[ 159 ] 割り振り
「……というわけで、明日からの警備の割り振りについて説明しますね」
「まずロイエさんですが「私はロイエと二人で港の仕事があるからよろしくねー」
ラッセさんが話してる途中に、レオラが発言を被せてしまい軽く睨まれた。
「まずロイエさんですが「あー! わたくしもご一緒にお仕事したかったですわー!」
「オホン!」
空気読まないメンバーばかりだからラッセさんの苦労が見て取れる。それにしてもやっと長かったギルド暮らしが解除される。明日はレオラと二人で港の仕事に向かわなきゃいけない。毒男の件は心配だけどあれから一切手掛かりがない。待てよ? 僕とレオラが二人でここを離れたらいけないんじゃ?
「まずロイエさんですが「あ、ラッセさん、僕とレオラが二人で港の仕事に向かうのは問題があるんじゃないですか?」
「だから! 今! 話そうとしてるじゃないですか!」
「ごめんなさい」
ラッセさんの言葉を遮って怒らせてしまった。僕と話を聞かない人の仲間にされてしまった。
「もう……。ロイエさんの仰る通り、外面的にはロイエさんかレオラさんがここにいないといけないので港長と協議した結果、申し訳ないのですが明日はレオラさんのみ港で雇うという話になってしまいました」
「え? 僕は?」
「申し訳ございません。人手不足のため慣れてるレオラさんの方が良いと言うことになってしまって……。ロイエさんは引き続きギルド待機になります」
「あの、お金ってどうなります?」
「待機に関する賃金は出しますが港のの仕事程は出せません」
「ですよね……」
困ったな。港の仕事は実入が多いから当てにしてたんだけど……。しかし、こんな状況だし仕方ないか……。
「わかりました。明日の入港作業はレオラのみで、僕は引き続き待機しておきます」
「ピヨ、飽きちゃったな」
「あら、ならピヨちゃん明日はわたくしと外に行きますか?」
「行くピヨー!」
ピヨの存在がバレたら何かまずいことが起きる気がして隠していたが、ギルドのメンバーもロゼさんやブリュレも仲良くしてくれている。
「ピヨ、行ってもいいけどロゼさんに迷惑かけないでね」
「わかったピヨ」
ピヨはパタパタと僕の肩から飛ぶと、ロゼさんの肩に止まった。視線の先にいるロゼさんがなんだか、不満げな顔をしている。
「あの、ロイエさん、わたくしのことも呼び捨てで呼んでもらえますか?」
「え? またどうして」
「レオラさんやブリュレさんは呼び捨てなのに、わたくしだけさん付けは距離を感じます。敬語もやめてください」
「……そうですね。わかりました。……ロゼ、ピヨをよろしくね」
「はい!」
「ピヨ」
背後から負のオーラを感じて振り向くと、ラッセさんが足をパタパタと叩いていた。
「説明の途中なんですが……?」
「ごめんなさい……」
それからは全員黙ってラッセさんの話を聞いた。ブリュレはよく通う南門の警備を担当して、ロゼはこの街にまだ慣れていないので、市内散策をして地形を覚えることになった。
「ロゼさん、明日はグイーダに街を案内させるので、朝はギルドへ来てください」
「あの、ロイエさんに案内役を頼んじゃダメですか?」
「聞いていましたか? ロイエさんは万が一の時のために待機が……」
「午前中くらいならいいんじゃない? ロイエはもう一週間ここで待機だよ。流石に可哀想だし」
それは言える。ずっとここにいて店長の料理のテイクアウトにも飽きたし、外の風景をみたり、ミネラさんやファブロさんの進捗も確認しに行きたい……。
「そうですね。わかりました。明日の午前中はロイエさんとロゼさんで市内散策。午後には戻ってきてください」
「わかりました。助かります」
「……ちょっと、抜け駆けはなしだからね?ロゼ」
「わかっておりますわ」
ロゼとレオラの間で火花が散っている……。
その後、ロゼとブリュレからフォレストの現状やハリルベルがどうなったかの話を少し聞いていると、グイーダ、マスター、シュテルンが市長との会議から帰ってきた。
「ガーハハハハ! ミアに弟子がいたとはな!」
「そーなんすよー!」
「いや自称ですよ。マスター騙されないでください」
ミアさんの旧友であるマスターと、ミアの話を聞きたいブリュレは意気投合したらしく、マスターがずっと昔の武勇について語っている。
ロゼとレオラは、すっかり意気投合したのかグイーダを交えて談笑している。
「シュテルンさん、毒男のそれからの動向って何か進展はありました?」
「いや、各家を回って身元確認をしたが不審な人はいなかった。また事件以降街の出入りでも引っかかってないな」
「ならもう逃げてる可能性が高いですね」
「そうだと良いけど、また来るかもしれないからね……。とりあえず一週間動きがなかったんだ。あと一週間様子見て、パトロールはするけど各門の警備は解除する予定だよ」
「そうですか、僕も明日は街にいる時は不審な人がいないか警戒しますね」
「ああ、頼むよ」
明日からは各門を警備していた港の男たちが引き上げて、警備が手薄になる。ロゼとブリュレに来てもらってそこは補えると思うけど、子供に毒を飲ませた男はどこに消えたのだろうか。そして誰なのか……。
この日の夕飯は、レオラとロゼにグイーダさんもギルドのキッチンでご飯を作ってくれて明日に向けてと言うことで、軽く宴会を開いてみんなでご飯を食べた。
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