第34話⁂バイオレット王国の戦争⁂


 


 だが、一難去ってまた一難。


 天空が真っ暗闇になったかと思うと稲妻が恐ろしいまでの爆音と稲光で矢の如く海に突き刺さって行く。円盤のようにグルグル回る、恐ろしい積乱雲が渦を巻き、やがて…分厚い積乱雲の下で大地を覆うように広がるアーチ雲、そのスケールは時間と共に巨大化して行き。やがて戦慄の巨大アーチ雲、そして…背筋が凍る竜巻が発生した。

 更には驚異的な津波が発生した。

 津波の破壊力は脅威的であり、その被害は甚大極まりない。


 実は…大津波の原因は斜面の大崩壊と、近くの山の斜面から九千万トンもの岩石が入江に落ちてきたために、入江の海水が弾き飛ばされて対岸の斜面を一気に駆け上がった為だった。 

 大規模な斜面の崩壊、火山の噴火により山自体が崩れ落ちる「山体崩壊」が起こって、恐ろしい事に津波の最大到達高度は520メートル!! にもなり、それこそあらゆるものを飲み込み粉々に打ち砕いて行った。津波の破壊力は、とてつもなく恐ろしい。


 

 巨大な竜巻が発生して、恐ろしい勢いでうねりながら天空に吸い込まれて行く。そして…巨大な津波が巻き起こり荒れ狂う海。

 その荒れ狂う海底から現れたのは、何とも恐ろしい魔女だった。

 この魔女は一体?


 それには、まず〈バイオレット王国〉の本来の姿を詳しく知る必要がある。

 

 ◆▽◆

 「オニ アイランド」の宝物「打ち出の小槌」と「扇子」を取り返すべく用心棒として「ジャイアントプラント王国」本土の王宮で働き出した鬼「隆牙」はその後どうなってしまったのか?


 恐ろしい鬼「隆牙」の容姿は裸で頭はハゲ頭、鋭い角はウシ科のガウルそのもので歪曲している。身長は十五尺(4.545m)、肌は漆を塗ったかのように真っ黒で、 鋭いギラリとした目が三つで、まるで金属製の御椀が入っているかのように黒光りしている。大きな口には鋭い歯と牙、虎の皮のふんどしを締めて手には金棒を握りしめている。また変幻自在に化けて、生物を襲う事もある鬼「隆牙」だ。 


「打ち出の小槌」は一般的に、鬼の持つ宝物とされるほか、大黒天(だいこくてん)の持ち物であるともいわれ、富をもたらす象徴として民話に描かれることが多い。


 鬼「隆牙」は用心棒として、「ジャイアントプラント王国」本土の王宮で立派に務めを果たしていたが、本来の目的「オニ アイランド」の宝物「打ち出の小槌」と「扇子」の在り処を突き止め、やっと取り返すことが出来……そして、逃げた。



 ◆▽◆

 紫世界〈バイオレット王国〉のフォード 王。

 実は…あの醜い鬼「隆牙」と切っても切れない深い関係が有る。

 

 

 ⁑薄っすら明るいのだが、太陽の陽の光が薄っすらした紫世界。

 

 槍の様な歪なビル群が建ち並び、星だけが無数に瞬いている幻想世界だが、時々雲がまるで化け物の様に醜く表れ出して、そして……その無数の紫の雲が慌ただしく流れ出している。果たして生物は存在するのか?


 誠に雅で美しい景観ではある一方で、何とも美しい幻想世界に、突如として現れた紫の雲が不気味に暴れ出した時には……何かしらそこはかとなく恐ろしい……静と動、美しさと狂気の両面が混在しているような……一気にこの世界の裏側に見え隠れする狂気が、ひょっこり頭をもたげ出したように思えた。


 そうなのだ。美しさと狂気が混在するこの国は、その昔想像も出来ない恐ろしい悲劇に見舞われていた。


 それは一体どういうことなのか?


 実は…この国の陸地には誰も棲んでいない。


 その昔海底の巨大恐竜たちに占拠され餌食となり、命尽きていた。

 実は…獰猛な海底恐竜たちは海の獲物だけで満足できずに、陸地に上がっては動物を捕食していたのだった。



 ◆▽◆

 

 人間は、サルの仲間から進化して 非常に長い時間をかけて、少しずつ変わりながら、今の人間になった。

 

 この〈バイオレット王国〉にも人間の初期の姿〈原始人〉で、顏はサルによく似ていて、髪は無造作に伸びて、髭も蓄えている。


 だが……原始人と違う所は〈バイオレット王国〉は、太陽が薄っすらとした紫で覆われた世界なので光合成が出来にくい。

 だから…ひょろりとしていて首も、手足も異様に長くて普通の人間の二倍ぐらいの長さだ。更には身体の色は薄紫色だ。



 この〈バイオレット王国〉の美しさの由縁は、「天空の鏡」といわれ、美しい紫の空が海に映し出されて空と一体化しているのだが、その境界線には、あの美しい淡い紫色のふじの花と寸分変わらぬ花が、見事に垂れ下がり咲き誇り、空と海の境界線に咲き誇る事によって、「天空の鏡」を一層華やかに異質な美しさに塗り替えている。


