きっとまた あえるよ

みその ちい

第1話 今日から幼稚園に行くの

 「クゥタ おはよう」

美穂はクゥタのあたまをそっと枕にのせて、おなかにふわりと毛布をかけた。


 「クゥタはまだねてていいわ。

  美穂はきょうから幼稚園に行くの」

 

 美穂のともだちはクマのクゥタ。栗色のふわふわの毛のおおきなぬいぐるみ。

美穂の三つの誕生日におじいちゃんが買ってくれた。


 クゥタの手はまんまるで柔らかい。美穂はいつもその手をしっかり握っている。

ねるときだってはなさない。なのに…、きのうは目がさめるとクゥタがいなかった。

あわてて毛布をどけて枕をとばしてさがしたのに、どこにもいない。心細くなって

泣いていると、おかあさんがきてベットの下からクゥタを見つけてくれた。

そう、美穂がクゥタの次に好きなのはおかあさん。

クゥタとおかあさんがいるおうちが、美穂がいちばん好き。


 なのに…、

「美穂ちゃんは五歳になったでしょう。

 あしたから幼稚園に行くのよ。

 ほら、このまえ見に行った、赤いチューリップが咲いていたところよ」


美穂はチューリップよりも、にこにこと笑って手をふってくれたおねえさんを思い出した。

「クゥタもいっしょ?」

「ううん。クゥタはお留守番。

 おともだちがたくさんできるわよ」

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