第三十五話 最後の希望



 冒険者総合雑談スレッド part498



 ……。

 …………。



 514:名無しの冒険者

 マジ!?


 515:名無しの冒険者

 うわあああああああ


 516:名無しの冒険者

 警報キタ―――(゚∀゚)―――― !!


 517:名無しの冒険者

 オリジナルスタンピード発生中


 518:名無しの冒険者

 ああああああああ


 519:名無しの冒険者

 びっくりした


 520:名無しの冒険者

 [悲報] 日本終了のお知らせ


 521:名無しの冒険者

 お!


 522:名無しの冒険者

 でもFPSやめられないんだけどwwwww



 ……阿鼻叫喚の声が凄まじい勢いで流れていく。



 770:名無しの冒険者

 政府ちゃんからのお願い

 1.指示が出されるまで一般人は避難禁止(お偉いさんは早々に九州へ)

 2.冒険者は最寄りのダンジョンで限界まで魔石採集してね♡


  尚、現在は一般人がダンジョンに押し寄せ、全面立ち入り禁止になった模様

  ついでに各地で食料を巡る暴動も発生


 771:名無しの冒険者

 >>770 悪魔かな?


 772:名無しの冒険者

 >>770 地獄で草


 773:名無しの冒険者

 >>770 普段はワイらに押し付けといて、危険が迫ったらわが身可愛さにダンジョンに潜ろうとする一般ピーポーさんさあ……


 774:名無しの冒険者

 >>773 「冒険者は魔素に耐性できててズルい」とか知らん親戚に怒られたで


 775:名無しの冒険者

 >>774 底辺職とかバカにされとったワイら大出世やん笑


 776;名無しの冒険者 

 ほんでクソみたいな基本指針が出されたわけやが……

 おまいら、今何してる?


 777:名無しの冒険者

 >>776 遺品整理中や


 778:名無しの冒険者

 >>776 ダンジョンにも入れんし、昔のアルバムとか見直しとるわ

 あの頃は楽しかったな……


 779:名無しの冒険者

 おまいら諦めんなやw ワイは優雅に国外逃亡といくで 

 今は全然つながらない予約サイトとにらめっこ中や


 780:名無しの冒険者

 >>779 一部の金持ちたちが買い占めたせいでどの便もプラチナ価格やで

 今やワイら庶民には手の届かない高級品よ 


 781:名無しの冒険者

 しかも世界同時に起こってるから逃げ場所なんてないぞ?


 782:名無しの冒険者

 ま? ほな、ワイはどうしたらいいんや……?


 783:名無しの冒険者

 >>782 人類みんな、それで頭を悩ましているんやでって

 

 784:名無しの冒険者

 好きなことしたらええよ

 今が最後の自由時間なんやから

 

 785:名無しの冒険者

 >>784 悲しいこと言うなよ……

 これが終わったら、またいつもの日常に戻るんだろ?


 786:名無しの冒険者

 ……


 787:名無しの冒険者

 お、特番はじまた


 788:名無しの冒険者

 みんなでN〇Kみようず


 789:名無しの冒険者

 さ~て、最前線の様子は……


 790:名無しの冒険者 

 >>789

「凶悪モンスター襲来」「日本軍、壊滅する」の二本立てでお送りしま~す


 791:名無しの冒険者

 悪夢の始まりやな


 792:名無しの冒険者

 !?


 793:名無しの冒険者

 なんやこの幼女


 794:名無しの冒険者

 メスガキ美少女キタコレ!!! これで勝つる!



 ……。

 …………。






 掲示板を賑わした騒動より、時は少し遡る。


「……それじゃあ私はやることがあるから」


「うん、いってらしゃい。マコ」


 白い部屋を脱出して壁に囲まれた空間に来た後、007小隊の仕事があるとかで去ろうとするマコ。ここにスノーの味方となりうる人たちを呼んでくれたらしい。

 ただスノーには少しだけ気になったことがあった。


「あの、すぐ帰ってくるんだよね?」


「……絶対、帰ってくる」


 寂しそうな笑みを残して、マコの姿が見えなくなる。

 

 それならどうして蔓のテーブルやら蛇口を回収したんだろう?

 半年いなくなるとかの話はどうなったのかな?


 今更な疑問がスノーの頭の中に浮ぶ。

 暫くするとぞろぞろと四人の少女たちがやってきた。


「あなたがスノー? マコの友達って聞いたけれど……」


 と、綺麗な黒髪を腰まで伸ばした少女が聞いてくる。

 確か手柴雪乃さん、だったかな。何だかクールビューティーって感じだ。


「こんにちは、スノーちゃん。

 私とゆきのんはね、マコちゃんに助けられた仲なんだ。よろしくねっ」


 と、人懐っこい笑みで挨拶してくれる少女。

 フワフワした金髪とその朗らかな雰囲気もあって、見てると凄い癒されるなあ。


「元鬼人隊の谷島風佳。よろしく、マコ姉の大切な人さん」


 と、無表情で手を差し伸べてくるショートカットの女の子。

 鬼人隊? マコ姉? マコに妹さんなんていたんだっけ?


「あ、鬼人隊とかは風佳が勝手にそう呼んでただけだから。

 私と風佳は元007小隊のメンバーでマコちゃんの仲間だったんだー」


 と、穏やかに訂正してくれるおかっぱ頭の女の子。

 ちょっとおどおどしてる感じだけど、凄い優しい印象だ。


「うん、よろしくね。ぼくはスノー。

 ぼくもマコに助けられた一人なんだ、仲良くしてくれると嬉しいな」


 マコのおかげでもう恐怖はなかった。風佳の手を取る。

 その冷たさに驚いたのか風佳の手がピクリと反応し、それでもちゃんと握り返してくれた。

 

「ねえっ、スノーちゃんはーー」






「それで、マコ姉はどこ?」


 それから深い境遇を話したりした後、風佳が唐突にそんなことを聞いてきた。

 スノーは、足元の地面が一気に薄くなったかのような感覚に陥る。


「え? 007小隊の仕事があるんじゃないの?

 ぼくはマコからそう聞いたよ?」


「……とっくに解散してる。

 今私たちは学校からの指示待ち。私のスキルで無理やりここに来た」


「それじゃあ何でーー」


「ちょ、ちょっとみんな見てっ。これマコじゃないっ?」


 慌てた様子で雪乃さんが見せてくれたのは、ヘリコプターからの映像だった。

 右上に「生放送中」、中央上には「現在の前線の状況」と書かれたその画面にはそれとは全く違う状況が映っていた。


 ヘリコプターの上。澄み切った空をバックに、見覚えのある女の子が髪を棚引かせて立っていた。

 パタパタという駆動音のもと、女の子ーーマコは不敵に笑った。



「テレビの前でピーピー震えてる人類のみなさん、聞こえますかー?」


「おお、いきなりすごい煽り」


 風佳が妙に嬉しそうに声を上げる。

 ちょ、ちょっとマコ、流石に言いすぎなんじゃ、と言おうとしてーー気付く。

 マコが己を助けてくれた時と同じ顔をしていることに。

 

 まさかっ、マコはーー


 思考が追いつかぬまま、マコが決定的な言葉を放った。


「今から超絶強いこの私がオリジナルダンジョンを攻略しますので、それまでは必死に馬鹿みたいに守っててくださいよ。ざこの皆さんでもそれくらい出来ますよね?

 それではっ」


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