第35話⁂金の扇子の秘密⁂

 

 美しさと狂気が混在する〈バイオレット王国〉は、その昔想像も出来ない恐ろしい悲劇に見舞われていた。


 それは一体どういうことなのか?

 実は…この国の陸地には誰も棲んでいない。

 その昔、海底の巨大恐竜たちに占拠され餌食となり、命尽きていた。

 

 実は…獰猛な海底恐竜たちは海の獲物だけで満足できずに、陸地に上がっては陸地の動植物を捕食していたのだった。

 この様な状態に追い込まれて、時の王フォード も黙って見過ごす訳には行かない。

 こうして…陸海戦争が勃発した。


 バイオレット星人たちも石火矢(球状の金属弾を打つ砲)や、鋭い剣、槍、火縄銃で果敢に応戦している。


バン バン バン   バン バン バン   バン バン バン


ボン———— ボン———— ボン———— ボン———— ボン

 

 石火矢や火縄銃を打ち放つバイオレット星人たちに、モササウルスは、ビクともせずに狙い定めて、嚙みつき捕らえて切り刻み一気に噛み砕いて捕食していく。



 すると今度は、海の王者、海の殺し屋として、非常にどう猛で攻撃性の高い全長15mティロサウルスが、物凄いスピードで海から這い出て来て、バイオレット星人たちや、ライオンやヒョウとよく似た動物ライダンやピュグに飛び付いて行く。


 その巨大な体とスピ-ドでピュグのような走行能力の優れた動物でも一溜まりもない。鋭い爪や尾ひれで殴り殺して息の根を止めて、鋭い歯と強靭な顎で噛み砕いて捕食して行く。

 

 ガリガリガリ ギギギ ギギギ むしゃむしゃ バキンバキン


 

 バイオレット星人たちも黙っちゃいない。食うか食われるか、鋭い剣、槍を振り回して大勢でティロサウルスを囲んで、槍で突き刺して行く。更には剣を振り回してブスブス足や胴体を切っている。

 

グサッ グサッ   スパ————ッ!スパ————ッ!

 

するとその時、ティロサウルスが尾ひれをビュ————ッと振り回した。

バイオレット星人たちは一瞬で吹き飛ばされて、鋭い歯と強靭な顎で噛み砕いて捕食されてしまった。




 非常に凶暴で同じ大きさのプレシオサウルスや、同種のイクチオサウルスらとのケンカに明け暮れ、自分と大して大きさの変わらない全長4メートルの海洋爬虫類を、果敢に追い掛け回して捕食するイクチオサウルスは、体長2m程度とあまり大きくはない何とも恐ろしい海の恐竜だが、サイやクマによく似たザギやゴグマを果敢に付け狙いかかって行く。

 負けじとザギやゴグマたちが勢いよく飛び付いて行くが、嚙みつき振り回されて食い殺している。

 

 ギギギ むしゃむしゃ バキンバキン ボキン


 エラスモサウルスも全長が14mとかなり大きく、一度捕らえた獲物は離さない。空を飛べる巨大なプテラノドンであっても、一度捕まったら逃げることはできない、恐ろしい海底恐竜だ。空の生き物を次から次へと素早く捕まえ食い殺している。



 こうして…地上には誰もいなくなった。


 ⁑薄っすら明るいのだが、太陽の光が弱い紫世界。

 

 槍の様な歪なビル群が建ち並び、星だけが無数に瞬いている幻想世界だが、時々雲がまるで化け物の様に醜く表れ出して、そして……その無数の紫の雲が慌ただしく流れ出している。


 槍の様な歪なビル群に見えたが、側に近付くと思ったほど大きくない。

 これは陸海戦争で亡くなったバイオレット星人たちの、御霊を弔う墓だった。





 ◆▽◆

「オニ アイランド」の宝物「打ち出の小槌」と「扇子」を取り返すべく用心棒として「ジャイアントプラント王国」本土の王宮で立派に務めを果たしていた鬼「隆牙」だが、本来の目的「オニ アイランド」の宝物「打ち出の小槌」と「扇子」の在り処をやっと突き止めることが出来た。そして…奪い去り……逃げた。



 そして…逃げて、逃げて、鬼「隆牙」が、辿り着いたのは〈バイオレット王国〉だった。



 だが、〈バイオレット王国〉そこは恐ろしい陸海戦争の真っ只中、悲惨な状態だった。鬼「隆牙」は、恐ろしい出で立ちと強靭な体格を見込まれて、早速兵士として任務に就かされた。


 殆どの動植物が海底恐竜たちに、食い荒らされて惨憺たる状態。


 更には、誠に残念な事に、フォード 王も海底恐竜の攻撃を受けて生死の境を彷徨っていた。と、その時に爆発的な威力を見せ付け、バイオレット星人たちの命を救ってくれた鬼「隆牙」を死の淵に呼び付け、フォード 王は言った。


「ビ-チ姫と婚儀を執り行い、この国の王となってこの国を守って欲しい」と言い残して死んだ。

 

 実は…鬼「隆牙」は、最初にビ-チ姫を見た時から恋焦がれていた。

(あんな美しいビ-チ姫と結婚出来るなんて、これは夢ではないか?)


