第96話 それぞれの報酬
その後、僕以外のメンバーの様子を見て回るが、だいたいみんなレベルが上がったようで、ウルカとアイギスがレベル15に到達、ミリィ、シルク、スミレ、ガンツがレベル14に、ランス、ユートピア、ナインス、メイヴィがレベル13になった。
コトノハとスズ先輩は今回はレベルアップしなかったらしく、レベル14のままだ。
やはり、途中でドラゴンを召喚したメンバーは中々経験値が得られなかったらしい。とはいえ、アーサーを含め召喚されたドラゴンは総じてレベルアップしたようなので問題ないだろう。
因みにレベル15になったウルカとアイギスはまたボーナスアビリティポイントを獲得したらしい。やはり5の倍数レベル毎にボーナスアビリティポイントが貰えるようだ。
これだけ貰えるのなら、現時点で面白そうなアビリティを試しに習得してみても良さそうだな。
因みにアイギスは特殊部位破壊を達成したという称号『不壊を壊す者』を入手していた。……どうやらあのゴーレムのコア、本来なら推奨レベル帯のプレイヤーの攻撃では破壊できるレベルの耐久では無かったらしく、いつ死に戻ってもおかしくない状態でカウンターをぶちかましたアイギスだからこそ成し遂げることができた『偉業』だったらしい。
なので、アイギスはすごい誇らしげであった。
あと、『隠れ道の通行許可証』についてはどうやらランダムで与えられているらしく、僕の他にはウルカ、ユートピア、アイギス、メイヴィ、シルクが獲得していた。まぁ、パーティーに一つあれば十分なので問題はないだろう。
その後、全体初討伐報酬としてそれぞれどんな装備類を選んだのかを確認していく事にした。
これは完全に僕の興味によるものであったのだが、皆も他の人が選んだものが何だったのかは気になっていた様子で、特に迷いもなく公開してくれた。
まずウルカだが、彼女はアクセサリーを選んだようだ。ドラゴンに跨るゴーレムみたいな人形の姿が彫られた宝石が付いたネックレスのようだ。
「私はこの『巨像兵の昇竜ネックレス』を選んだわ。これは【自動召喚】のアビリティを持ってるのよ」
「……【自動召喚?】」
ウルカが選んだ『巨像兵の昇竜ネックレス』はドラゴンを召喚した場合、ウルカが送還しない限り自動で『召喚』し続けるという効果を持つ【自動召喚】のアビリティが装備補正として与えられていた。
このアビリティは戦闘・非戦闘時に関係なく発動し続け、MPを随時消費するが常にドラゴンを召喚し続ける事が可能となるらしい。
「成る程、擬似的な常時召喚ができるアクセサリーってことか。それならウルカも戦いやすくなるな」
「そういうこと。いちいちスキルを発動しなくて済むし、今回のレベルアップで召喚コストがまた減ったから、より維持しやすくなったわ」
現状、センディアを召喚していないと竜騎士の仕様で本来の力を発揮できないウルカにとって、自動で召喚し続けることができるのはかなり便利だろう。
また、『召喚』のスキルを詠唱しなくてもいいということはその分他のスキルやアーツの発動が容易になるので、隙が少なくなる。
ただ、MPが足りないと当然ながら『召喚』を使うことができないのでアビリティ効果が発動しなくなる。なので、よりMPの管理が重要となるだろう。幾ら召喚コストが減ったとはいえ、その点は注意が必要だ。
そして、ランスとミリィも同じくアクセサリーを選んでいたが、それぞれステータス値を上げる効果を持つアクセサリーである『巨像兵の攻強ブローチ』と『巨像兵の知強ブローチ』を選んでいた。
ウルカの『巨像兵の招来ネックレス』と違ってこれらには特殊な効果はないものの、攻強ブローチはATKとVITのステータス値を30ずつ追加、知強ブローチはINTとDEXのステータス値を30ずつ追加するという装備補正を持つ。
上げる箇所が違うとはいえ、合計で60も上げてるのはNPCの市販品はもちろん、おそらく現状のプレイヤーメイドと比較しても高い性能と言える筈だ。
何故2人はアクセサリーを選んだのか聞いてみると、どうやらオキナの防具や僕が渡した武器があるから今回はアクセサリーを選んだ、ということらしい。……うん?
