走馬灯
ソードメニー
第1話 残心
宣託病院の一室に集まった人々が一人を囲んでいる。その一人、シンメンチアキが呼びかける。
「サトリ。みんな集まってくれたよ」
「父さん。俺だよ。ナツだよ。駄目だ。目を開けない。せっかく仕事を休んで来たというのに」
「お父さん。私、マフユだよ。もう私もお婆ちゃんになっちゃったけど、分かる?」
シンメンサトリは寿命を迎えようとしていた。サトリの娘マフユの夫クロオがサトリの息子ナツに言う。
「ナツの仕事は、何だった?」
「前も言ったよ。警察を定年退職した後は、ベンケイさんの警備員の仕事をさせてもらってる」
「悪い。最近忘れやすくってよ。もうすっかり爺さんだよ」
「クロオはタイガさんの道場で師範として現役だからすごいよ」
「まあな」
ゴショガワラマフユの息子コクヤがクロオに言う。
「父さん、最近腰が痛いって言ってたよね。あまり無理しないでほしい」
「おう、気をつける。それにしても、マフユに聞いたけど、ナツの家族はみんな夏に関係する名前って本当か?」
「改めて紹介するよ。僕の妻サミダレ、それから、僕の息子ウツセミ、それから、その妻のヒデリさん、それから、その一人娘のウリちゃん。偶然にもみんな夏の季語に関係する名前だよ」
「へえ。何かの縁だな。ウリちゃんは何歳になった?」
「10歳です」
「もう10歳か。時の流れは早い。ウリちゃんがお婆ちゃんになるのもあっという間だぞ」
「え~、やだ~」
その時、サトリが呻き声を上げた。サトリの妻チアキが反応する。
「みんな!サトリが何か言った」
「え?お母さん、本当?」
「本当よ。見てて」
「……うー……まて……」
「本当だ。何か言ってる。でも何て言ってるの?」
「分からない。父さん、大きい声で言って」
「…ひなぎく」
その場にいる全員はサトリの言葉に驚く。
「サトリは夢を見ているのね。それも昔亡くなった妹の」
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