白鳥さんのバースデー
1話
冬……。風が冷たく、人の温もりが恋しい季節……。
明日、12月25日は全国的にクリスマスである。
というか、おれにとっては、クリスマス以上に大事なイベントが控えていた。
白鳥美和子生誕祭、とトゥイッター風に言ってみる。まあ、平たく言うと誕生日だ。
とはいって語り始めてみたけれど、具体的に何をするか決めてないんだよな。
「どうしたん? いつもみたいに唐突に始めて、ダラダラ語ればええやん」
薫が、さも当たり前のように地の文と会話する。もうツッコまねえぞ。
「まあ、ダラダラ語っているのも認めるし、きっと多分それは直らないだろうとも思うけどさ。けれどもだよ、あれの後に自分の番が回ってくるのはキツいって。何あの雑談なしの文章、綺麗にまとめやがって。落差にビックリだよ」
「このゆるさにもビックリなんやけどな」
こんな会話を本文中にしてる時点で、おれの語りは相当ダメなのだろう。
「あー、比べられるー、比べられるー。この先、おれはどうやって雑談をすればいいんだよー」
「普通にすればええんやって。秀には秀の良いところがあるって、多分」
「多分ってなんだよー」
「すまんすまん、秀の語りはラノベ風で面白いと思うで」
「じゃあ、あっちは純文学ってことかー?」
もう自暴自棄。
ていうか、そろそろちゃんと始めないとヤバい。
「君達さあ、さっきから何、訳の分からないことを話しているんだい。僕達が、ここにいる理由を忘れたのかい?」
ナイスタイミング、だけれども。
「あ、当事者だ」
あの語りの当事者、烏丸凛。
「……当事者? 何の?」
烏丸だけ会話から置いてけぼりだ。そういえば、こいつは地の文が読めないんだっけか。てか、読める方がおかしいのだけど。やっぱり、こいつと、おれの間には越えられない一線があるよな……。
「くそっ、イケメン、マジ爆発しろ」
完全なる僻みであった。
「いやいや、秀、それじゃ地の文と会話文の内容が合ってへんよ」
烏丸は訳が分からないというような顔をしている。そりゃそうだ。
「この話は、また後でするとして、そろそろ本当に、本題に入ろうや」
その通りだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます