第24話
「それでは組織に入ってくれた事だし、日本の現状を説明しよう」
代表が椅子に座り直してそう言う。
俺もその事については気になっていたので丁度よかった。
「隼人君はまだ会っていないかもしれないが、この世界には君の好きなラノベにいる妖怪や霊、モンスターが存在する」
「いやもう会っていますよ、モンスターには。何なら2体は倒しましたし」
確かにこの世界でモンスターに会った時は驚いたが、異世界ではモンスターなんてそこら辺にうじゃうじゃといたのでそこまで違和感は無かった。
この世界のモンスターは異世界のと少し違うかもしれないけど、概ね一緒だったので特に戦いにくくもなかったし。
俺がそんな事を思っていると、代表が固まっていることに気付く。
そして俺の隣に座っていた宮園も同じく固まっているが、此方には焦りの感情がありありと浮かんでいる。
「……どう言う事だね清華君?」
「えっと……」
どうやら俺の事を報告していなかった様だ。
自分も好き勝手していたので少し悪い事をしてしまったかもしれん。
代表に睨まれて宮園は口を紡ぐが、どちらも宮園が来る前には既に倒していたのでフォローしてやる。
「俺が宮園を撒いて倒したんですよ。人には見られたく無いでしょう?」
「ふむ……まぁ隼人君なら清華君の尾行を撒くなんて容易い事だろう。今回の不祥事は不問とする」
「あ、ありがとうございます……」
ホッと安心したような顔つきになる宮園。
よかったよかった。
流石に俺のせいで他の人が怒られるのは気分が悪いからな。
「それでその異形達がこの世界にいる事は理解しましたが、異能者は世界にどれ程居るのですか?」
俺的にはモンスターなどよりも人間の方がよっぽど怖いので、出来る限り正確な情報が欲しい。
数によっては力を極限まで隠して生活しないといけなくなるかもしれないから。
「そうは言ってもそこまで多く無いよ。世界では大体1億人ほどだろう。日本は無自覚の者も合わせて500万人程だと言われている」
「そ、そんなに居るのですか……? それって結構危険なんじゃ……」
俺は予想外の多さに目を剥く。
異世界では全ての人がスキルを持っていたし、冒険者でも無い大人でも異世界人なら拳銃の弾位なら怪我は負っても死にはしない。
冒険者なら擦り傷程度だろう。
流石に子供や病人は死んでしまうけど。
しかしこの世界の人間はたかが拳銃如きで死んでしまう。
それは格闘技を習っている者でも同じだ。
きっと身体の作りが微妙に違うのだろうと俺は予想している。
因みに俺の体は、異世界人の物へと変わっていた。
拳銃では多分傷1つ付かないだろう。
しかしそんな俺の心配は杞憂だった様だ。
「はっはっは! そんなに心配しなくても大丈夫だ。異能者の7割は戦闘能力や殺傷力はゼロだからな」
「私も家の権力を使って調べてみたけれど、大体それくらいの確率だったわ」
さらっと権力を使ったと言える宮園は、やはりお金持ちなんだなと思った。
規模がまず違うしな。
しかし世界に1億人か。
俺の予想より大分多いな。
だがそんなに居るのなら、どうして今まで俺たちは気付かなかったんだ?
こうしてモンスターも居るわけだし、それを討伐するのなら、大分大掛かりな戦闘になるはず。
師匠くらいの強さの人間がいるのなら全く気付かれずに討伐も可能だろうが、この世界にそこまでの強者がいるとは思えない。
「その異形たちは今までどうやって討伐してきたんだ? 正直言って今の異能者ではS級以外の殆どが勝てるとは思えないんだが」
「やはり分かってしまうか……」
代表は眉間を押さえて難しげな顔をする。
そして護衛たちや他の異能者たちは情けなく思っているのか俯いている。
その反応だけで大体その話の展開が見えてくるぞ。
「隼人君の言う通り、今の異能者には戦える者は殆どいない。そもそも異能自体がここ100年くらいの歴史しかないからな」
まぁ最初の異能の登場が、異世界帰還者の子供なら、確かにそれくらいにしかならないだろうな。
ならそれ以前は誰がこの世界を守っていたんだろ。
大方魔法使いみたいな存在がいるんだろうよ。
「もしかして……異能者の他にも不思議な力を使う者たちがいるのか?」
「ああいるよ。陰陽師や魔女といったまさしく人外の者達がな」
「魔女に陰陽師ね……そいつらは異能者とは何が違うんだ?」
「彼等は霊気と言う力や、魔力と言う超常的な力を使う。だから規模で言えば異能者の方が多いが、陰陽師や魔女の方が個としては大分強い」
「だから日本ではそう言ったおかしな現象が少ないのか」
なるほどな……まさかこの世界が本当にラノベのような世界観だったとは……。
魔女は何となく西洋っぽいから、日本では陰陽師が主だろうな。
しかし陰陽師がどれほどの実力なのか1度見てみたい。
出来れば異世界でのA級冒険者位強い人がいればいいんだが。
俺が陰陽師に思いを馳せていると、ふと代表が思い出したかのように言う。
「そう言えば、隼人君のご家族は心配してないのかい? もう10時だよ?」
「あっ……今すぐ帰らせていただきます!! 優奈さん、またお会いしましょう!!」
「あ、さようなら隼人君……」
そんな代表の言葉に俺は優奈さんに挨拶をした後、全速力で家に帰った。
その後で2日連続で遅くなったことに家族に質問攻めにあったことは言うまでもないだろう。
そのせいで家族に優奈さんのことまで話さないといけなくなったことは大きな誤算だったが。
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