バスカット・グラスの箱舟を守る者
仲仁へび(旧:離久)
第1話
滅びゆく世界バスカット・グラス。
その世界には、そこから脱出する者たちが乗る箱舟があった。
しかし、箱舟はもろい。
人の悪意にさらされると、たやすく壊れてしまう。
だから、箱舟を守るものが必要だった。
その護衛の名前は「己」、斧を持った男性だった。
「己」は、箱舟に無理やり乗ろうとする者たちと毎日戦った。
箱舟が作られ、人々が乗り込み、浮かび上がるまで。
ずっと一人で戦い続ける。
彼は紛れもなく正義の人で善良である。
だが、そんな彼を箱舟に乗せることはできない。
誰かが残って最後まで箱舟を守らなければ、その船は無事に飛び立てないたからだ。
国を滅ぼした大悪党。
地形を変えた悪魔。
何万人物人を血に染めた怪物。
「己」はすべての脅威を切り伏せていった。
自然に、箱舟に近づこうとする者は少なくなった。
人々に名乗らなかった彼は、次第に「アックス」と呼ばれるようになる。
いよいよ箱舟が浮上しようというとき、一番の危機が到来した。
崩壊した世界の環境が、大波の形をした死神を放った。
「アックス」は、天にのぼる者たちと、その地に取り残される者たちを守るために、「斧」でなんども大波を切り裂いた。
船のある場所も、ない場所も等しく救うために
死神の脅威は何度も訪れるが、「アックス」はそのたびに戦った。
しかし、限界が訪れる。
彼の「斧」が大波に負けて砕けてしまったのだ。
そのままであれば、天にのぼる者たちも、取り残される者たちも、ともに海の藻屑となる運命だった。
しかし、だれかが彼に武器を投げ渡した。
それは箱舟に乗り込むために、彼に何度も立ち向かっていた者の一人だった。
「大剣」を手にした彼は、ふたたび武器をふるい、死神を切り刻み始める。
箱舟はやがて無事に、天へと逃げ延び、とり残された者たちはその世界と運命をともにしていった。
何万年。
何千年。
それよりも長くの時間が経った頃。
星屑満ちる天から滅亡世界に降り立った誰かが、その地に残された歴史に目を通した。
そこには最後まで果敢に戦った英雄の名前が刻まれていたが、その部分が損傷していて一部が読み取れなかった。
だからその者たちは、記されていた絵を見て想像する。
大剣を振り回す彼の名は、――だと。
バスカット・グラスの箱舟を守る者 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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