 そこで死の淵で王の遺言を拒絶するとばかり思っていた鬼「隆牙」だったが、姫が父である王にこう言い放った。


「こんな…わたくしでも隆牙さまが承諾して下されば、この国を隆牙様と二人で守って行きます」


 思いも寄らない夢のような言葉に、どんな事をしてもこの〈バイオレット王国〉とビ-チ姫を守り通そうと固く誓った。


 ◆▽◆


 完全に敗北が目前に迫っていたその時、鬼「隆牙」は、何を思ったのか、金の「打ち出の小槌」を振り下ろした。そして、金の「扇子」を少し間をおいて振り下ろした。するとどうでしょう。辺り一面に何とも言えない美しい桜吹雪が舞った。

 

 そして金の「扇子」の桜の花びらの欠けた部分を、金の「打ち出の小槌」の花びらの欠けた部分にピタリと合わせた。


 すると、辺り一帯が後光が差したようにキラキラ✨明るくなり、海底が荒れ狂い巨大な水しぶきが上がったかと思うと、一瞬にして海底にひらひら揺れるブルーのカ-テンの膜が出来て、美しい泡が無数に現れた。

 それはまるでソーダ-水の泡のように透き通った赤やブルーにパープル、更にはピンクの泡が海底から地上に向かって無数に登って行った。


 その様は、余りにも美し過ぎて言葉にならない。夢の世界の妖精の国、それとも人魚の国に迷い込んだのではと、錯覚するほどの美しさだ。

 

 こうしてビ-チ姫が永遠に海底恐竜たちの餌食にならないように、海にブル―のカ-テンでブロックして侵入できない美しい海底都市を築いた。


 何故恐竜たちの棲み処である海底を選んだのかと言うと、海底奥深く忍び込めば、「オニ アイランド」の宝物「打ち出の小槌」と「扇子」を守り通せると思ったからだ。


 アッ実は…金の「扇子」は、美しさを維持するためにヘレン妃が、肌身離さず常備していた美しい扇子と同じ予備の扇子がもう一つ存在していた。


 それをリンゴ婆さんが奪っていた。

 そうそう…ビギン宰相が〈ギャング王国〉ジノ王と手を結んだ理由の一つ、それはリンゴ婆さんを利用する事だった。


 それはどういう事かと言うと、グランド王国に強盗目的で頻繫に侵略して来る強盗団にビギン宰相が、家臣たちに命令を出した。

「あの強盗団の跡を付けて成敗して来い!」こうして…家臣たちが強盗団を成敗しようと、跡を付けたある日の事だ。

 

 すると〈ギャング王国〉の森の中でとんでもない光景を目にした。

 きっとリンゴ婆さんギャング王国のお城で変身していたら、扇子を奪われてしまうと思ったので奥深い森の中で、変心出来るか試していたのだった。


「極夜」の月明かりに照らされたリンゴ婆さんが、一瞬にして醜く恐ろしい頭が二つの大蛇に変身したかと思うと、今度は世にも美しい〈サンフランシスコ・ガータースネーク〉に瓜二つの巨大な蛇に変身を遂げているではないか?

 

 異質な姿に変身するリンゴ婆さんを発見した家臣たちは、早速ビギン宰相にこの事実を話した。


 そこでその不思議な現象の正体を追った家臣たちは、振ったり扇いだりすればどんな高価なものも、一瞬にして手に入る扇子の正体に気付いた。


 ビギン宰相は早速扇子を奪う為に、グランド王国一の美男家臣をギャング王国に送り込み骨抜きにして奪おうと考えた。こうして…リンゴ婆さんは、一瞬グランド王国一の美男家臣に心を奪われ扇子を渡してしまったが、元来大蛇のリンゴ婆さんは人間には、恋はしない。


 こうして扇子はビギン宰相に渡ったが、一瞬の気の迷い、直ぐに目が覚めて本来の目的である〈サンフランシスコ・ガータースネーク〉に瓜二つの巨大な蛇に変身する為に奔走する。

 そこで、ルフィ姫が〈グランド王国〉のビリ-王の所に色仕掛け要因として出掛けている隙に、ルフィ姫の小鳥ハッピーを奪って魔法で扇子を取り戻していた。




 次回が最終話です🙇🙇

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