————子供の頃、とある少年に憧れた。——————————————


 青年は鉄パイプを振り下ろした。


————そいつはいつもみんなを引っ張って—————————————


 くぼんだ肉の感触を、嫌に手で強く感じた。


————おれはそれを羨ましいと、惨めにも思った。—————————


 澄み渡る青空があるのに、灰色の建物が、邪魔するように立っている。


————そんな存在になりたかった。————————————————


 灰色の壁に囲まれた彼は、動かなくなった男の体に腰かけて、ふう、と一息つく。


——あんな風に、皆に迎え入れられるような人間になりたかった。———


 無人の路地裏で、ガラの悪い男どもを昏睡させた彼は、


 〝これでいい〟


 そう、満足げに、空に手を伸ばした。

 誰も拒まない、気持ちの良い空だ。


———それが自分の喜びで、皆の喜びでもあればよかった。——————


 突き抜けるような青空は、けれど。

 そんな青一色とは裏腹に、彼の周囲は、とても平和ではなかった。


 足が不規則に曲がった、巨躯を誇る悪漢。

 鼻が折れて、顔の中心がすこしへこんだ、小柄の優男。

 そして、顎の一部に青あざのできた快男児。


 とても痛々しい、殺伐さつばつとした空間で男は薄く笑う。


 そして、幾度は唱えたのかもわからない言葉を、浮かべた。


 〝みんなが喜ぶなら、これでいい。ここがいい〟


———だけどそれはできないから、出来る人に託すことにした。————


 そうして、彼は皆のいる場所に戻った。

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