4話
翌日、朝起きたら身体がだるかった。僕の顔色の悪さに気付いた祖母が熱を測ると、39.5度だった。高熱だ。とにかく、僕は布団に寝かされ、氷枕の上に頭を置いた。薬も飲んだ。祖母は甲斐甲斐しく看病をしてくれた。救急車を呼んで(祖母は車を持っておらず、何分、田舎なので病院が遠い)、医者に診てもらうという選択肢もあったのだが、僕はそれを拒否した。病院は嫌いだから。そんな子どもっぽい理由が、あっさりと受け入れられ、僕は今、祖母の家で、すりおろし林檎を食べている。
「凛ちゃん、大丈夫? ちゃんと食べれる?」
祖母が心配そうに僕の顔を覗き込む。
「……うん。少しは良くなったかも」
実際は、そんなに良くなっていないのだが、そう言った方が良い気がした。林檎を食べ終え、僕はまた横になった。祖母はまだ、僕の枕元で心配そうな顔をしている。
頭が痛い。身体がだるい。寝てしまえば楽だろうが、苦しくて眠れない。ふと、考えた。このまま死ねないだろうかと。もしこのまま熱が下がらなかったら、自分は自分は死ぬのではないだろうかと。出来れば苦しまずに死にたい。兄のように即死がいい、僕は以前から、そのような願望があった。昨日見た鼠のように身体を引き裂かれるような激しい痛みだけは御免である。あの鼠は身体を裂かれても生きようと必死にもがいていた。あの鼠は生きたいと思っていた。僕は別に生きたいとは思っていなかった。鼠は無残に死に、僕はまだ生きている。兄は利他的に死に、僕は利己的に生きている。生きたい者が死に、死にたい者が生きていることは、なんと不合理なことだろうか。
親からも愛されず、双子の弟からも、その死を悲しまれなかった兄は、生きていた意味があるのだろうか。そして、人の気持ちが理解出来ず、ただ利己的に生きているだけの僕は、生きている意味があるのだろうか。
朦朧とする意識の中で、僕はまた夢を見た。
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