【完】高校デビューに失敗した俺、幼い頃に結婚を誓ったS級美少女姉妹と入学式で再会、幸せ学園生活がはじまりました。
菊池 快晴@書籍化進行中
第一話 二人の天使と再会した。
幼い頃、不思議な光景を目撃した。
まったく同じ顔をした可愛い女の子二人が、公園のブランコで遊んでいたのだ。
天使が並んでる。そう思ったことを、今でも鮮明に覚えている。
「ねえ、どうしておんなじ顔してるの?」
今思えば、あれほど簡単に女子に声を掛けられたのは、あの時が最後だった。
二人は姉妹だった。一卵性双生児という単語を知ったのは、随分と後の話だ。
それから俺は姉妹と仲良くなり、ひと夏の間だけだが、毎日のように遊んだ。
顔はもはやあやふやだが、姉は大人しく、妹が活発だったことだけは深く記憶に刻み込まれている。
短い間とは思えないほど仲良くなり、俺達は色々な思い出を共有した。
青春と呼べるのはこの期間だけだったと、当時の俺は知る由もないが。
本当に楽しくて、毎日が幸せだった。
なぜそれがひと夏だったのかというと、彼女らが突然姿を消したからだ。
怪談話のように聞こえるかもしれないが、当時の俺にとってはまさにそんな気持ちだった。
唯一覚えている約束は――「三人で結婚しようね」だった。
◇
都内某所。
高校デビューをする陰キャ学生はごまんといるだろうが、まさに俺もその一人だった。
目的はただ一つ、楽しい高校生活を送るためだ。
「……最初が肝心だよな」
ワックスの着け方は動画で覚えた。何度も繰り返し練習したので、そこそこ物にはなっているだろう。
中学校から遠く離れている高校なので、見知った顔はいない。
期待と興奮、そして不安。入り混じった感情を胸に、学校に足を踏み入れる。
自分の名前――
次々と現れるクラスメイトたちは、俺なんかよりも随分と大人びていた。
初日とは思えないほど気崩した制服は、明らかに高校デビューの俺とは違う。
綺麗な化粧、格好いいピアス、俺では到底できないような整った髪型。
偏差値が高い学校ということもあって、頭髪服装、携帯の持ち込みすらも許可されている。
だが、ハッキリ言ってガリ勉に全く見えない。陰ながら努力してるのだろうかと、ひそかに想いを馳せる。
隣座った男子生徒が、俺に声を掛けて来た。
「なんか、緊張するなあ」
整った柔らかそうな黒髪に、綺麗な二重と優しい声。
これは一軍だ、と高揚した気持ちを抑えつつ返事を返す。
「た、確かに」
しかし、相手の反応はあまりに薄かった。どもったことが原因なのか、何をどう見破られたのかはわからない。
失敗した。すぐにそう判断した。
まだ一人目、大丈夫。そう言い聞かせながらそわそわしていたら、周囲が楽しそうにグループで談話していることに気づく。
なぜ? と思っていた脳内で浮かんだ疑問は、誰かが直ぐに答えてくれた。
「てか、SNSで喋ってるから、初対面な感じがしねーよな!」
これは後から知ったことだが、今は入学式より前に、SNSで繋がりを持つ。
グループチャットもすでに出来ているらしく、俺は初めから蚊帳の外だったのだ。
ここから取返しが付くのか……そんな不安なことを考えていると、周囲が騒めきだす。
皆が見ている目線に視線を向けると、そこにはありえないほどの美少女がいた。
ありえないほど綺麗なロングの黒髪。
宝石のような瞳と完璧な二重幅。日本人離れした小顔と、その姿勢の良さ。
テレビで見るようなアイドルなんかよりも、随分と可愛く見える。
天使――その言葉が真っ先に思い浮かぶ。
だが皆が興奮しているのは、それだけじゃなかった。
天使が――二人並んでいる。
瓜二つ、いや、一卵性双生児だろう。
まったく同じ顔が、並んでいた。
同時に、幼い頃の記憶が呼び起される。
『ねえ、どうしておんなじ顔してるの?』
◇
入学式を終えると、教室に案内された。
HRで自己紹介をするそうだ。
校舎は比較的新しく、四月ということもあって桜が綺麗だ。
ヒノキに近い木の香りを感じながら、黒板に張り出された席順に着席。
手持無沙汰だったが、スマホをいじるのはやめておいた。
それよりも、誰が誰と仲がいいのか、人間観察をしている。といっても、すでにデビューは失敗している気がするが。
自分がここまで他人の目を気にしているのは、やはり過去のことが原因かもしれない。
そんなことを考えていると、入口から天使が現れた。
どうやら同じクラスだったらしい。
もちろんと言えば変かもしれないが、二人続けて。
噂によると、同じ名前だったり、兄弟や姉妹は別のクラスに分けられると聞いたことがある。
だが、それは嘘だったらしい。
明らかにテンションが上がっている男子生徒、お近づきになりたいであろう女子生徒が騒ぎはじめる。
確かに、俺も目を奪われていた。
すると天使の一人が、「あ」と声をあげた。
もう一人の天使も、「あら」と口を開く。
その目、その声、二人の天使は、なぜか――俺を見ていた。
後ろを振り返っても、誰もいない。
やはり、俺を見ている。
天使はまっすぐ俺に向かってきた。
もしかして、ジロジロと見ていたことを怒られる?
二人は、俺の机の前で止まる。
近くで見ると、その整った顔にさらに驚いた。
まるで海外の人形のように綺麗だ。
俺と違って、神様は念入りに気合を入れたらしい。
内心はドキドキしていたが、女性の目から逸らすな、と、ネットで見た陽キャ講座を思い出し、勇気を振り絞ってまっすぐに見つめていた。
その眼光の鋭さに思わず負けてしまいそうになった瞬間、二人の天使は――表情を崩し、満面の笑みを浮かべる。
天使が、大天使に昇格した。
周囲も、おおっと声をあげる。
そんなことはお構いなしに、二人の天使は俺に声を掛けてきた。たぶん、間違いなく俺に。
「やっぱりそうだよね」
「本当ですね、びっくりしました」
日本語を話してるのには違いないが、その意味がさっぱりとわからない。
びっくり? 何がびっくりなんだ? ていうか、なんで俺に?
意識を、頭に切り替える。
何か、どこか、いつか、俺はこの天使たちと会ったことが――ある。
古い記憶、引き出しの奥から引っ張り出されていく。
「律、久しぶりじゃん!」
「律さん、私たちのこと、忘れてしまいました?」
一卵性双生児――同じ顔――公園のブランコ。
ひと夏の思い出。
『三人で結婚しようね』
「もしかして……沙羅と楽々……?」
大人しい姉の名前は
活発な妹の名前は
彼女らは、俺と結婚を誓った姉妹だ。
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