[ 033 ] 金貨集めは終わらない
ミアさんがリンドブルムを全滅させた後、それからの事後処理は全てマスターにやってくれた。
リンドブルムに破壊された街の被害状況や被害者の確認。魔石となったリンドブルムの処理、そもそももっと早くにリンドブルムの侵入を検知出来なかったのかなど、警備上にも様々な問題が浮き彫りになったようだ。
僕も昨日はリンドブルムとの戦闘でそれなりに血を流した為、安静にしろとマスターに言われて、夕飯をご馳走してもらうと早めに ハリルベルの家に帰って寝た。
「ロイエ、おはよう」
「おはよう。ふぁ〜」
「昨日はすぐ寝ちゃったね」
「うん、色々あったから疲れてたみたい」
昨日マスターにご馳走して貰った夕飯の残りの硬くなったパンを齧りつつ、今日の予定をハリルベルと話してしいた。
「ジャックの店に思いっきり火炎弾当たったらしくて、修理のため休業らしいんだ」
「あらら」
「だから、今日は昨日良さげな募集してたAエリアの店を見て、ついでにBとCエリアも回ってみようかなと」
「おっけー、俺は昨日の騒ぎで採掘所にも火炎弾が飛んだから採掘所の安全確認やら行うって親方が」
「そうなんだ。気をつけてね」
ギルドカード発行のための金貨五枚、納品期限まであと六日。
現在の所持金
ジャックの飲食店で稼いだ金貨一枚
生活費にと、ハリルベルに借りた銅貨数枚はあるけど、同時にこうした生活費のチリ積借金も少しある。 ハリルベルはいつでも良いよと言ってくれてるから、甘える事にした。
「あと金貨四枚を六日。一日銀貨七枚は稼がないと間に合わないなぁ」
「せっかく重力魔法覚えたし、それなら堂々と使えるから何かピッタリな仕事があるといいね」
「そうだね」
簡単な朝食を終えると、 ハリルベルと共に家を出て彼は山の方へ、僕は中央地区へ向かうことにした。
テトはあの後、ミアさんの魔法の音で目が覚めた。どこも怪我は無かったけど、終始何かを考えているようで、怖かったんだと思いそっとしておいた。
飲んでしまった魔石についてもロゼに話をしたかったし、一度西側を、南下してDエリアへと向かうことにした。
途中ギルドの前を通ったけど、どうやら役所の人が来ているらしく忙しそうだったので、寄らずに通り過ぎた。
Dエリアに入りロゼの魔石買取屋を目指して歩いていると、少しだけ焦げ跡のある家も何軒かあったが、ひどい被害というわけではなさそうだ。
ロゼの店は火炎弾が当たらなかったらしく、昨日と同じ状態のままそこにあった。ただ、店に入ろうとドアに手を付けるも……開かない。
「留守かな……」
親が貿易商で自身も携わっていると言っていた。昨日の件で色々と動きがあったのかもしれない。明日また訪ねてみよう。
Dエリアを抜け、Aエリアへ到着するとここが一番被害が大きかったらしい。無傷な店を探すのが難しいくらい、どの家もどこかしら焦げ跡があった。
「あ! おい! あいつだ! 捕まえろ!」
「え、え? え?」
身なりの良いでっぷりしたおじさんが、僕の方を指さしたと思ったら、店から横幅に巨大な警備員が出てきて捕えられてしまった。
「あのー、僕が何かしましたでしょうか……」
思い出した。ここは昨日テトが盗みに入った店か、この二人がテトを追いかけてるを見た気がする。もしかして僕をテトの共犯か何かと勘違いしてらっしゃる?
「しらばっくれやがって! 目撃者も証拠も揃ってんだよ!!」
「いやー、きっと人違いだと思いますよ?」
「はぁー?! お前だろ! うちの宝剣をリンドブルムに刺して、こんなに血塗れのボロボロにしたのは!」
「はい! 僕です! 申し訳ございません!」
その場で地に頭を擦り付けて、誠心誠意土下座した。
「謝ったって治らねぇんだよ! 手を出せ! ほら!これにサインしろ!」
「え、ちょっと何を……」
「買取同意書だ! こんなにしちまった宝剣は買い取って貰うしかねぇだろ? それとも王国騎士団に引き渡してもいいんだが?」
「はい! 買い取らせて頂きます!」
王国騎士団は勘弁してください。その時点で僕の人生ジ・エンドしちゃう……。泣く泣く指にインクをつけて書類に拇印しようとして、手が止まった。
「え、金貨五十八枚……?!」
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