猫物語

正体不明

第1話 商店街と猫

私の名前はルナといいます。月夜に出逢ったから月から取ってルナとしたそうです。


主人はこれから仕事のようです。スーツと呼ばれている黒い布をまとっている時は必ずでかけていってしまうのです。あ、あ、もう行ってしまうのですか!?もっとカリカリを入れてからにしてください!


「どうしたんだ?わかったわかった。すぐに帰るから」


あ、あぁ…しょうがないですね。これから何をしましょう。今日の外はちょうどいい具合に晴れているようですし、出かけるのも悪くないですね。さっき食べ損なった朝食の代わりになるものが見つかるかもしれません。そう考えると商店街に行くのがいいでしょう。


町を歩いているとだんだんと喧騒が近づいているのが分かりました。商店街に着いたようです。シェフと呼ばれている人達があちらこちらで話す声がここまで届きます。


「あれ、クロちゃんじゃないか。今日はこっちまで顔を見せに来てくれたのね」


私のことをクロちゃんなどと呼んだこの女性は魚屋の主人であるそうです。私にはルナという立派な名前があるというのにそれを知ってもらえないの、なかなか切ない気持ちにさせられるものです。ですが、この魚屋夫人はよく昼餉をご馳走してくれるので許しましょう。


「ちょいとお待ち。煮干しをあげようじゃないか。えーと確かここらへんに。あったあった。ほらクロちゃん、たーんとお食べ」


食べながら私は今までの少し日常について振り返っていました。商店街で散歩していると面白い発見や新たな疑問などが出てきて楽しくなってきます。デンキと呼ばれているのが通称で本当はガイトウというのだとか、なぜ人間は一日中寝ていてはいけないのか、本当に次から次へ何かしらの気づきがあるのです。煮干しを食べ終わったことですし、そろそろ場所を移しましょう。


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