第23話⁂氷の世界⁂



 それでも…何故静蘭は、あんなにコンプレックスのあった頭が二つの醜い大蛇に変身して、美しい大蛇に変身しなかったのか?


 それが……どういう訳か、美しい姿では本来の血気盛んな感情が湧き起こらない。また、いつ、どんな危険が待っているか分からない。それから美しい姿では威嚇(いかく)にならないのも有る。


 やはり醜いニョッキリ頭が二つ首筋から出た本来の大蛇だと、恐怖を植え付けられる。そこで最も力の発揮できる醜い姿に変身したのだった。

 

 それから美しい〈サンフランシスコ・ガータースネーク〉に変身すると…何故か…興奮すると直ぐに、リンゴ婆さんに戻ってしまうので……。


(エエエエエエ————ッ!って事はリンゴ婆さんが本元になってしまって、醜い頭が二つの大蛇に戻らなくなったって事?それはそうだろう「ギャング王国」ではリンゴ婆さんで通っているのだから……) 


それでも…やはりリンゴ婆さんのままでは海では、酸素不足で生きていけないし、それから……どういう訳か?本来の醜い姿だと興奮しても頻繫にはリンゴ婆さんに戻らない。不思議な現象が起こっていた。


 魔法にも色んな序列が存在しているのかも知れない。当然、美しい〈サンフランシスコ・ガータースネーク〉に変身を遂げたのは最近だから、古株が優位に働いているのかも知れない?

 また…当然大蛇だと海の底もス~イスイ泳げるのも功を奏している。

 

 

 静蘭は(何としても永遠の美を手に入れたい!)そう思い、醜い大蛇に変身して早速海底深く侵入した。


 すると早速、どう猛な、恐竜たちが牙を剝き出し襲い掛かって来た。


 それこそ巨大化したサメを、最もどう猛で野蛮にしたような恐ろしい恐竜ティロサウルスや、モササウルスたちの威力は絶大だ。サメだろうがワニだろうが一網打尽で仕留め、鋭い歯で切り刻み食い殺す凶暴極まりない恐竜たちが、静蘭を取り囲んで来た

 

 静蘭は到底歯が立たないとは思ったが、自分にできる最大限の鎧、元来の醜い姿、醜い頭が二つ首筋から出た醜い本来の大蛇に変身して海底深く潜り込んだのだが、敵は想像以上に巨大で手の打ちどころが無い。恐ろしい海の恐竜たちが周りを取り囲み、もうどうにもならない。


 その時巨大なティロサウルスが一気に、巨大なワニのような大きな口を開け、鋭い歯と強靭な顎で亀の甲羅であろうが木っ端みじんに噛み砕いてしまう恐ろしい海のギャングが、静蘭に襲い掛かって来た。


 大きな口をガバ~ッと開けて、二つある片方の醜い顏を鋭い歯と強靭な顎で一気に噛み砕かれて、ぐしゃぐしゃにかみ砕かれてしまった。


「ギャギャ————————————ッ!グォ——————ッ❕❕クック苦しい!」

 余りの苦しさに、咄嗟に手に握りしめていた扇子を振った。


 するとどうでしょう。一気に世界が変わってしまった。

 一体ここは……一体ここはどこ?


 ◆▽◆


 実はこの時、とんでもない現象が起こっていた。


 その時恐ろしい事に、巨大な水の塊が凄い爆音と共に、ドッドドドドドドドドド————————ッ!バッキュ~ン、ゴウゴウ、ドッカ-—————ン!と音を立て激しい水しぶきとなり、巨大な竜巻が起こり、やがて…海が割れたようになり巨大な洪水のトンネルが出来た。


 するとあの巨大な恐竜たちは一気に竜巻きに飲まれザッブ~~ン、ピッシャ~~ン、ドッボ~ン海流に打ち付けられて、静蘭の周りには一匹たりとも居なくなってしまった。

 そして…美しい噴水?水?の巨大なトンネルが延々と広がっていた。

 静蘭は疑問に感じたが、この不思議なトンネルの先には一体何が広がっているのか見て見たくなり、危険も顧みず突き進んだ。


 ◆▽◆

 こうして静蘭は不思議な世界に辿り着いた。

 そこは……まるで……おとぎ話の夢の世界に迷い込んだような……美しい世界が広がっていた。


 一体ここはどこなのだろうか?真っ青な氷の世界。


 凍り付くほどの美しい一面氷の世界が広がっていた。

 そして…その美しい世界に暫く見入っていると、やがて……そこに巨大な氷河が青い光を放ちながら流れて来た。


 更に…その側には、まばらに砕けた小さな氷河がサファイアのように美しい青い光を放ち、それはまるで宝石を辺り一面にばら撒いたような✨輝きを放ち圧巻の美しさである。


 

