第27話 day18
「おはようございます、紅様」
「おはよぉ...」
朝イチで起こしに来てくれたのは、昨日のメイドさんである。気にしてはいないつもりだが、寝ぼけたまま挨拶をしてしまったのは、少々申し訳ない。
「おはよぉ、紅...」
隣のベッドで眠そうなシズクがゆっくりと起き上がる。同じく寝ぼけた様子である。そこで、ほんの少しだけ意地悪をしてみることにした。
「シズクが準備遅かったら、今日もメイドさんと一緒にまわろっかなぁ。デートみたいだねぇ」
それを聞いたシズク...ではなく、メイドさんがどういう訳かノってきた。
「そうですね。私が今日もご案内いたしましょうか。そのまま、私を紅様の一番に...」
「だぁぁぁぁぁぁっ‼」
シズクはその危機感に跳ね起きた。直後、メイドさんの方にメキメキとガンを飛ばしている。無表情ではあるが、なんとなく二人の間にバチバチと何かが
そこで、とりあえず「シズクおはようっ」と、声をかけた。
「紅様、お目覚めが遅くなり申し訳ありません。」
語尾が「ござる」じゃないあたり、ちゃんと冷静でいるようだ。それで十分なのだ。失敗したら次でどうにかする。それを昨晩何度も聞かせた。思い悩んでいるだけじゃ何もよくならないことの方が多いのだ。時には悩むことも大事だけど、まだできることがあるなら次のことに目を向けなきゃね、と言って励ましたのだ。いつまでも落ち込んでいてもどうしようもないのである。
そのまま、メイドさんに案内してもらい、朝食をいただく。今日もおいしい。明日から美味しいご飯とは距離を置くことになるので、今日中になるべく満足いくまで過ごしたい。
「本日は護衛はいりませんか?」
食事中にメイドさんがそうやって聞いてきた。
「今日はシズクと二人きりの予定なんです。」
と答えると、「そうなんですね。お楽しみください。」と言って離れて言った。
「今日はどこに行くの?」
シズクはウキウキで聞いてきた。
「今日は地下市街に行きます!」
楽しそうに、紅もそれに応える。
昨日、メイドさんに案内してもらった道の通りに進む。昨日はメイドさんもいて気にならなかったが、かなり入り組んでいて迷いやすそうなのである。地下都市という名の地下迷宮のようだ。
何もかもに新鮮な反応を見せるシズクとともに来たのは、昨日のアクセサリー屋である。
「あら、こんにちはぁ」
おばあさんが出迎えてくれた。昨日は見なかった顔である。おばあさん
「昨日の頼んでいた鉱石があると思うのですが...」
そう言うと、「昨日のやつね」と言って、お店の奥に入っていった。
「きれぇい...」
シズクは並べられた宝石を見ていた。
数分して、二つの箱を持ったおばあさんが入ってくる。
「この二つねぇ」
机の上に二つの箱を置き、それを開ける。
「綺麗...」
シズクはずっと「綺麗」しか言っていないが気にしない。実際に綺麗なのだ。キラキラとしていて眩しい。覚えている限り、紅はそんなきらびやかなものを間近で見た記憶もほとんどないし、シズクも今まで見ている限り、そんなに裕福な環境にいたわけでもない。そういうことも踏まえて、この高級な石のお店には、あんまり馴染みがなく、語彙力が足りなくなるのだ。
紅はそれをゆっくりと手に取る。
「指輪...」
そうポツリと呟くと、優しい声でおばあさんが説明してくれた。
「その指輪は、結びの指輪と言って、分かりやすく言うと、所持者と所持者を結ぶものだよ」
おばあさんが言うには、この指輪をつけている人同士は結ばれるのだそう。どういう意味かは、身につけていればいずれ分かるらしい。そして、一つの刻印が刻まれているのだそう。
「どんな刻印が刻まれているのですか?」
刻印というのは、昨日、メイドさんが説明してくれた中にもあったのだが、極端に言えば、モノに
『これなら、この国の土砂を運ぶ能力をどう補っているかまで想像つきそうだけど...』なんて思ったが、ひとまずそれは置いておく。
「この指輪に刻んである刻印は、能力の共有だよ」
この指輪に自分の
ちなみにその答えは、「共有した側の意思次第」だそうだ。
『なんか、ものすごいもの作ってもらえたなぁ...これ、めちゃくちゃ高値で売られたら買うこともできないんだけど...』
その説明を聞いて、感心しながらも少し心配になりつつ、自分の前に置かれた箱を覗く。
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