第14話・陽子と電子って
14・陽子と電子って
話を元に戻すと、物質構成素粒子であるクォークが三つ、グルーオンという引力素粒子に拘束されて、陽子は誕生したんだった。
だけどその内部構造は、「玉が三つ接着剤で固定された」などという画づらとはほど遠い。
何度も何度も何度も書いて恐縮なんだが、素粒子とはただの波なのだ。
なんか知らないけど「無」がいつもいつも震えてるやつ・・・くらいにイメージしといた方がいいかもしれない。
というわけで、「陽子という名の半径エリア」にいるクォーク三つは、グルーオンという鎖でつなぎとめられた、飛び交うエネルギーだ。
クォークたちの活動半径は、自己半径の100〜1000倍(これが事実上の陽子の半径)だから、陽子なんて事実上スッカスカの、密度がほぼゼロの風船※1、ということになる。
さて、電荷の合計が+1になった陽子は、いよいよ電荷が−1という相性ピッタシのキャラを呼び込むことになる。
人類の男の子と女の子が好き合うように、磁石のS極とN極がくっつき合うように、+電荷と−電荷もまた引き合うことを運命づけられてるのだ。
その−電荷キャラとは、もちろん「電子」だ。
このおてんばな子は、+1の電荷を持った陽子に引き寄せられ、マンツー(ウー)マンのパートナー契約を結ぶ。
ついに、物質としての最小単位である原子の成立だ。
原子チームに組み込まれた電子は、同時にすごい運動量で中心から遠ざかろうともし、居心地のよろしい距離感のあたりに周回軌道を確保する。
こうして、陽子という原子核を中心に、その周囲を電子がぐるぐると回る水素原子が・・・というモデルも、しかし不確定性原理と波動関数がはばをきかせる今となっては、古典的なものだ。
つづく
※1 陽子に実体はありそうにないが、エネルギーに換算される質量はある。そして、比喩に用いた風船の密度はもちろんゼロではない。ただその中身は、今まさに説明中のスカスカな素材で満たされてるという哲学的な矛盾は生じる。
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