[ 233 ] 健康診断
僕はベットに寝かされると、頭に変な装置を付けられた。リュカさん曰く属性測定器の上位版らしく、より詳細がわかるとか。
「よし! あとは寝てて大丈夫ですよ」
「わかりました。少し休ませてもらいますね」
「はーい、ごゆっくり」
リュカさんが部屋から出ていくと、途端に瞼が重くなって来た。フォレストを出てからまともに布団で寝てなかったな……。
それにしても先ほどの小競り合い……。僕のゼレンから無詠唱ジオグランまでの発動間隔が明らかに短かった。
マスターから魔法の再使用感覚は10秒程度と聞いて長いなと思ってたけど、もしかして練度を上げるたびに1秒程度短くなってるんじゃないか?
さっきなんて5秒程度しか空いてない。僕の重力魔法は練度5だから5秒程度なら計算が合うな……。後でリュカさんに聞いてみよう……。
少し頭を空にしたら一瞬で睡魔が襲って来て、視界が暗くなった。
――ドーン!!
「なんだ?!」
爆発音で目が覚めた。
まさかもう衝突が始まってしまったのか?!
そう思って慌てて窓から外を見ると、何も無い。いや隣の部屋の窓から黒煙が上がっている。
僕は慌てて部屋を出て隣の部屋へ向かうと、ドアが吹き飛んでいた。
「げーほげほ! あーもう! また失敗だよー!」
黒煙の中から出て来たのは、鼻の上を煤を付けた黒髪のショートカットの女の子だった。
「大丈夫ですか?」
「ん? あんた誰。ここは関係者以外入っちゃダメだよ」
「あ、えっと……リュカさんの紹介で」
「あー、お前がロイエか」
髪型の通りちょっと男勝りな女の子だ。それにしてもこの子も僕の名前を知ってるのか。どれだけ知れ渡ってるんだ……。個人情報保護を叫びたくなる。
「話は聞いているよ。回復術師なんだろ。あたいは爆薬製造にしか興味ないからどうでもいいけど、ジジイが昨日からソワソワしてたから会ってやってよ」
爆薬製造……? 確かルヴィドさんがミルトを助ける時に、星食いのアジトの一つを爆破したって言ってたけど、この子も噛んでるのかな。
「もしかして、ここってルヴィドさんの……」
僕はここでその名を出すべきじゃなかったと後悔することになる。なぜなら僕はこのあと押し倒されて殴られ首を絞められるからだ。
「ぐぇっ」
「テメェ、ルヴィドの仲間か?! ああん?! あいつはどこにいる! 吐け!」
「痛っ! ちょっ、落ち着いてぐえっ!」
「リーラ! 何してるの! フリューネル!」
締め殺される寸前のところで、リュカさんがリーラと呼ばれる少女を弾き飛ばしてくれた。
「ちっ! あたいはこいつに用があるんだ。リュカ姉は黙っててもらおうか」
「やめなさいって! いきなり押し倒して殴りかかる人がいますか!」
どうやら2人はこの魔法研究所の同僚というよりも、もう少し深い仲であるようだ。でなけらばリュカさんを姉などとは呼ばないだろう。
「おい、ルヴィドの居場所を言え」
「げほ、ルヴィドさんはアクアリウムにいて今はこのヘクセライに向かってるよ」
「本当だろうな?」
「嘘を言う必要がある? 君はルヴィドさんに何か恨みでもあるの?」
もう僕に用はないとばかりに、洋服をはたくとモクモクと煙が出る部屋へ無言で戻って行った。
「ロイエさん、すみません。リーラが……」
「いえ、大丈夫ですけど、彼女はいったい?」
「健康診断の結果と合わせてお伝えしますので、一度部屋に戻りましょうか」
「そうですね」
名前を聞いただけであそこまで感情を露わにするなんて、余程の恨みがあるんだろうか。ルヴィドさんが恨みを買うような事をするとは思えないけど……。
部屋に戻ると僕はベッドに座らされた。椅子に座ったリュカさんは、僕の頭についていたヘッドギアみたいな装置から何やら部品を取り外して操作している。
「なるほど……うーん」
「何かわかりました?」
「そうですね……。ロイエさん最近魔力回路に異常がありませんでしたか?」
僕はハイネル村からナッシュへの道中と、ゼクトに治療だと言われて無茶された話をすると、リュカさんは目を丸くした。
「その時飲まされた薬の事を覚えていますか? このくらいの小瓶で少し酸っぱい味がしませんでした?」
「ええ、確か栄養ドリンクのような、少し酸っぱい味で……なんで知ってるんですか?」
「やはり……」
ゼクトの持っていた薬が、何か危ない物だったのだろうか。一応魔力回路は治ったけど……。
「その薬は王都の研究所で作られた物です。以前回復解放軍のメンバーがマローネさんを救出する際に参考に回収した物が保管されてます」
やはりゼクトは王と繋がりがあるかもしれない……。永遠の命を欲する王と、その護衛をする護衛班、雑務を行う監査班、王都の研究所と騎士団しか使えないギルド。
ゼクトはこれら全てに関係している気がする。彼女は何者なんだ。
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