 そして…空と海の境界線にゆらゆら揺れているふじの花が、芸術的な曲線を描いた枝に見事に美しい花を咲かせ、華やかに浮かび上がり、そこだけ和空間の世界が広がっている。


 そんな美しい〈バイオレット王国〉でバイオレット星人たちはボ-トで「天空の鏡」と言われる美しい海に出掛けては、ある時は家族で、ある時は愛し合う恋人同士で楽しい時間を過ごしていた。


 パープルの空に星が無数に光り瞬き、ピカピカ✨何とも幻想的で美しい。

 だが、その時花火大会のナイアガラを彷彿とさせる、流れ星が一斉に金色の光を放ちながら流れ出した。それはそれは圧巻の美しさだ。


 このような幻想世界に、酔いしれていたバイオレット星人たちだったのだが、恐ろしい事に一人また一人と、姿が消えていった。



 ◆▽◆

 実は海底アクアの世界には、恐ろしい恐竜の数々が生息していた。


 確かに、今から約6600万年前以前に、地球に生息していた海の恐竜たちなのだが、どういう訳か、この「ファイブドアーズ星」に、全く同じ恐竜が海底の奥深くに生息している。


🦖


 ☆モササウルスは、獲物を捕らえて切り刻む為の後方に湾曲した歯は鋭く凶暴極まりない海の王者だ。狂暴なサメも一網打尽に噛み砕いて捕食してしまう。

 激しい争いを好む凄い攻撃力のモササウルスは、陸地に上がり果敢に付け狙い、バイオレット星人を一気に捕らえて切り刻み、食い殺して行く。



 ☆ティロサウルスは全長15mにもおよび、海の王者、海の殺し屋として、非常にどう猛で攻撃性の高い恐竜で、大型のカメや魚、アンモナイトなどに、この大きな口で食いついて鋭い歯と強靭な顎で噛み砕いてしまう。かなりのスピードで泳げるので、狂暴なサメを追い回して噛み砕いて捕食している。バイオレット星人に逃げる隙を与えず一気に食い殺している。

 


 ☆イクチオサウルスは体長2m程度とあまり大きくはないが、イルカのような流線型のフォルムの体を持った魚竜だが、その本性は非常に凶暴で同じ大きさのプレシオサウルスや同種のイクチオサウルスらとのケンカに明け暮れ、自分と大して大きさの変わらない全長4メートルの海洋爬虫類を、果敢に追い掛け回して捕食している。


 恐ろしい海の恐竜だ。ケンカに明け暮れるイクチオサウルスは、地上の珍しい獲物に興味津々で、バイオレット星人を次から次へと食い殺している



 ☆エラスモサウルスも全長が14mとかなり大きく、獲物めがけて素早く泳ぎ、魚群の下から頭を持ち上げて一気に魚をとらえて捕食しているので、バイオレット星人なんかあっという間に捕まり餌食となって居る。

一度捕らえた獲物は離さない。空を飛べる巨大なプテラノドンであっても、一度捕まったら逃げることはできない、恐ろしい海底恐竜だ。



 他にもクロノサウルス、ショニサウルス、ダコサウルスなども、地上に上がりバイオレット星人を捕食して行った。

 

 この様な状態に追い込まれて、時の王フォード も黙って見過ごす訳には行かない。

 こうして…陸海戦争が勃発した。


 バイオレット星人たちも弓矢や、剣、火縄銃で果敢に応戦している。

 だが……全く歯が立たない。


 こうして…地上には誰もいなくなった。


 ◆▽

 天空が真っ暗闇になったかと思うと稲妻が恐ろしいまでの爆音と稲光で矢の如く海に突き刺さって行く。やがて戦慄の巨大アーチ雲、そして…背筋が凍る竜巻が発生した。

 更には驚異的な津波が発生した。巨大な津波が巻き起こり荒れ狂う海。

 その荒れ狂う海底から現れたのは、何とも恐ろしい魔女だった。


 実は…魔女だと思われていたのは鬼「隆牙」で、このバイオレット王国の王だった。何とも醜いハゲ頭だが、後ろの方に髪が生えていて肩まで垂れ下がっているので、魔女だと思ったのだろう。それとも魔女に化けていたのだろう。


「海の恐竜たちよ!いい加減にせんかい!この私が成敗してくれるわ!ゥゥウウウウウウウッ!!! ゥゥウウウウウウウッ!!! 地上の生き物を食い殺すとは許せぬエエエ————イッ!貴様たちにも存分に苦しませてやるゾ————ッ!ワッハッハーこうしてクレルワ!!!!!ウ~フッフッフ~!これでも食らえ————ッ!」


 そう言うと大きな、いかにも引き裂かれたように恐ろしい巨大な口から、ニョッキリと牙をむき出し火の塊、炎を勢い良く吹き出し海を真っ赤に染め焼き尽くし恐竜たちを、息絶え絶えになるまで懲らしめた。こんな事が有ってからは流石に、海底恐竜たちも以前のような傍若無人な姿は経ち消え、海底深くに拠点を移し静かに鳴りを潜めている。




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