第12話・この絶妙さって
12・この絶妙さって
とんでもなく強い力で引きつけられたクォーク三つは、「陽子」そして「中性子」という、原子核を構成する部品に格上げされる。
どの階層から上を物質と呼ぶべきかは哲学的な問題になるけど、このふたつは工学にも用いられるほどの素材だから、すでに姿かたちを持つ「もの」と呼んでいいかもしれない。※1
この陽子と中性子が、いよいよ直接的に原子核を構成するわけだ。
ところで、どちらもクォーク三つが結びついたものなのに、どうして二種類の別ものになるんだろう?
原子の構築を進める前に、この素性をはっきりさせておく。
実は、クォークには電荷の違う二種類のものがあったんだ。※2
片方の「アップクォーク」の電荷は、+2/3。
もう片方の「ダウンクォーク」の方は、−1/3だ。
陽子は、アップが2個にダウンが1個くっつくので、三つのクォークの電荷を合計すると、なんとぴったし+1になる。
中性子は、アップが1個に、ダウンが2個で、差し引きすると、こちらはなんとぴったし0。
こうなる前提でくっつくのか、くっついて偶然こうなるのかわかんないけど、こうしてこの世界に「男の子粒子」である陽子と、「おかまちゃん粒子」である中性子が発生するのだ。
だけど、これだけで世界のすべてがつくれるわけじゃないことは、あなたにも直観的にわかるはずだ。
その通り、後になってここに、電荷が−1の「女の子粒子」が現れて一大センセーションを起こすことになるので、お楽しみにね。
つづく
※1 何度も書いてるように、それは幻想だが。
※2 本当は六種類ある。
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