真贋判定機
そうざ
A Machine that Determines Authenticity
飛び込み営業を仕掛けて来た男が提示したのは〔真贋判定器〕なる代物だった。昔懐かしい掃除機の如き形状で、先端のスキャナーを判定したい物品に翳すと、本体のモニターに真贋が表示される単純な機構である。
うちの門構えや広大な敷地から脈ありと考えたのであろう。男は如何にも胡散臭い風体だったが、私は物は試しの暇潰しとばかりに客間へ通した。
男は試供操作を提案した。一回だけでは
「じゃあ、先ずはこいつだ」
私は、つい最近購入したばかりの古伊万里の大皿を取り出した。男がスキャナーを翳すと、
男は
「お次はこれだ」
私は円山応挙の作とされる山水画を取り出し、自らスキャナーを手にした。またしても『贋』がけたたましく浮かび上がった。
私は、必死に額の汗を拭っている男に問うた。
「で、この機械は幾らなんだね?」
男の説明を鵜呑みにした訳ではない。
私は、
「また下らない物を買って」
帰宅した妻が開口一番、毎度お馴染みの小言めいた嫌味を口にしたので、スキャナーをその不自然に張り出した胸に宛てがってやった。予想通り『贋』だった。
「何よ、この
束の間の座興に
真贋判定機 そうざ @so-za
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