[ 138 ] 店長の特製プレート
「まぁいいや、とりあえず座れ」
流石に店の中では大丈夫だろうと、ミアさんに繋がってる紐を離すと、言われるがままに僕らは指定されたテーブルに着いた。
「うちの夕飯メニューは一つしかないからな、二人分でいいな?」
「え、あ……はい」
「おい、依頼を受けにきたんじゃないのか」
そうだった……。
「あの、店長さん! 依頼の「黙って待ってろ!」
ものすごい怒られた……。めっちゃ怖い。ミアさんは早く幽霊屋敷に行きたそうに指をトントンしている。
「ミアさん、まだ少し日が出てます。もう少し時間を潰して日が完全に落ちた方が幽霊も強くなると思うんですよ」
「確かに……! お前賢いな……、最大まで強くなった幽霊と戦った方が楽しいな」
「そ、そうですよ。超強くて長期戦になる可能性もありますし、今のうちに夕飯をここで食べながら依頼の詳しい内容を聞いておきましょう」
納得してくれたのか、ミアはうんうんと頷くとマントから本を取り出して読み始めた。
「その本は……?」
「これか? これは『徹底対策!幽霊攻略!』という本だ。これによると幽霊は火風氷に強く、雷に弱いらしい」
俺は雷だから大丈夫だと、得意げに自慢するミアさんはいつもより口数が多いように思えた。任務が終わってストレスが減ったからだろうか。
「へいお待ち! 当店特製のデザントプレートだ」
デザントのマップが描かれたプレートに、肉や野菜、ライスが乗っており、一番右端。おそらく東側であろう場所にはフルーツが添えられている。
「さぁ食え」
腕を組んで仁王立ちしながら、食えと言われても……。プレートに描かれた噴水広場のすぐ側には、この店を模った家の形のチョコレートが乗っている。
「重要なところから……食えよ?」
「わかりました……」
重要なところか……。気になるのは西側のフルーツ。これを先に食べたらNGって事だよな……。まずは噴水広場に置かれたサラダに手をつけた。
「おい、なぜ噴水広場を先に食べた。西側じゃないのか?」
「この街はいくつかの民族によって作られました。その中でも最初に民を一つにまとめたのはこの噴水です」
「ふ、正解だ。水魔法使いにより貯められた水は、何よりも大事なものだ」
全然ご飯を食べてるという感じがしない……。次はどこだ。どこを食べれば……。ふと、西側のマップに剣の形をしたクッキーが刺さっているのに気付いた。手で摘んで食べる。
「砂の剣を食べた理由は?」
「えっと……。街の中でこの店が一番歴史の深いというのは知っています。ですが、この街にって噴水の水の次に大切なのは、砂の剣です」
「ふむ、正解だ。砂の剣は西側にポツンと置かれているが、この街に住む者はあの剣を大切に祀っている。はるか昔にモンスターを退治した砂の王、彼がいなければこの街はなかっただろう」
よしっ……あと少し。砂の剣の次に重要な場所……。残りは西側のライス、港のステーキ、この店を模ったチョコレート、ギルドのスープ。東側のフルーツ。
港は他との貿易に切っては切れない、特に調味料や農作物は輸入に頼っている。歴史ある場所のはずだ。
その次にこの店。昔からこの場所で港の男たちの胃袋を満たし、立ち寄る冒険者の傷を癒してきた。
ギルドは、噴水業務の巻き取りや、依頼の受託。様々な面で役に立っている。
この順で食べると、店長はどれも正解だと頷いてくれた。
「いいじゃないか。たった半日でここまで理解度を深めてくれるとは、嬉しいぜ。さぁ最後の食事だ」
残ったのは西側のライスと、東側のフルーツ。どっちだ……。西側はこの街の原型を作った人達だ。先に食べた方が……。ここは外せない……。えーい!
「パクっ!もぐもぐ!」
「な! テメェ……。なぜ東側のフルーツを先に食べた」
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