第19話・対生成と対消滅って

おしまい・対生成と対消滅って


場、ねえ・・・


また話をめんどくさくしてしまって、ほんと、ごめんと思ってる。


だけど結局、数学で記述された自然現象を言語に還元するとこうするしかなく、こうすると、世界の根本メカニズムを実にうまく解釈できるんで、どれだけ抽象的であろうと観念的であろうと、この説明はいちばん事実に近似してるようなんだ、今のとこ。


そしてまたへんなことを書くけど、まじで今日で最後にしとくから、許してほしい。


というのも、量子場でひっきりなしに素粒子が生成され消滅する、って件がまたなんというか・・・ややこしてくても、今後どうしても必要になってくるんだ。


そこだけ書いて、めんどうなやつはおしまいにする。


例えば、ある素粒子がエネルギーを得て、ちょっとパワフルな素粒子になったとする。


この事案を、場の量子論は、「素粒子がエネルギーと出会って双方が消え去る」と同時に「パワフルになった新たな素粒子が生まれる」と表現する。※1


つまり、エネルギーを得たと同時に、素粒子は別人に入れ替わるのだ。


俗な例え話だけど、「百円玉×5枚と五百円玉×1枚が混ぜられた途端、千円ぶんの小銭の山は一瞬で蒸発し、代わりに千円札1枚がこつ然と誕生する」というような物質そのもののエクスチェンジが、ミニミニ世界では実際に行われてるのだ。


素粒子同士がハチ合わせるたびにいちいち、だ。


要するに、この世界の裏側には鏡面のようなもうひとつの世界が存在し、こちらの出来事をすべて見てて、百円玉5枚と五百円玉1枚が混ぜられた瞬間に、次元の扉を開けて「千円札」と反物質である「反千円札」を送り込み、「反千円札」を「反百円玉」5枚と「反五百円玉」1枚に両替したのちに正規の百円玉5枚と五百円玉1枚にぶつけて対消滅させ、差し引きで「千円札」1枚をこちらの世界に残す、という手の込んだことをしてるようなのだ、数学的に記述すれば(そしてそれを言語に還元すれば)。


・・・わ、わかった、もう書かないよ、これ以上はややこしくしないと誓う。


でもねでもね、この作法を用いれば、世界が生まれる瞬間が、時間の開始が、空間の成り立ちが説明できるのだ。

そういう話を、ぼくはしたいだけなのだ。


おしまい・・・だけど「宇宙編」につづく


※1 この際の物質としての素粒子とエネルギー(もつぶ状の素粒子)には、反物質である反素粒子と反エネルギーが付き添って対消滅し、新たに生まれる素粒子には反物質である反素粒子がペアとなって対生成される。が、その後に述べてるように、その順序は複雑に入り組む。

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