[ 186 ] 夜

 絶対だぞ!置いていくなよ!と店長に散々釘を刺されてロゼと店を出ると、既に日は落ち辺りは酒飲み達の声があちらこちらから聞こえてくる。


「ごめんなさい。勝手にたこ焼きの話の提案してしまって……」


 店を出て適当に歩いていると、ロゼが申し訳なさそう俯き顔で先ほどの件について謝って来た。


「ううん。僕も良いと思うよ。たこ焼きに絶対合うよ。ナルリッチさんには一言も話さずに出て来ちゃったから、気になってたし。店長には悪いけどいい土産になったと思えば」

「そうですか。そう言って頂けると嬉しいです」


 それにしても、いまナッシュはどうなっているんだろうか。フォレストを出る時に騎士団がナッシュを封鎖したと聞いたけど、ロゼも一度帰省している事から、僕がいた頃のような状態になっているのだろうか。


「ロイエさん、ナッシュが恋しくなりました?」

「そうだね。みんなどうしているかな」

「よかったら、わたくしが帰省した時のお話をいたしましょうか?」

「いいね! 聞きたい!」


 それから街をぶらぶらを歩きながらロゼさんからナッシュの様子について話を聞いていると、懐かしい名前がどんどん出てきた。


「……それで、テトさんがたこ焼き屋をやっている日もありまして」

「あのテトが?」

「はい、ご学友の方と一緒に仲良くたこ焼きを売っていましたよ」

「そっかぁ、仲直りしたのかな」


 僕があったときはいじめにあっていたので、あの一件がきっかけかわからないけど、仲直り出来たならよかった。


「……それとエルツさんが、いえ……。これは本人から聞いた方が良いですわ」

「えぇ、それすごく気になる……」

「ふふ、お楽しみにしておいてくださいませ」


 エルツにジャック、キーゼル親方、みんな元気にやっているかな。


「あ、それとナッシュのマスターですが、あの一件があってギルドマスターの任を解かれました」

「そうなんだ……」


 僕を逃がすためにナッシュで騎士団相手に攻撃した一件が罪に問われてのことらしい。


「これまでの実績と市長からの擁護もあり、大事には至りませんでしたが……」

「一度ナッシュに顔を出して謝らないとね……」


 今となっては、アウスは僕を泳がす必要があったからナッシュにいても、即監査班に報告されて連れていかれることはなかったかもしれないが、あの時はそんなことはわからなかったし。


 思い出に花が咲いて気が付くと、僕らは街の宿屋の一室でお酒を片手に話し込んでいた。


「ロイエさんとナッシュを出てフォレストまでの旅も短い間でしたが、楽しかったですね」

「そうだね」


 ベットに腰を掛けているロゼへ視線を向けると顔が赤くなっている。肩や手が当たりなんだか距離が近い。


「ふぅ。ロイエさん、わたくし少し酔ってしまいましたわ」


 そう言いながらロゼが僕の肩に頭を載せてきた。


「え、あの……ロゼ」


 ロゼが上目遣いで僕を見つめてくる。


「ロイエさん……」


 これは……男女のそういうやつだよな……。


 僕は覚悟を決めて、ロゼにキスをした。


 舌で触れたロゼの舌は、お酒のせいか冷たかった。

 僕はロゼの肩に手を回し抱き寄せると、クスリとロゼが笑った。


「ふふ、レオラさんに怒られちゃいますね」

「ロゼっ!」


 僕は我を忘れて、ロゼをベットへ押し倒した。


「あぁっ、ロイエさんっ」


 レオラには大人になるまで恋人は作らない。やるべきことがたくさんあるなどを大きなことをいっておいて、僕はロゼと肌を重ねた。ナッシュの話をしていて人肌が恋しくなったのもあるかもしれな。あふれ出る気持ちが止められなかった。


「あん、そんなところ……」

「はぁはぁ、ロゼ……ごめん。僕は……」

「いいんです。いまは何も言わないでください。きゃ」


 その日、僕らは一つになった。

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