第14話 手首

みんなって、ゴミ出しは何時ごろ出してる?


 


その地域のごみステーションっていうの?


あそこにゴミを出す時間。


 


ゴミ収集車が来るのって、大体8時か9時だよね。


俺って大学生で、一時限目って受講してないから、いつも起きるのは10時過ぎなんだよね。


で、何回か、ゴミを出し損ねてからは、前の日の夜に捨てるようになったんだよね。


 


あれって、本当は法律違反らしいね。


あんまり早くにゴミを出しちゃダメって法律があるらしい。


けど、俺はそんなことは気にしないで、前の日の夜にガンガン捨ててた。


 


でもさ、いつものように夜にゴミを捨てようとしたら、なんと先客がいたんだよね。


誰かがもう捨ててたんだよ。


 


いつもはさ、その時間は俺しか捨ててなかったから、ちょっと罪悪感はあったんだよね。


でも、他にも捨ててた人がいたから、ちょっとだけ罪悪感はなくなったんだ。


 


そしたらさ、いきなりゴミの方から、ガサって聞こえたんだよ。


ネコか、カラスか、虫かなって思って、止めればいいのにのぞき込んじゃったんだよね。


 


手首だった。人の。


 


一瞬で頭が真っ白になった。


 


バラバラ死体?


 


一気に背筋が寒くなった。


通報しなきゃと思ったんだけど、スマホは部屋の中だったんだよね。


だから、取りに行こうと思ったら、また、ガサって音がしたわけ。


 


で、チラって見たら、その手首が動いていた。


 


走って部屋の中に帰ったよ。


確認するなんて、無理。


 


で、家から通報しようか思ったんだけど、急に怖くなった。


なんかの事件とか、幽霊とかだったらどうしようって。


だって、通報したら巻き込まれることになる。


 


だから、結局は通報しなかった。


朝になって、ゴミ収集車が来て、ゴミを回収していったけど、とくに何もなかった。


 


この話を友達にしたら、笑われた。


地味すぎるって。


頭が入っていて、瞬きしたとかくらいしろよって言われた。


 


いやいや。実際、見たらビビるって。


深夜だぞ。


 


友達はオモチャだろと言った。


確かに、オモチャだと説明がつく。


 


だから俺は、あれはオモチャだったと思い込むようにした。


 


それと、今は、ゴミはちゃんと朝に捨てている。


 


終わり。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る