ノエの恋 〜グルーミング〜
明鏡止水
第1話
〈どんな一人称がいいだろう。わからないけど「オレ」にする。俺になるかもしれないけれど、少なくともあの子の前ではオレは僕で。オレだった。〉
コケコッコーの物語をあの子達の声の分まで、
書こうと思います。
2002年。兄弟も母猫もいない。季節は寒いから冬。どこを歩いているのかわからない。前が見えない。
呼ばれた気がしたの!そんなこんなでとある
ひよこのような、しかし斑もあるしお腹も白い。
でもまだまだ全体的に茶色。そんな子猫がある家に拾われた。拾ったのは母だ。まだ手のひらに乗る大きさのチビ。
そして極め付けは枯葉とめやにで開かない目だった。獣医の前でやったら怒られるかもしれないが、くっついてるものはなんとか取ってみよう!
とここの者は思ったのかもしれない。
ぬるま湯を含んだティッシュで優しく拭かれ、
結果、オレの瞼は開いた。めやにの粘り気が強く、まだ十分にあかない。
オレは目が見えない状態でひとり、ドラッグストアの横の大型店へと抜ける道の途中で、この家と呼ばれる場所の母に拾われた。
この子!目がひらけばぜったいかわいい!
母と娘とかいうのが言う。
まだまだ十分に開いていなくて青みがかった目だったが将来の色はわからない、という状態だ。
父というのもいた。ここにはもともと3匹の猫、
そう、猫。
猫だ。
噛み締める思いなどまだない無垢な心で先住猫のベッドでちいさく。寝た。
ぼくはひよこした。
なんかいる、と父のやつが言った。
あとから紡ぐ物語。人間の記憶と猫の様子が入り混じる。
オレの声はいつか枯れて、喉から空気が出る音と、結膜炎の名残の鼻水の音で、ご飯を出してもらえるようになる。
名はとりあえず。
ひよこに似てるからコケコッコーだ。
かわいそうだよ。
ネーミングセンスがダメだよ。
この家。すみ家。まだ何も決まっていない。
ただ、ご飯をもらえて、寝られた。
14年前、2009年。冬。コケコッコーたるノエは、愛しい三毛猫に会える、恋をする。そして、
一生分、外の沢を散歩する。
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