第26話 day17
「能力...についてですか?」
紅はメイドさんに質問をした。「能力について知りたいのですが、能力について教えてください...」と。紅は図書館でも能力についてあまり詳しく調べられていなかった。というより、それに関する本があまりにもなかったのだ。つまり、本にまとめられるほどの情報が見つかっていないのか、能力についての情報が出回らないように統制されているのか...
「ご期待に沿えないかもしれませんがよろしいでしょうか?」
そう言って、メイドさんは少し語ってくれた。メイドさんの知る範囲での能力について。
メイドさんはこの世界での能力者の立場から順に、大まかに知られている能力の分類を教えてくれた。
まず、この世界には、人間、魔物、神の三種族が存在する。そのうち、魔物と神のほとんどは特別な
そして、メイドさんも能力者であることを公言していない。雇い主達の間で出回っている情報で「持っているのではないか」程度には知られている。
「この世界での能力の価値...というより、存在になります。」
それから話は、まだ続く。
「ここからは、能力の種類...というか、それぞれの権能についてですね。」
能力といっても細かく言えばいくつかに分類されるらしい。例えば、スキルと加護の二つの分別ができる。この二つでの違いは、自分で発動する
「私の能力は【波動】になります。」
「その力は私に言ってよかったのかな?...」
と、ボソッと声に出すと、
「本当は言うべきではないのですが、紅様なら今後とも頼っていただけると考えての発言ですので、どうかお気になさらず。良かったら、あまり公言しないでいただけるとありがたいです。」
なんて言ってくれた。商人らしい手口を使っているようにも聞こえるが、そこは気にしないことにした。
そんなこんなで、少し食事をして、ゆっくり、来賓館へと歩みを進める。
「紅様とシズク様のご関係とは、どういったものでしょうか?」
メイドさんはそんなことを聞いてきた。
「うぅーん...恋人みたいな?」
それを聞いたメイドさんは表情を変えずに淡々と相槌を打った。
「紅様‼」
来賓館に帰り着くなり、全力で駆け寄って来たのはシズクだった。
「本日は、拙者が護衛に着くはずが、一日中睡眠に時を費やしてしまい...本当に申し訳ないでござる。」
気づいている人はいるのかもしれないが、切羽詰まってるとき、戦闘を楽しんでいるとき、シズクは武士みたいな口調になる。といっても、紅自身は武士を知らないし、完璧な武士口調かと聞かれると、そうでもないともいえる。そういった性格からシズクの焦りようが分かった。
「大丈夫大丈夫。ちゃんと寝れた?明日からまた頑張ってくれるなら気にしないでいいよ!」
そう言って慰めるが、泣き止まない。
『夜通し慰めなきゃかな?』なんて思った。そこで無意識にメイドさんを見た。
『シズクを見て、なんかムスッとしてる...?いや、気のせいかな...』
気にすることをやめて、入浴や寝る準備をする。
濡れたままの髪でいたシズクを椅子に座らせて、髪を乾かしてあげる。
「紅様、こんなことをさせてしまっては申し訳ないでござる...」と、武士口調はまだ収まっていなかった。だが、嫌がっていない辺り、きっと嬉しいのだと思って、手を止めずにそのまま慰めながら髪を乾かしてあげた。
そのあと、明日のことを大まかに説明してベッドに入る。もちろん、昨日のように何か問題事が起きるのは避けたいので、しっかり別のベッドに入る。
『能力か...私の能力って何なんだろ...』
今日のメイドさんの説明を聞いて少し違和感を覚えていた。
『たくさんの漢字は、能力だし、何かしらのエネルギーを消耗しているみたいだから、スキルと加護の分類だとスキルなんだけど...』
この、一日1つだけ
『あちゃぁ...メイドさんに、初めて自分の能力の存在に気付く時って、どんな感じなのか聞けばよかったなぁ...』
そんなことを考えながら、その日は幕を閉じたのだった。
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