 そして…また……しばらく進んでいくと、不思議な青く輝く「氷の洞窟」が見えて来た。

 その洞窟を潜り抜けると……そこには、今までとは違った別の氷の世界が広がっていた。

 

 そこは……一歩足を踏み入れると、まるで別世界に迷い込んだかのような神秘的な光景が広がっている。 青色以外の光を通さない氷の洞窟は混じり気のないまさに“スーパーブルー”である

 氷河から放たれる、まるでLEDのような青い輝き。この美しさは神のなせる業なのか?


(ここは氷の国なのだろうか?)

 まさに氷づくめの氷の国。

 氷の絶壁は角度によって真っ青な光を放ち狂気と美しさを演出してくれる。

 

 そして…広大な雪原はまさに眩しい限り銀色に光り神々しい限りだ。

 

 また、真っ白な雪の結晶や氷の結晶がキラキラ輝きを放つ氷河湖には、湖上に咲く可憐な氷の花が咲き誇り、ダイヤモンドが湖面に散らばっているかのように、眩しい光を放っている。そこに降り注ぐ雪の結晶、雪の華も相まって、ダイヤモンドの世界が延々と広がっている。


 そう思って湖面を眺めていたその時、青の洞窟の中に、この世の物とは思えない美しい女性を発見。


(ああああああ……嗚呼アア……嗚呼アア……何かしら……女神さまの様な、世にも美しい女性が? 洞窟の中に……ひょっとして…ここが魔女の住み家なのだろうか?)


 そう思い慌てて洞窟の中に入ったが誰もいない?(確かに……今この目で見たのだけれど……)不思議な話だ。一瞬にしてその美しい女性は姿を消した。


 仕方なく洞窟の外に出た。

 

 するとどうでしょう。今度は空に目を向けると紫の空を彩る光の芸術、何という美しさ。

 

 紫の空にはオーロラが幾重にも曲線を描いて虹のような、赤やオレンジ、黄色に緑の色を幾重にも染めて、空一面に光のカーテンが…それこそ……ランダムに…乱れ……荒れ狂い……揺らめいている。


 また逆方向に目を向けると、ぼんやりした状態のオーロラが、眩しい限りのオレンジの光を放ち、帯のようにゆらゆら揺れながら広がっている。


 余りの美しさに空に吸い込まれそうになった。とその時……後ろから……誰かが話し掛けて来た。


 それは一体誰だったのか?



◆▽◆

「ギャング王国」に潜り込んでリンゴ婆さんに変身した。


 そして静蘭はこの「ギャング王国」で、本来の目的である、永遠の美〈サンフランシスコ・ガータースネーク〉姿を手に入れる事が出来た。


 それなのにである。何故「リンゴ婆さん」の姿で、こんなガラの悪い「ギャング王国」ジノ王の拠点ラバー城のお手伝いとして、留まっているのだろうか?


 それが……どうも……氷の世界から帰って来てからと言うもの、美しい〈サンフランシスコ・ガータースネーク〉姿の静蘭になれたと喜んでいたのも束の間、ある日突如として美しい〈サンフランシスコ・ガータースネーク〉姿の静蘭に変身しようと思っても、変身出来なくなってしまった。


 だが、リンゴ婆さんの姿だけは永続的に続いていて、あの醜い頭が二つの大蛇にも戻りにくくなっている。ありがたい面もあるが、迷惑極まりない現象が起きている。


 どうしてこんな事になってしまったのか?


 氷の世界で一体何が有ったと言うのか?


 そして…あの美しい御所車や古典四季花柄の艶やかな桜や牡丹、菊などの和花柄を贅沢にあしらった金色の扇子で、高貴な何とも美しい絵柄の扇子が、あれ以来どこにも見当たらなくなってしまった。


 あの……世にも美しい女性は誰だったのか……?

 そして扇子の行方は……?



















 

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