第20話 怒り

「とんでも無い事をしてくれたものだ・・・。」


玉座に座る王は普段よりもいくらか老け込んだように見えますわね。

やらかした王太子バカとその側近無能達に件の令嬢ですが・・・。

彼女だけは顔色が悪い・・・。

まぁ、それも仕方ありませんわね。

他の愚か者と違い彼女はのですから・・・。


「父上!俺は間違った事などしておりませんっ!

何故このような扱いを!?」


喚く王太子を取り押さえられるのを眺める。

そもそも、事に疑問を抱かなければいけないといいますのに・・・。

愚かにもほどがありますわ。


「はぁ、お前の愚かさには呆れたものだ。」


「なっ!?」


王が宰相である父へと視線を向ければ数日の間に調べ、裏取りの出来た報告内容が告げられていくのを彼等が理解できるように告げられていきますわ。


「まず、王太子殿下。

あなたはそちらにいらっしゃるリリーラ・ディランド令嬢と相思相愛と言いましたが・・・。

彼女は否定しておりますしあなたに付けている護衛の影も告白の了承は返事はして無いと答えております。

そもそも、答えは言わずともわかると勝手に解釈して恋人宣言はありえませんよ。」


・・・頭の痛い事ですわ。

どうして、そんな思考になると言うのですか?

愚かにもほどがありますよ。


「そんな訳ないっ!!リリーラと俺は相思相愛だ。」


「何をもってしてそう言えるのですか?」


「彼女はいつも俺に対して微笑んでくれた!!」


リリーラ様が声も無く必死に首を横に振ってますわね。

王太子バカの後ろに居ますからその様子も見えませんね・・・。

側近無能達の視界にも入ってないですから。

彼女の様子、ちっとも理解しておりませんわ。


「・・・え?それだけですか?」


思わずと言わんばかりの声で父が言うのに王も絶句どころか・・・え?

あれ、魂抜け出てませんか・・・・?


「あぁ!」


「あ、もう脳内お花畑過ぎて無理です。

王よ、どう・・・・って、王!?」


父も王の様子に気づき慌てて揺さぶれば意識が戻って来た様子を眺める。


「え?これ、俺の息子?

何がどうなってこうなった!?」


「あまりにも花畑過ぎて私も引いてます。」


「俺もだ・・・。

はぁ、レオナルドお前は黙ってろ・・・。

兵よ、もしレオナルドが発言しようとしたらその口閉じてしまって構わん。」


「なーっ!?」


「失礼。」


王太子バカが何かを発言しようとする前に素早く口をふさがれるのを眺める。

それにしても何時になったら、私に気づくのでしょうかあの愚か者達は・・・。


「はぁ・・・アリアナ嬢。

あのような愚か者をそなたの婚約者なんぞにしてしまい申し訳ない。」


「いいえ、陛下。

政略結婚は私達貴族には役目の1つでございますわ。

相手が好きか嫌いかなんかで選ぶなど愚の骨頂。

私達は民の税により生活をしてるのですからそれに対する対価だと言うのに・・・。」


王の言葉にそう返事をすればようやく私の存在に気付いた方々が驚いてる。

まぁ、そうでしょう。

彼等の中でアリアナ・ローレンスは王都から追放済みなのですから・・・。


「何故ここに居る!?

お前は確かに王都から放り出しただろう!!!!」


「陛下の許可なく発言するなんて貴族としてマナーを学び直すべきですわ。

あぁ、私はあなた方が来る前に事前に許可を得ておりましてよ。」


私の指摘に慌てて口を閉ざし王へと血の気が引ききった顔を向ける様子に呆れる。

さすがにここまで愚かですと国の未来が心配でしてよ。


「愚か者共が。

貴様等は人違いでロイエ・メレディス子爵令嬢を追放したのだ!!

会場で令嬢自ら違うと否定し指摘したであろうっ!

レオナルド、貴様に至っては婚約者でもあるがその前に幼馴染であろう!!!

何故、幼馴染の顔もわからぬと言うのだ!?」


王の叱責にようやく己の失態に気づくのに呆れますわ。

さすがに馬鹿過ぎましてよ・・・。


「陛下、お願いがございます。」


「む、なんだ?」


「リリーラ様に関する嘆願書がこちらに。」


側仕えのメイドに持たせてる資料を父に渡すように視線で促す。

父もそれを受け取り目を通してから王へと渡す。

王がそれを読み進めてくごとに少しずつ怒りに染まっていく。


「愚息っ!!!!!!それから愚息の側近達よっ!!

貴様等、何を考えている!?身分の高い者が囲い込もうとしてるようではないか!?

ディランド嬢、この愚か者に言いたい事があるなら言ってかまわん。

俺達の声は理解出来ないようだが・・・恋焦がれるディランド嬢の言葉なら聞き届けるだろう。

どのような発言であろうと俺が許す。

不敬罪として問う事は無い事を誓おう。」


不安そうなリリーラ様が一度視線を落としてからどこか怒りがちらついてますわ。

・・・相当鬱憤が溜まってるのでしょう。

私もその立場でしたらさぞ、ストレスが溜まっていましたでしょう。

ここで、言いたい事全てぶちまけてしまってスッキリした方がリリーラ様の為にもなりましてよ。


「失礼ながら・・・王太子殿下、側近の皆様方・・・。」


リリーラ様は声を震わせ・・・いえ、体も震えていますわね。

やはり、王家に対しての発言は恐ろしいのでしょう。


「っ~~~~~!!!!

あなた達みたいな人の話も聞かない言葉も通じない同じ人と思いたくない存在に好意を抱かれるなんておぞまし過ぎるですっ!!」


リリーラ様の悲鳴染みた怒りの声が玉座の間に響きました。

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