第8話 鏡

大学の頃、仲が良かった友達のことをふと思い出して、連絡してみた。


そしたら、その友達は今、怪我をして入院してるって言われて、ビックリした。


週末に、その子のお見舞いに行ったんだけど、そこでもっと驚く話を聞かされた。


 


これはその友達から聞いた話。


 


友達のおじいちゃんが病気で亡くなってしまい、色々と整理することになった。


友達のおじいちゃんは地主で、結構、お金持ちだったらしい。


 


おじいちゃんの家は結構、大きくて遺品を整理するのも大変だったとのことだ。


で、おじちゃんの家の奥に、ドアが開かないように木で打ち付けられた部屋があった。


 


何か良くないものがあるのだろうって、容易に想像できたらしいけど、それでも開けないわけにはいかなかった。


だから、親戚たちが集まって、ドアを叩き割って、その部屋の中に入ったらしい。


 


だけど、部屋の中はいたって普通で、っていうより鏡しか置いてなかった。


よく、洗面所にあるような大きな鏡。


 


なんだろうって親戚の人たちが鏡を調べていると、その中の一人が悲鳴を上げた。


鏡に映った姿の自分には左腕がなかったそうだ。


驚いて、他の人が鏡を見ると、その人は全身に傷が付いた状態で写っていた。


 


誰が見ても、どこかに傷がある状態で写ったらしい。


友達も、もちろん、その鏡を見たらしい。


そしたら、顔中が傷だらけになっていたそうだ。


 


不気味な鏡だとなり、親戚の人たちはいったん、鏡をそのままにしておいた。


 


数日後、おじいちゃんの遺書らしきものが見つかり、そこにはあの鏡のことが書いてあった。


その鏡は呪われていて、その鏡に姿を写した者はどこかに傷が出来た状態で写り、そして、その後、鏡に写った状態と同じになってしまうのだという。


 


親戚の人たちは怖がりながらも、そんなわけがないと高をくくってたらしい。


 


だけど、その1週間後、その家族を乗せた車が事故に遭い、ある人は左手を失い、ある人は全身に傷を負った。


つまり、あの日、鏡に映った姿と同じになったのだという。


 


次々に周りが事故や事件に遭い、鏡と同じ姿になっていく状況に、友達は恐怖で部屋に閉じこもってしまった。


それでも安心して眠れず、いつも何か起きないか警戒する生活が続いた。


 


そんなある日。


友達は耐え切れなくなって、包丁で顔を切った。


何度も。


 


そう。


友達は自分で鏡に映った自分の姿と同じにしたというわけだ。


 


友達は病室で、これでもう鏡の呪いに悩まされることなくなったと、ニコリと笑いながら言った。


 


私はその話を聞いて、無性に腹が立った。


そんな鏡をどうして友達のおじいちゃんは残していたのか。


 


きっと友達の顔は元には戻らない。


傷が残ってしまう。


 


私は友達からおじいちゃんの家の場所を聞き、行ってみた。


家の中は片付けられていて物が何もなかったが、鏡の置いてある部屋はそのままの状態になっていた。


 


私は頭に血が上っていたせいか、つい鏡を見てしまった。


だが、鏡に映っていた私にはどこも傷なんてない。


 


なんだ、呪いなんて結局、嘘じゃん。


 


そして、私は手に持っていたハンマーで鏡を叩き割った。


 


床に砕け散った鏡の破片は、私の姿を映していた。


 


終わり。

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