第23話
「コホンッ! それじゃあ契約の話に移ろうか」
俺が仁王立ちで龍童代表の前に立っていると、代表が1度咳払いをした後そう言う。
結構不遜な態度を取っている自覚はあるが、こんな態度を取っても護衛が何も言わないくらいには俺の力を認めてもらえた様だ。
どちらかと言えば、守ろうとするだけ無駄と思ったのかもしれないが。
因みに彩芽はこの部屋の隅っこで、
「新人に負けた……私S級なのに……もう辞めようかな……ああもう辞めよう。またF級からやり直そう」
茫然自失となり、ブツブツと念仏の様に言葉を発していた。
周りにはどんよりとした暗い雰囲気が漂っており、誰も近付きたく無いと言った状況で慰める人はいない。
少しやり過ぎだかもしれない。
いや確実にやり過ぎたな。
もう少し接待して戦えばコイツの面子は保たれたかもしれない。
それはそれでコイツがキレたかもしれんが。
昔、実力の離れ過ぎた相手と戦うのは辛いし楽しく無いと師匠が言っていたのが、今になってやっと分かった気がする。
俺は昔の事をふと思い出した後、龍堂代表に「少し待ってくれませんか?」と言い、自身の足に抱きついている颯太に目を向ける。
「颯太、そろそろ離れないか?」
「嫌だ! 僕を隼人お兄ちゃんみたいなヒーローにしてくれるまで離さない!」
颯太はイヤイヤ言って中々離れない。
どうやら先程の俺の力を見て、憧れていたヒーローの様な異能者に似ていたらしく、こうして終わってからずっと「弟子にして、隼人お兄ちゃん!」と言われ続けている。
だが俺は誰も弟子に取る事はしないと決めているので、断っているんだが……。
「いいでしょ、いいでしょ! 僕を弟子にしてよ隼人お兄ちゃん!」
「———いい加減にしなさい颯太っ!」
「へ?」
「あっ、お姉ちゃん!? どうして此処にいるの!?」
突然知らない声がしたと思ったら、部屋の扉の前に1人の美女が居た。
身長は高めの170cm位ありそうだが、物凄くスタイルが良く、見た感じ年齢は20代前半に見え、茶髪のボブは親しみ易さを感じる。
しかしその顔はムッと頬を少し膨らませており、怒っている様に見えるのだが、
「———めちゃくちゃ可愛いじゃん……」
「ひゃっ、かっ、可愛い!? わ、わた、私が!?」
ついぽろっと出た言葉が聞こえていたらしく、顔を真っ赤にしてあわあわとし出した。
その姿もめちゃくちゃ可愛い。
言っていなかったが、俺の精神年齢が27のため、恋愛対象もそれに引っ張られて同じ位の年齢だ。
俺からしたら高校生に手を出すのは、高校生が小学生に手を出すのと同じに感じる。
そんな圧倒的出会いの少なく、尚且27年間彼女のいない身として、此処は何とか仲良くならねば。
それとシンプルに俺のタイプでもある。
俺は颯太を抱っこしてから彼女の前まで移動して、颯太を優しく渡しながら精一杯の爽やかな笑みを浮かべて挨拶する。
「勿論貴女の事ですよ。初めまして、俺は藍坂隼人と言います。年齢は17、趣味は身体を鍛える事とアニメ鑑賞やラノベです。貴女がもしかして颯太のお姉さんですか?」
「え、ええ、そうです。わ、私は颯太の姉の三河優奈と言います……えと、颯太がお世話になってます……」
俺の全力の笑顔が効いたのか、少し頬を赤くしながらも挨拶してくれた。
歳上なのにあわあわしている姿は物凄いくるものがある。
「俺のことは是非親しみを込めて隼人と呼んでくださると嬉しいです。えと……優奈さんとお呼びしても……?」
「あ、はい……全然大丈夫です……隼人君?」
そう言って首を傾げる優奈さん。
一瞬、あまりの可愛さに俺の笑みが崩れそうになるも、ギリギリの所で耐える。
そして1番肝心な事を聞く。
「物凄く失礼だとは分かっているんですが……御年齢を伺っても宜しいでしょうか?」
「え? あ、私は25歳です。隼人君よりも8歳年上ですね」
「なるほど……それではお付き合いを前提として、まず俺と友達になってくださいませんか?」
「―――ふぇ?」
「―――なっ!? な、何を考えているのかしら藍坂君!?」
優奈さんは突然のことにポカンとし、そこに顔を真っ赤にした宮園が割り込んで来た。
「邪魔をしないでくれ宮園。俺は本気で優奈さんと恋人になりたいんだ」
「はぅっ!?」
「だ、大丈夫お姉ちゃん!?」
俺の言葉を聞いた優奈さんが更に顔を真っ赤にし、それを心配する颯太。
そしてそんな俺の言葉に噛みつく宮園。
「まさか一目惚れとか言わないでしょうね!?」
「ん? まぁ端的に言えばそうだ」
「ひゃん!? わ、私が……歳下のイケメンから告白されて……」
優奈さんは案外チョロいのか……?
だがこれはチャンスだ。
チョロいのなんて俺が心の底から惚れさせれば全く問題ない。
彼女いない歴=年齢の執念を舐めるなよ。
何としてもお友達になってみせる。
「どうでしょうか、優奈さん。流石にまだ出会ってすぐでお互いを何も知らないので、今すぐ恋人になって欲しいとは言いません。ですがどんな事があろうとも幻滅などしませんので、お友達ぐらいならどうですか……?」
正直彼女に家事力がなくても俺がなんとかするし、お金は俺が稼ぐし、どんなにマニアックな趣味があろうと受け止めれる自信がある。
流石に俺を殺そうとしてきたら許さないが。
「お、お友達位なら全然大丈夫ですけど……」
「あ、ありがとうございます!! これは組織に入らないといけないですね!」
俺は龍堂代表の方を向き、深々とお辞儀する。
「これからここで働かせてもらう藍坂隼人です! 希望は優奈さんと同じチーム。もし俺の家族と優奈さんと颯太に手を出した場合は問答無用でこの組織を裏切って滅ぼしますが、そうならなければ全力で働く予定です! どうか宜しくお願いします」
俺は笑顔で龍堂代表にのみ殺気を浴びせてそう言うと、顔を青ざめさせて苦笑いをする。
「ははは……これからよろしく頼むよ……隼人君。それとチームは優奈君がリーダーを務める所に配属するから」
「よろしくお願いします!」
こうして俺は組織に入ることとなった。
そして理想の女性の友達が出来た。
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