3話

その後も何曲か歌ったが、やっぱり白鳥は歌上手いなあ、というのが主な感想だ。八十後半から九十前半の点数を連発している。

 おれも時々歌わせてもらったが、五十そこそこしか取れない。頑張っても七十は越えない。しょうがないじゃん、音痴なんだもん。中学の時、音楽教諭から「声の大きさだけは申し分ないんだけど、高村君にはもっと周りの声を聞いて音程を合わせて欲しいんだよね」と苦笑いで言われた記憶がある。

「あのさー、白鳥」

 歌い終えた白鳥に話し掛けてみる。

「何?」 

 と、こちらを振り向く白鳥。

「お前さ、少しはおれの方を見て歌えよな。間奏の間もずっとテレビ画面凝視はないだろ。今は一人カラオケをしてるんじゃないんだぜ?」

 時々振ってるタンバリンが空しいだろ。一緒に盛り上がってくれよ、せっかくの二人カラオケなんだから。

「そう。仕方ないわね……。だったらデュエットでもする? 私とあなたで」

「デュエット? え、マジでいいの?」

 やったーっ、白鳥とデュエットだ! 今日のおれの運勢、最高じゃね? 

「本当は六、七人で歌う曲が歌いたいのだけれどね。残念ながら、プリンスさまがいないのよ」

「悪かったな、烏丸じゃなくて」

 烏丸は歌上手いのかな? 知らないけど。

「じゃあ、これにしましょう」

 白鳥が曲を選択する。おれも知ってる、けっこう有名な歌だ。ていうか、知ってないと歌えない。

 白鳥「♪~~(何を歌っているのか当ててみなさい)」

 おれ「♪~~(曲名は皆さんの想像に任せるぜ)」

 サビのハモリの前、白鳥が一瞬、おれに向かって微笑んだ。その笑顔に、その楽しそうな笑顔に、おれの胸が高鳴った、ような気がした。

 曲が終わり……。

「下手くそ」

「悪かったな」

「ちなみに、足を引っ張った方が今回は奢るということで……」

「え、お前が奢ってくれるんじゃないの?」

「冗談よ。それにしても、何て逞しい下僕根性、いえヒモ根性なのかしら」

 


 帰り道。

「ねえ、ついでに私の家にも寄って行くでしょう?」

「ああ、夕飯を作ってやんないとな。……あ、でもその前にノートとか買ってっていいか?」

「ええ」

 


 とある休日。

いつも通りの日常と、特別なご褒美の非日常。

可愛らしいご主人様との、愛しい時間。


そうだ、今日はハンバーグにしよう。

白鳥の大好きな、ハンバーグ。





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