第10話 卵が先か鶏が先か
綾子はずっと困惑していた。
(鈴木、何を考えてあんなことをしたんだろう…。)
もちろん、鈴木は綾子のうんこ/肛門のことしか考えていなかったが、それは綾子にとっては想定外のことであった。
(何もいきなり、あんな所を触るなんて。しかも指で穿り回すなんて…。鈴木は私の体なんか目もくれずいきなりお尻を触り始めたわ。)
これは綾子にとっては屈辱的なことであった。子供の頃から可愛い可愛いとチヤホヤされて育った綾子である。自分の肉体的美貌よりも、よりにもよって肛門を優先されるなどと、これほどの屈辱があろうか。綾子はうんこを掻き出されて食べられたことまでは気づいていなかったが、もし気づいていたらこんな程度の屈辱では済まなかったであろう。
綾子は学生の頃から鈴木に気があった。ただ、あまりに友人として、親しくなりすぎてしまったため、付き合うということまで話が進まなかったのである。そして、ようやくその一歩を進めようと家に誘ったのであった。その結果、見えたのが鈴木の変態性であった。
(鈴木は私より、お尻の方が好きなのかしら…。)
これは、結論を出すのが難しい問題である。鈴木は綾子を好きであったが、そのうんこの有無の方がより興味があるに違いない。しかし、そのうんこの有無というものは綾子に内包された命題であり、綾子への興味なしには語り得ない。いわば、卵が先が鶏が先か?、うんこが先か綾子が先か?、である。
綾子はずっと一人悩み、考え、ノイローゼになっていた。どうしても分からない。鈴木の真意が分からない。会って話をしたいとも思ったが、綾子は精神的に滅入っていて今はそれどころではなかった。
綾子は勢い加藤に電話してみることにした。こういうとき加藤の楽観的なところが自分の慰めになるかもと思ったからである。綾子はスマホを手に取り、加藤に電話した。
「もしもし、加藤?ちょっとお話があるんだけど。」
「ちょ、ちょっと今手が離せない。後にしてくれないか?鈴木と柳瀬が喧嘩になって大変なんだ。」
「!?。ちょっとそれどういうことよ。」
「半分はお前のせいだ、綾子。」
「何それ?全然話が見えない。今どこにいるの?」
「鼻くそ屋だよ。鈴木が椅子で柳瀬を殴ろうとして揉めている。」
「大変!今すぐ行くわ!」
加藤は一瞬躊躇した。当の本人である綾子が来てしまったら、また話がややこしくなるのではないかと。
「来ない方がいいかもしれないけど。まあいいか。」
加藤の楽天的な性格が出てしまった。綾子は鼻くそ屋に行くことを決意した。
「すぐ行くわ!待ってて!」
「あ、ああ。待ってるよ。」
綾子は訳が分からなかったが、大変なことになっていることだけは分かった。そして、すぐに家を飛び出し、鼻くそ屋へと向かった。
可愛い女の子はうんこをしない うなな @anao
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