第23話 街の外へ

「さて、思わず時間を食ってしまったけど、早いところ南門へ向かおうか」


「そうであるな」


 その後、僕とルヴィアはファスタの街の南門の方に向かって歩いていた。


 地図やモンスター情報で調べた結果、やはり確認依頼の対象であるスライムやグレーウルフの群生地はそっちの方が近くにあった。


 北門の方はそれらの群生地が門を出てから少し離れた場所にある上に、イーリアの言うように推奨レベルが高めとなっているようなので、しばらくは向かわないつもりだ。


 いずれは向かうつもりではあるのだが、それより先に南門から行ける場所を進めていこうと思う。


「そういえば、今何時だろう……」


 現在の時間を確認してみると、ゲーム時間で一般のサービス開始辺りからだいたい3時間半くらいが経過している。結構遊んでたんだな。


 これは、現実では52分程度過ぎていることになる。ベータテスターたちの多くはそれより更にリアルで約1時間、つまりゲーム内で4時間程長く遊んでいる事になる。


 チュートリアルやさっきの騒動などで割と時間を食ってしまったているが、チュートリアルもそれなり離れた場所にある施設を移動しながら進めていたので、時間がかかるのは仕方ないだろう。それは他のプレイヤーも同じ筈だ。


 実はキャラクリエイトの部分は時間加速システムの対象外らしいので、そこで使った時間はそっくりそのまま現実の時間と同程度経過していることになる。だから予めちゃんと考えておくようにと潤花に念を押されたわけだな。


 しかし、流石にゲーム内で3時間経過しても、チュートリアル中であるプレイヤーの人数は減らない。むしろさっきよりも多くなっているような気がする。


 おそらくは事前設定をせずにプレイし始めたプレイヤーがやっとのことでキャラクリエイトを終わらせた感じなのだろう。これはまだまだ増えそうな気がするな。


 因みにチュートリアル中のプレイヤーにはアイコンが表示されず、近付くと半透明化するようになっている。干渉不可の為に行われる処理のようだ。


 チュートリアルが終わったプレイヤーの多くは、おそらくレベル2かレベル3くらいには上がっているのだろう。それはルヴィアが得られた経験値量から察することができた。


 それこそ僕のレベルアップに必要な経験値量からすれば、ちゃんと戦闘に関与していれば普通にレベルアップしててもおかしくない量だと思う。絶対はないからなんとも言えないけど。


 僕の場合、使ったスキルがダメージをほとんど与えられなかった『マナボール』と『魔力供与』だけだったので、ほとんど戦闘に関与できなかったとみなされたのか、経験値はあまり入っていなかった。


 戦闘結果には左右されない、アビリティやジョブの方のレベルにはちゃんと経験値が入っていたのだけど。


 そして、その全体経験値の殆どをかっさらっていったルヴィアだが、SSSSランクという超高ランクであることからか、レベルアップにかなり膨大な経験値を必要とするようで、こちらもまだ当分の間はレベル1のままになりそうだった。


 今後はもう少し支援スキル等を使ったほうがいいのか、それとも戦闘での経験値集めは諦めて持っている生産スキルでの生産活動に勤しんだほうがいいのか。


 その点は今後プレイしながら判断する必要があるだろう。


「むっ! 主殿、門の下の方が見えてきたぞ!」


「あぁ。あの神殿からも見えてたから相当デカイんだろうなとは思ってたけど、実際に近づいてみると本当に大きいな」


 ルヴィアが眼前にそびえる巨大な門を指差しながら騒ぎ出す。それは50メートル程だろうか。かなりの大きさの門が備え付けてある。高さがあれば当然横幅も広く、そこから伸びる道は実は4車線道路があっても十分なほど広かったりする。


 道は中央にある聖竜神殿まで繋がっており、その神殿の周囲をぐるりと周り、そして反対側にある門の方向へ同じように繋がっている。


 どちらの門も大きく開かれており、そこから荷馬車や荷車などが検問を受けてから、通り過ぎていく。おそらくそれらはNPCのものなのだろう。街の中では邪魔にならないようゆっくり走っていたな。


 因みに普通の通行人は門の方ではなく、その門から少し離れた場所に小さく作られた入口で確認を受ける必要があるらしい。


 冒険者ギルドでイーリアが言っていた守衛役の騎士が、そこで門番として通る人の確認をしているようだ。因みに街の内側から見て右側が外に出る人向けで、左側が中に入る人向けの入り口のようだ。


 現在は案の定というか、プレイヤーしか並んでいないようで、同じ格好の人物ばかりが長蛇の列を形成していた。


 取り敢えず、僕らもその列に並んでみた。するとしばらく経った時に、ふと背後から誰かが僕の背中を叩いてきた。


 気になって振り返ると、僕よりも少し幼い歳と思われる少年と少女が並んで立っていた。おそらくはパーティーを組んでいるのだろう。同じような初期装備を着ていることからプレイヤーだということが分かる。


 片方は茶髪の散切り頭の少年、片方はピンク色のツインテールの少女。どちらもあどけなさが残っている。それなりに幼い子供だろうか。


 とはいえ、顔のアニメーション化で実年齢は分かりづらくなっているのでもしかしたら歳上だったりするかもしれない。


「えっと、なんでしょう?」


 どう返事するか咄嗟に考えた結果、何だかぎこちない返しになってしまったが、その声を聞いて少年のほうが凛とした眼差しを向けながら僕に話しかけてくる。

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