第83話 先輩とアーサーの力
そんなこんなで進んでいると、早速モンスターが現れる。ロックゴーレムだ。
さて、どうしたものかと考えているとスズ先輩とアーサーが前に出る。
「フフ、ここは私の力をリュートに知らしめる時だな!」
「……だ、そうだ。済まないが、ここは俺たちに任せてもらおう」
そう言ってスズ先輩は背中に背負った大剣を構え、アーサーは何処からともなく両手剣を呼び出す。おそらくあれが【勇剣召喚】の効果なのだろう。手に持つのは勇剣ドラグカリバーというらしい。
そのドラグカリバーは、スズ先輩の持つ『覇竜の大剣』に装飾は似ているが、細かな作りは異なるようだ。こちらも広義的には大剣に当てはまる両手剣だろう。
大剣は基本的には大型の両手剣が当てはまるため、刀身の幅が広い覇竜の大剣も刀身が長いドラグカリバーもどちらも大剣として扱われている。
武器のカテゴリーは基本カテゴリーである刀剣の他に、サブカテゴリーとして両手剣や大剣などが存在している形になる。前者は戦闘技能アビリティのスキルやアーツの発動条件となり、後者はその他のアビリティの効果の発動条件となる。
「ふぅ……『ソニックスラスト』!」
スズ先輩が小さく息を吐くと、そのまま『ソニックスラスト』を使って勢いよく前に出る。流石にSTRが高いだけあって、あれだけの質量の武器を持ちながら、かなりの速度を出している。
通常、質量の重い物を持つとその分、加速系のスキルやアーツの効きは弱くなってしまう。速さを重視しているコトノハはそれを考慮してか、かなり軽い片手剣を利用していた。
僕は関係なかったので忘れていたが、武器が軽ければ軽いほど通常攻撃の火力は低くなるという仕様があるので、コトノハはその火力の低さを片手剣を両手で2本同時に使い、手数を増やす形で補っていたようだ。
対して、スズ先輩の方は重い武器を自身のSTRで無理やり担いで高速で移動している形となる。どうやら十分なSTRがあれば、大剣を持っていてもそれなりの速さで移動する事が可能ということらしい。
理屈は分かるが、それにしたって本当なのかと疑ってしまうが、目の前にそれを体現しているプレイヤーが居るので、文句は言えない。
スズ先輩は、かなりSTRとAGI重視のステータス構成のようだ。
「喰らえっ! 『ダインスラッシュ!』」
そのままスズ先輩はロックゴーレムの前で地面を蹴り、勢いよく飛び上がると大剣を持ち上げる。
そしてアーツの発動と同時に大剣を振りかざすと、衝撃波が放たれてロックゴーレムに命中する。これは確か【剣術】アーツでの一つで、剣から凄まじい衝撃波を飛ばして攻撃する技だった筈だ。確かレベル10で覚える強力なアーツで、必殺系とも呼ばれている。
更にスズ先輩は衝撃波だけでなく大剣自体もロックゴーレムにぶつける。それによりロックゴーレムのHPは大きく減るが、まだそれでも半分に至っていない。その見た目通りVITがかなり高いらしく、物理に耐性があってかなり硬いモンスターのようだ。
更にパワーアーマー的なものなのか、ロックゴーレムはダメージを喰らいつつも眼前に現れた敵に対して的確に攻撃を放つ。それに対し、スズ先輩はそのまま大剣を盾のように扱い、攻撃を受ける。
耐久値が無いからこそ出来る芸当である。
「止めだ。……滅龍破斬――『ドラグブレイズ』ッ!!」
敵から受けた攻撃の勢いでロックゴーレムの前から離脱したスズ先輩と、入れ替わる形で前に出るアーサー。
その剣には黄金のオーラが発生しており、そのままアーツの名前を叫ぶと勢いよくその剣を振りかぶる。
そして、先程の『ダインスラッシュ』のような衝撃波が黄金のオーラとともに飛んだかと思ったら、そのままオーラが龍の姿へと変化し、ロックゴーレムに向けて飛んでいく。
そしてそのまま龍がロックゴーレムを喰らいついたかと思うと、勢いよく爆発した。当然、その後にロックゴーレムの姿は残っていなかった。
「ほう、中々やるのう」
「あのドラグブレイズ、ルヴィアのドラゴンブレスみたいな火力だったね」
「うむ。妾と違って自力で撃てるからの。かなり強力なのは間違いなかろう」
ルヴィアはしっかりアーサーの事を強いと認めていた。てっきり自分のほうが強いと言い出すのかと思ったが、どうやらそうでもないらしい。
「フッ、そもそも種族が違うのでな。それに妾たちほどランクが高くなると、単純な力比べでは比較しようがないのだ」
「ああ。その龍姫の言う通りだな。それに俺の場合、この剣が無いとまともに戦うことができない。そういう点はその龍姫も同じなのだろう、ニンゲン?」
アーサーは消費SPが高くなるというデメリットの他に、どうやらドラグカリバーを手放すとゲージ以外のステータス値が大きく減少してしまうというデメリットを持っているらしい。まるでドラゴンを呼び出してない時の竜騎士みたいだ。
しかし、アーサーからあの剣を奪い取るような相手が出てくるとは思えなかった。
「フッ、『アームブレイク』や『ディスアーマメント』など幾らでも武装解除の手段はあるからな。だからこそ、俺は剣がなくとも戦えるだけ強くなる必要があるのだ」
アーサーが挙げたスキルは強制的に武装解除するタイプのスキルのようだが、そんな特殊なスキルはどのように覚えるのだろうか……。
流石にアーサーもどうやれば覚えられるのかは分からなかったらしい。まぁ、それでアビリティの習得方法とか分かったら、喋れるドラゴンを持ったプレイヤーが有利になってしまうから仕方ないだろう。
まぁ、この手のスキルの名前が分かるだけでも有利ではあるのだろうが。
「うむ! よく言った! 流石はブレイブキングドラゴンよな! 気に入ったぞ!」
「フッ、ブラッド・ドラグーンも殲滅力は強力だと聞いたことがある。いざというときは頼りにさせてもらう」
ルヴィアとアーサーはドラゴン同士、気があったのか謎の友情らしいフェイズに突入していた。
まぁ、変にギスギスしているよりはこうして互いに認め合う感じのほうが気持ちいいだろう。
一方で、スズ先輩は自分を無視して3人で話しているのを見て、「私も混ぜろ!」と飛び込んできた。
……さて、先を急ぐとしようかな。
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