それを聞いて、僕と同じことを思ったであろうアイギスが口を開く。
「……いやね? 色々効果のある魔導杖を持つミリィちゃんはともかくとして、ランスくんはただの堅木の長槍なんだから、普通に特殊効果のある武器を選んでも良かったんじゃないかしら?」
「はっ!? そう言われればそうですね!? うわぁ〜〜失敗したぁ〜〜」
ランスもアイギスからそう言われて気付いたようで物凄く後悔していた。……まぁ、僕の作った槍を大切にしてくれるのは嬉しいけど、戦力の補強としてはやはり強い武器を選んだほうが良さそうだとは僕でも思う。
「……どんまい、ランス」
「うぅ、ミリィ……」
その直後にミリィから慰められていて若干だが気も取り直していた様子だったので、一安心して僕は他のプレイヤーの方に足を運ぶことにした。
スズ先輩はユニーク装備を武器と防具で手に入れていたので、ランスたちと同じくアクセサリーを選んでおり、こっちはSTRとDEXが上がる『巨像兵の筋強ブローチ』を手に入れていた。どうやら先輩はまだ筋力を上げるつもりらしい。
「どこまでSTRを上げるつもりなんですか……」
「上げれる限りは上げるつもりだぞ。さっき、ナインスからサブウェポンとしてより攻撃の高い武器を持つのもいいと勧められたし、その手の武器はSTRが無いと使えないと聞いたからな」
確かに、先輩の武器はユニークとはいえ攻撃特化の武器ではないので、逆に攻撃特化の武器を使えば大ダメージを与えることは可能だ。そして、その武器の装備には高いSTRが必要なのも正しい。
だが、現状の先輩のSTRのステータス値的に、おそらくだが序盤に使えそうな高火力系の武器は普通に装備可能だと思われる。
「いや、それならまずその手の武器を選びましょうよ……」
「アタシも普通に武器を選ぶと思ってアドバイスしたんだがな……」
そんなナインスは、アイギスが習得していた【根性】が発動するようになるアクセサリーである『巨像兵の土根イヤリング』を選択していた。名前は、いわゆる『土根性』という事なのだろうか?
次に武器の方だが、これはアイギス、コトノハ、メイヴィ、ガンツが選択していた。こっちは基本的には固有系の装備となっている。
まずアイギスは『巨像兵の技巧盾』を獲得した。これはVITとDEXを40ずつ上げる装備補正を持っており、更に『リフレクター』などのカウンター系の攻撃の対象を攻撃してきた相手以外に変更可能となる【反射角調整】というアビリティが備わっていた。
デザインは古い遺跡のようなデザインとなっていて、先のライデングレーウルフの全体初討伐報酬で手に入れていた『雷騎の姫鎧』とデザインの雰囲気はよく似ていたものの、時々光のラインが走る為、何処となく近未来感も感じさせる。
「フフフ。これで盾も新調できたわね。今回の戦闘で盾をダメにしちゃったから、ちょうど良かったわ!」
なお、それまで使っていた鉄の大盾は、気を失う前に色々と無茶をしてしまった事で装備耐久値を大きく削ってしまい、結果として戦闘終了後に壊れてしまったらしい。南無。
「まぁ、頼めば同じものにはならないけど、作り直せるからサブウェポンとして保管する予定だけどね」
次にコトノハは、片手剣使いなのに何故か両手剣である『巨像兵の分離剣』を獲得していた。こちらもさっきのアイギスの武器のように遺跡のようなデザインだが、近未来感ある光のラインが流れている。
これは単純にATKのステータス値を80上げてくれる装備補正を持った武器なのだが、実は追加効果として『分離機構:片手剣(双)』が備わっており、なんとサイズの異なる2本の片手剣へと分離することが可能となる。
その場合、今の片手剣2本よりも火力が落ちるのではないかと思われたが、単純に今持っている片手剣2本合わせた装備補正と同じくらいなのだそうだ。
「重さはそれなりにあるようだけど、武器の【軽量化】のお陰でかなり軽くなるから、今までと同じ感じように使えてダメージは高くなりそうだね」
武器に付いている【軽量化】は体感の重量を軽く思わせ、持ち上げる際にSTRを必要としなくなるという効果なので、武器本来の重さは変わらないようだ。そして、武器は重いほど通常攻撃によるダメージが増加する仕様なので、コトノハの場合は単純に火力がかなり上がったことになる。
また、今まで必殺系のアーツを使用する際は片手剣1本しか対象になっていなかった事もあって片手剣両手使いのコトノハは火力が落ちていたらしいのだが、これは合体させれば両手剣扱いなので、しっかりと火力を出すことが出来るようになったらしい。凄いな。
