第26話 day17

 「能力...についてですか?」

 紅はメイドさんに質問をした。「能力について知りたいのですが、能力について教えてください...」と。紅は図書館でも能力についてあまり詳しく調べられていなかった。というより、それに関する本があまりにもなかったのだ。つまり、本にまとめられるほどの情報が見つかっていないのか、能力についての情報が出回らないように統制されているのか...


 「ご期待に沿えないかもしれませんがよろしいでしょうか?」

 そう言って、メイドさんは少し語ってくれた。メイドさんの知る範囲での能力について。


 メイドさんはこの世界でのの立場から順に、大まかに知られている能力の分類を教えてくれた。

 まず、この世界には、人間、魔物、神の三種族が存在する。そのうち、魔物と神のほとんどは特別な能力のうりょくを持っている。そして、人間にもが芽生えたのだそうだ。様々な能力が発見されているが、数は多くない。そして、能力者による様々な事件から始まり、なるべく隠すべきものだと考えられるようになったのだ。もちろん、国家の軍事力や犯罪の道具にされかねないからである。もっとも、ちゃんと理解して修行に励むような人は実力で身を護れるため、そういったことも気にしなくてもいいので、気にせず能力者であることを宣言していたりする。

 そして、メイドさんも能力者であることを公言していない。雇い主達の間で出回っている情報で「持っているのではないか」程度には知られている。


 「この世界での能力の価値...というより、存在になります。」

 それから話は、まだ続く。


 「ここからは、能力の種類...というか、それぞれの権能についてですね。」

 能力といっても細かく言えばいくつかに分類されるらしい。例えば、スキルと加護の二つの分別ができる。この二つでの違いは、能力チカラかオンオフでの切り替えのみで能力の二つである。また、スキルは何らかのエネルギーや代償が伴うが、加護はそれが無いということも聞いた。つまり、たくさんスキルを持つ能力者より、たくさん加護を持つ能力者の方が後先気にせずに能力チカラを使えるのである。

 「私の能力は【波動】になります。」

 「その力は私に言ってよかったのかな?...」

と、ボソッと声に出すと、

 「本当は言うべきではないのですが、紅様なら今後とも頼っていただけると考えての発言ですので、どうかお気になさらず。良かったら、あまり公言しないでいただけるとありがたいです。」

 なんて言ってくれた。商人らしい手口を使っているようにも聞こえるが、そこは気にしないことにした。


 そんなこんなで、少し食事をして、ゆっくり、来賓館へと歩みを進める。

 「紅様とシズク様のご関係とは、どういったものでしょうか?」

 メイドさんはそんなことを聞いてきた。

 「うぅーん...恋人みたいな?」

 それを聞いたメイドさんは表情を変えずに淡々と相槌を打った。


 「紅様‼」

 来賓館に帰り着くなり、全力で駆け寄って来たのはシズクだった。

 「本日は、拙者が護衛に着くはずが、一日中睡眠に時を費やしてしまい...本当に申し訳ないでござる。」

 気づいている人はいるのかもしれないが、切羽詰まってるとき、戦闘を楽しんでいるとき、シズクは武士みたいな口調になる。といっても、紅自身は武士を知らないし、完璧な武士口調かと聞かれると、そうでもないともいえる。そういった性格からシズクの焦りようが分かった。

 「大丈夫大丈夫。ちゃんと寝れた?明日からまた頑張ってくれるなら気にしないでいいよ!」

 そう言って慰めるが、泣き止まない。

 『夜通し慰めなきゃかな?』なんて思った。そこで無意識にメイドさんを見た。

 『シズクを見て、なんかムスッとしてる...?いや、気のせいかな...』

 気にすることをやめて、入浴や寝る準備をする。


 濡れたままの髪でいたシズクを椅子に座らせて、髪を乾かしてあげる。

 「紅様、こんなことをさせてしまっては申し訳ないでござる...」と、武士口調はまだ収まっていなかった。だが、嫌がっていない辺り、きっと嬉しいのだと思って、手を止めずにそのまま慰めながら髪を乾かしてあげた。

 そのあと、明日のことを大まかに説明してベッドに入る。もちろん、昨日のように何か問題事が起きるのは避けたいので、しっかり別のベッドに入る。


 『能力か...私の能力って何なんだろ...』

 今日のメイドさんの説明を聞いて少し違和感を覚えていた。

 『たくさんの漢字は、能力だし、何かしらのエネルギーを消耗しているみたいだから、スキルと加護の分類だとスキルなんだけど...』

 この、一日1つだけ能力スキルが得られるという環境はどう説明するのか。

 『あちゃぁ...メイドさんに、初めて自分の能力の存在に気付く時って、どんな感じなのか聞けばよかったなぁ...』


 そんなことを考えながら、その日は幕を閉じたのだった。

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