第29話 バッドコミュニケーション。

街中でひたすらに謝り続けた両助は怪訝な視線を向けられながらも、次の行動の確認を取る。

せっかくの校外学習、皆で一致団結しようではないか。

別にさっきのことを忘れたわけではないが、皆には忘れてほしいので次の目標に意識を集中させよう。

そして両助の問いかけに最初に答えたのは佐伯さん、次に白石さんだ。


「じゃあ皆、次はどこに行きたい?」

「変態君はどこに行きたい?」

「いやごめんって…」

「変態っちが行きたいところ以外でいいんじゃね?」

「いやだからごめんって…」

「「謝るのはこっちだろ?」」

「ごめんって楠木さんごめんってだから許して」


 その必死な謝罪に楠木さんは隠した頭を少し出して、答えてくれた。


「い、いえ、私はもう謝ってもらったので大丈夫です…」


 そして楠木さんの宣言もあり、二人からの警戒度を落としてもらった両助は次の目的地考察の意見を聞くことにした。

 仕切り直すように先程と同じ言葉を吐いた両助。

 両助はここで皆の意見を聞いて、一番人数の多い処に行こうかと考えていたが、今は楠木さんへの罪悪感もあるので、彼女の生きたい所に自分も賛同して選ばれる確率を上げようとしていた。


 すると以外にも皆から意見が上がる。

 まだここに訪れたばかりで右も左もわからぬ状態だと思ったが、驚いた。

 なのでここは下調べをしている楠木さんが一歩リードすると思ったが当てが外れた。

 発言は佐伯さん、啓介、淳也、白石さん、楠木さんの順で行われた。


「私、アクセサリ見たい!」

「俺、食いもん探したい」

「俺はなんかあそこに静かな茶屋があったから落ち着きたい」

「淳也と一緒」

「わ、私はちょっと本屋に寄りたいかな」

「君達ちょっと自由過ぎない⁉」


 見事に一組を除き、バラバラだった。

 そんな五者四様の意見は最終的に淳也、白石さん組の茶屋に行くことになった。

 ちなみに決定はじゃんけんだ。

 茶屋が二人、本屋が二人となったので公平に決めた。

 そうして両助は淳也に負けてしまった。ごめんね、楠木さん。

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