幸せな青春が訪れるように

ひろ

第1話新しい自分になって

僕はもう知っている。

自分がどれだけ狡くて、どれだけ弱いのかを。


僕はあるいじめられている一人の女子を助けようとした。

クラスメイトで名は西田春夏、西田さんだ。

彼女は人付き合いが苦手で話し相手すらも居らず、いつもクラスの端っこに一人で居て、誰一人近寄って来ようとしない。

そして、このクラスにはいじめ屋の三人組の男子がいる。

奴らは自分たちがクラス内で一番上だと気取り、周りのクラスメイト達を従えさせ、好き勝手に暴れる低俗な集団だ。

そう、そんな奴らがクラスで一人だけ浮いている彼女に何もしない訳がないのだ。

放課になると、一人で席に座って俯きながら本を読む彼女に下品な悪口で罵り、笑いのネタにする。

そして、筆箱など彼女の私物を隠したりなんかも日常茶飯事のレベルで行う。

それを僕は見逃せなかった。

そう、自分の欲を満たしたいが故に。


奴らのいじめが始まったのは、3ヶ月前の5月に入ってすぐだった。

そこから時が経つにつれて頻度と程度が増していき、一週間もしない内にクラス中にその事が知れ渡った。

しかし周りのクラスメイト達は、それを知っていても誰も手を差し伸べたりなどはしない。

何故なら、自分たちまでいじめ屋の奴らに目をつけられたら困るからだ、怖いからだ。

そして中には、彼女がいじめられている所を見て気持ち良くなっている者もいるのだ。

僕はいじめ屋の奴らもそうだが、そんな周りの奴らを脳内で罵倒していた、

「どうせ自分は何もしていないと思ってるんだろ」

「本当に幼稚で小学生並だ」

と。

自分も周りの奴らと同じ輪の中に、安全な場所に居ながら。


そして、やがて僕は決意した。

行動に移そうと。

僕はまず西田さんと接し始める。

最初は昼放課にいつもの誰も居ない屋上で一人昼食を取っている彼女に話しかけに行き、友達になろうと誘った。

僕と彼女は友達になり、それから毎日昼食を共にし、共に下校した。

そしてそろそろ僕が彼女の味方につき始めた事に、いじめ屋のやつらは気づき始めた頃だろうと順調に進んでいると思っていたその時だった。

学校と家の距離の関係で彼女と登校は共にせず、いつものように一人で登校していた時、僕の目の前に現れた、あのいじめ屋の奴らが。

そしてそいつらは僕に言った。

「お前、これ以上なんかしたら許さねーぞ」

と頭を低くし、ギロっと僕を睨みつけて。


そして僕はその日を境に、西田さんとは関わらなくなった。

怖くて、逃げたのだ。

そう、ここで僕は本当は自分がどういう人間なのか、自覚した。

彼女を助けるのは、自分は周りより偉い、正しいと思って快感を得るため。

自分のためだけに行動していたという事に。


でも、そうだったけれど、


僕が彼女と関わっていた間のある日、彼女は言っていた。

「クラスのみんなと仲良くしたい、もっと友達を作りたいと」

と。

当時それを聞いても、当然彼女の友達作りを手伝ってあげようなんて思っていなかった。

これからも自分だけが周りよりも正しい存在で在りたいがために。

でも今は思うんだ。

僕は何も関係ない。

ただ、西田さんに笑って欲しい、幸せになって欲しいと。


僕は新しい自分になってまた動き出すんだ。

彼女を助けに。


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