[ 184 ] ロゼとぶらり
「ロイエさん、わたくしもう終わりますので、レオラさんを誘って夕飯ご一緒にいかがですか?」
「うん。そうだね。装備も渡さなきゃいけないし……。じゃあ待ってるね」
「はい」
近所の人に譲ってもらった小さなテーブルでポーチの中身を整理していると、ピヨが相談があると言われた。
「ロイエは、この街を出てもう戻らないピヨ?」
「うーん、そうだね。今のところデザントに戻る予定はないかな?」
「そっかー。……ロイエ、今日は家に戻っても良いピヨ?」
「あの屋敷に?」
あそこは店長からの依頼でピヨに出てもらったから、戻ってほしくはないけど……。
「どうして?」
「ピヨもロイエとふぉれすと?に行くピヨ! だから最後にあの家で寝たいピヨ。大人しく寝るだけピヨ」
「え? ピヨも来るの?」
「ひどいピヨ! ロイエがあの家を出る代わりに衣食住を約束したピヨ!」
そうだった。そんなことを言った気がする。それでピヨには屋敷を出てもらったんだった。
「だからここを出る前にもう一度、あそこで寝ておきたいピヨ」
「そっか。誰かきても脅かさない、静かに寝るって約束出来るならいいよ」
「ありがとピヨ!」
鼻歌を歌いながらパタパタと頭上を飛んでいるピヨ。本当にポルトさんの娘なんだろうか。もしそうだとしてもピヨはその記憶を引き継いでいないようだし、ピヨの事はピヨが決めれば良い。
「ロイエさん、お待たせしました。まずは港のレオラさんのところに行きましょうか」
「はい」
ロゼがグイーダに引き継ぎをすますと、その頭上ではピヨはまたねーと、ギルドの空調窓から空へ飛んでいってしまった。ピヨがいない生活は久しぶりかもしれないな。
「どうですか? 受付嬢の仕事は」
港に向かいながらロゼに話を振ってみると、意外と明るい答えが返ってきた。
「それが結構楽しいんです。元々貿易も激務だったので、懐かしい感じがして、問題だらけのギルドは結構改善点がたくさんありますし」
「よく今までやってこれたな?って感じですか?」
「ええ、まぁそんか感じです。ラッセさんやグイーダさんの力が大き過ぎました」
シュテルンはサブマスターだったが、マスター同様に実務業務にはそこまで手を出していなかったのかもしれないな。
「とりあえず私がいなくても問題ないくらいには、簡略化できる物は簡略化したので、なんとか回ると思います」
「ありがとう。本当はロゼがそこまでやる必要ないのに」
「いえ、ロイエさんの役に立てたなら……わたくしは……」
夕暮れで日が暮れて来ている中、俯いたロゼの表情はよく見えないけど、僕のためにやってくれたなんて嬉しいの。
「ロイエー! ロゼー!」
話しながら歩いていると、いつのまにか港に着いていて、レオラが僕らを見つけてくれた。
「どうしたの? なんかあったー?」
「港長! これはどうするんでしたっけ?!」
「ああもう、ちょっと待ってて」
港の中ではアクアリウム行きの船が来ており、相当忙しそうだ。レオラがテキパキと港の男たちに指示を出していて、嬉しそうに男たちが働いている。
元々サバサバした性格をしているレオラは、どうやら歓迎されているようで、非常に男たちが生き生きしているのがわかる。
「ごめんごめん、なんだっけ?」
「えーっと、これミネラさんに頼んでた装備が出来たから渡しに……「港長ぉおおおおお!」
「あーもう! 装備ありがと! 大事にするってミネラに伝えておいて! ごめんね!今めっちゃ忙しくて! 明日の見送りは行くから!」
「港長ぉおおおお!」
「はーい! 今度はなによー!」
想像してた数倍忙しそうだった……。レオラの体力と魔法、性格がなければとてもじゃないがやっていけないだろう。市長の選任は正しかったと言える。
レオラも夕飯に誘おうと思ったけど、あの調子じゃ当分無理そうだし、ロゼと二人で夕飯を食べに行くことになった。
「うーん。どこに行こうか」
「そうですわね。店長の店はどうでしょう?」
店長の店は、行くたびに緊張するからあんまり行きたくないんだけど、近いし安いし早いしうまいしで店長本人意外に文句はない。……そんなこと言ったら殴られるけど。
「そうですね。もう来れないかもしれませんし、行きましょうか」
僕とロゼは直したばかりの噴水広場にまた戻ると、再開したばかりの店長の店を訪れた。
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