墓守りの腕時計

星光かける

私はしがないおじいさん。


 この墓を守る者にはある腕時計が腕に現れる。

その腕時計の名は『墓守りの腕時計』


 この腕時計の見た目は普通だが、ある一点において全く違う。

それは、針が墓守りの寿命を指すことだ。


 私はこの墓を守ってきたしがないおじいさん。

私の時計はもう何年も針が止まっている。


 今日で針が止まって300年。

もう400年は生きた。


 ご近所さんたちからは、不思議なおじいさんとして見られている。

テレビに取り上げられたこともある。

全国の新聞にも載った。


 400年も生きていると、ちょっと前まで子供だった子たちが大人になって帰ってくるのをよく見る。

その度に思うのだ。


「大きくなったなぁ」


 まるで我が子の成長のように思える。

まぁ、本当の子供は250年ほど前に死んだがな。


 今日も私はいつも通りの日常を送る。


「今日も針は止まったままか。いつになったら動くんだい?あと1秒」


 重い腰を上げて1日が始まる。


 死がないおじいさんの1日が。

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墓守りの腕時計 星光かける @kakeru_0512

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