特別話 ギルバードとパトリシア
一応この作品しか見ていない人にもと思い、上げようと思います。
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――隼人が帰還した後――
「…………」
隼人の師でありS級冒険者1位『戦神』の異名を持つギルバードは、隼人が消えた所にある魔法陣の跡をぼんやりと見つめていた。
その跡の隣には隼人が愛用していた魔剣――破壊剣が鞘に収まった状態で落ちている。
隼人が常に肌身離さなかった魔剣が落ちていると言う事実が、この世界に隼人が居ないことを何よりも証明していた。
「……いい笑顔だったな……弟子」
(人の気も知らないで呑気な奴だな全く……まぁそれも弟子らしいんだが)
ギルバードはゆっくりと魔法陣と魔剣に近付き、魔剣をそっと回収する。
すると一瞬喜んでいるかのように魔剣がカタカタと動いたが、
「……お前も寂しいのか? 世界最強の魔剣に愛されるなんてやるな俺の弟子」
普段中々隼人を褒めないギルバードだが、この時ばかりは素直に言葉に出た。
決して届かないと分かっているのに。
(ははっ……俺も歳をとったな。まさかたかが弟子が居なくなったくらいでこんなに寂しく思うなんてな)
「ギル―――」
ギルバードが魔剣を持って佇んで居る所に、先程までほぼ1人で魔王軍の半分を相手取っていたパトリシアがやってきた。
初めは戦争が終わった喜びを分かち合おうとギルバードを呼ぼうとしたが、彼が隼人の剣を持って今まで見たことが無いほどに落ち込んでいる姿を見て言葉を失う。
「……隼人くんは?」
「……帰ったぞ。弟子の家族がいる世界にな……」
ギルバードは勝ち戦が終わった後とは思えないほどの哀愁感を漂わせていた。
隼人よりも付き合いの長いパトリシアでさえこれほどまでに落ち込んでいるギルバードを見るのは初めてだった。
ギルバードが心配になったパトリシアは彼の前に移動する。
そして俯くギルバードを覗き込み―――
「―――我慢しなくてもいいのよ。貴方にとって世界で
「……なぁパトリシア」
「どうしたの?」
パトリシアがそう聞くと、ギルバードが顔を上げた。
ギルバードの目からは涙が溢れており、その
「……俺は……
「……きっとなれていたと思うわ。だって貴方のお陰で彼はあそこまで強くなれたよ? 初めの頃の彼を思い出してみて」
「……ゴブリン程度にも何度も負けていたな」
2人は10年前に隼人がゴブリン相手に純粋な戦闘を挑んで負けたことを思い出してクスクスと笑う。
「でしょ? それが今ではドラゴンを倒せるまでになったのよ」
「物凄い進歩だな。こう考えると俺もお前も頑張ったよな」
「本当にね……」
そこから2人は昔の隼人の事を言い合って笑ったり怒ったりしていた。
すると突然ギルバードが涙を拭って立ち上がる。
「ああーしんみりとするのはもうお終いだ!! 弟子も元気でやっているだろうし、アイツももう大人なんだから大丈夫だろ」
「そうね。今頃親に会えて泣いているかもしれないわね」
「まぁアイツはまたこれからもしぶとく生きていくだろ。俺達が心配しなくてもな」
それよりも―――と言ったギルバードは、隼人が最後に残したお願いを実行することにした。
それは―――
「パトリシア」
「ん? 一体どうし―――」
「―――好きだ。ずっと昔から。どうか俺と結婚してくれ」
「………………へ?」
『師匠はそろそろ幸せにならないと』という隼人の願いだった。
いきなり告白されたパトリシアは呆けた顔を晒した後、顔をこれでもかと真っ赤に染め上げる。
「い、いきなり何を言い出すのよ!!」
「いきなりですまないが、これがあの
「そ、それとこれが一体何が……」
「―――そして俺が1番幸せな未来を掴むための勇気をアイツからもらったんだ。だから俺はもう逃げん。こんな不甲斐ない俺だが、どうか結婚してくれないだろうか」
ギルバードの熱烈な告白を聞いたパトリシアは、
「本当に馬鹿な奴ね。でも―――私も、ギルが好きよ―――」
照れた、でもそれ以上に嬉しそうで幸せそうな満面の笑みを浮かべて、そっとギルバードの唇に―――
特別話 ギルバードとパトリシア 了
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何かとこの作品で1番イチャイチャしてるかもしれんこの2人。
新作を投稿しました。
是非みてみて下さい。
『危険度SSS級世界の中堅魔術師、A級終末世界の日本に転移する〜S級世界最強クラスの無自覚無双ぶらり旅〜』
https://kakuyomu.jp/works/16817330654615469597
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