そして残るメイヴィとガンツの武器だが、メイヴィはDEXの値が大きく増加して【弓術補正】が付いた『巨像兵の戦弓』を獲得し、ガンツはVITが大きく上昇して【盾術補正】が付いた『巨像兵の大盾』を獲得した。
どちらも僕が選ばなかった方の杖と似た、特定のステータス特化かつ戦闘技能の補正効果を与えるアビリティ付きの武器となっている。純粋に戦力を求めるのなら、これらの武器のほうが取り回ししやすくていいだろう。
これらのデザインは近未来感は特になく、僕の魔力核の保管杖みたいにゴーレムの一部を模したようなデザインとなっている。
「結局、どの武器にしようかなって迷ったから、火力特化にしちゃった。けど、これで足手まといにはならないよね!」
「……次はこいつで、仲間を守りきる」
新たな武器を手に入れ、意気揚々としているメイヴィとガンツ。2人はユートピアやナインスと違って、NPCの店売り武器を使っていたため、これだけでかなりの戦力アップとなるだろう。
そして、防具を選んだのはシルク、スミレ、ユートピアとなる。
まず、シルクとスミレに関してはそれまでが装備補正のほとんどない店売りの防具だったのだが、今回初めてまともな補正効果を持った防具を手に入れることになるらしい。それでここまでやって来てたのか……。
「ある意味、プレイヤースキルの点で言えばシルクとスミレも頭抜けてるタイプなのよね……」
「確かに、私達はある程度ドラゴンや装備で補完してるところがあるからね……」
ウルカとコトノハもよくよく考えると……といった感じで2人の様子を眺めていた。
まずシルクは『巨像鉱夫の炭鉱鎧』という頭部以外の複合防具を選択していた。これはSTRとVITの数値を大きく増やす効果を持ち、なおかつ【採掘量増加】の効果アビリティを持つ装備となっている。
容姿はガンクツが身に着けていたようなドワーフ族特有の衣装をモチーフにしているようで、部分的に鎧が付けられたビンテージデニムのセットアップのような服装となっている。これにテンガロンハットでも被ればあっという間に西部劇に出てきそうなレディの出来上がりだ。
「どう? ウチ、かなり似合ってるっしょー?」
「そうね、それでツルハシ持ったらもう完璧ね! 私もこういう格好なら似合うと思うのよね!」
ニシニシ笑いながらポーズを取るシルクに対して、スクショを取りまくるアイギス。まぁ、ハーフの彼女には確かに似合いそうではある。
「ニンニン! これで拙者もニンジャに一歩近づいたでござる!!」
「まぁそれ、格闘家向けの装備だけどな」
「……なんとぉ!?」
次にスミレだが、彼女は市販の忍者の装束では補えなかった頭防具である『巨像兵の武闘鉢金』を選択していた。これは見たまんまの鉢金であり、某忍者漫画の登場人物たちがつけているような物にデザインはよく似ていたが、ナインスが言うには武闘家向けの装備らしく、装備補正としてはSTRとAGIが増加するという仕様になっていた。
デザインが遺跡風でモールドが激しく、若干忍者の服装から浮いている気がしないでもないが、本人が嬉しそうなのでおそらく問題ないだろう。
他の装備補正として、SPの自然回復量が2%増える効果の【スタミナアップ レベル4】というアビリティを持つので、【投擲】アーツや【暗殺術】アーツ、【弓術】アーツを用いるスミレにはかなり有用な効果となっているだろう。
そして最後は何故かにへら笑いが止まらない様子のユートピアが選んだ防具だが、彼はVITとDEXの装備補正を持ち、斬撃攻撃のダメージを増加させる【斬撃強化 レベル4】のアビリティを持つ腕装備の『巨像兵の技巧腕輪・斬』を獲得していた。単純に使い勝手の良さから選んだようだが、革鎧にメカニカルな雰囲気の腕輪は意外とよく似合っている。
「フフ、これで私も特殊な装備持ちの仲間入りだな……! 後発組に自慢できるぞ!」
「良かったね、ユートピア。……てか、私達って今回ので結構強くなったよね?」
ユートピアの呟きにそう返すメイヴィに対し、彼らのパーティーメンバーであるナインスとガンツが力強く頷く。
確かに、今回のエリアボス戦を経て僕ら全員がかなり強くなった。それこそレベル的にもそうだし、プレイヤースキル的にもそうだろう。
これは、邪竜討伐に向けていい経験ができたと言っても過言ではないだろうな。
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