第9話

9話

◉優しく


 その日はアリーナを連れて僕は宿に戻った。薄暗い安宿の部屋の中。アリーナの初めての相手をすることを決めた。

 シャワーで身体をきれいにするとお互いにベッドの上にしゃがみ込む。アリーナの裸はとても綺麗だった。

 僕は優しく優しく、と意識を集中しながらキスをして、アリーナの身体をほぐすように、アリーナが痛くないように。優しく、初めての経験がずっと良い思い出であれるようにと、願いを込めて愛撫した。

 

「どうやったらイイのかな」

「アリーナは痩せてるから前からだと骨が当たって痛いと思う。後ろからにしようか」


「バックってやつ?じゃあ、ハイ」


 アリーナはベッドの上で体勢を整えた。僕はそっと、でも少しずつ激しく、アリーナが痛くありませんように。と気にしながらセックスをした。


「アアッ…アッアッ。アーー!!」



シーツが血で汚れた。


「痛くない?大丈夫?」

僕はそれだけが心配だった。


「だ、大丈夫だカラ…もっかいやって」


「わかった。痛かったら言ってよ」


 僕らは汗まみれになりながら愛し合って、何度もセックスして、キスして。何回も何回も愛を確かめ合っていた。


「あなた、私のこと好きでしょ」

「そりゃ、そうさ。じゃなきゃ抱くもんか」


「でも、私の方がアナタを好きよ」

「それはどうかな」


 何時間、愛し合っただろうか。僕たちは疲れて寝るまでずっと身体を重ねていた。

 起きた時、腕にアリーナの小さな頭が乗っていて、なんて可愛いんだろう、とそのまま小一時間眺め続けた。

 アリーナの金の髪をたまに触って優しく頭を撫でて。そうしてるだけの時間がすごく幸せだった。

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