2話
双葉と別れた後も、私は店内をブラブラしていた。双葉はすぐに家に帰ったけれども、私はしばらく残った。
家に帰っても、居候中の薫と不毛な雑談を繰り広げるだけなのだし。
そういえば、イソウロウグモという蜘蛛の種類は、文字通り他の蜘蛛の巣に居候し、主が食べない小虫を捕食するらしい。中には、主を襲って食べる種もあると聞いた、薫から。「わいは、そんなこと絶対にせえへんけどな~」と笑いながら言っていた。なら、そんな蜘蛛の話をするな、と思った。
どうでもいい話を思い出しながら、歩いていると……。
「ん? あらら、あの冴えない後ろ姿は……」
高村君だった。またもや偶然会ってしまった。少し前も街中で偶然の出会いをしたばかりだというのに。
声を掛けようかしら、と思ったが止めた。
いや、だって、おもちゃ売り場でプリキュアの変身セット的な物を手に取って眺めている男子高校生に、どう声を掛けろと?
けっこうショックを受ける光景よ、これ。
まさか、高村君にこんな趣味があったなんて……。
顔を合わせるのも何か気まずいので、とりあえず隠れた。向かいの文具店のショーケースの影に隠れて、高村君の様子を窺う。
普通、こういう趣味はあまり人には知られたくないものだと思うが、高村君はやけに堂々としている。隠れている自分が恥ずかしくなってきた。傍から見れば、私の方が不審人物なのではないか、とも思える。
さて、どうしたものかしら。今すぐ高村君の前に姿を現して「この少女趣味!」となじっても良いのだけれど「少女趣味で何が悪い」と開き直られるかもしれない。
最近の高村君は、そういう傾向にある。前に烏丸君が「ついに高村君が、シスコンで何が悪いって開き直ったんだよー」と言っていた
そこで、はっと閃いた。そうだ、助っ人を頼もう、と。
高村君なじりのプロがいるではないか。
私は携帯電話(スマホ)のメール画面を開き「高村君がプリティでキュアキュア。至急、現場に来られたし。イオンなう」という若干、訳の分からないメールを打った。混乱気味だったので、多少(?)の文章の乱れは仕方ない。でも、彼なら分かってくれるだろう。
宛先はもちろん、烏丸凛。
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