第17話 落第勇者、異能力者と登校する
あれから俺は組織についてはまた今度ということで今度こそ解散した。
もう午前2時だったのと、次の日の学校に遅れてしまうかもしれないからだ。
後シンプルにまだ頭の整理が出来ていなかったので、1度ゆっくり考えたいと思ったのもある。
俺は誰にもバレないように家に戻ってシャワーを浴びた後、自室のベッドに寝転び呟く。
「まさか帰還してもこんなにファンタジーだったとは……」
『良かったじゃないか。主の好きなラノベ? に似た境遇だぞ?』
イヤリング姿のカーラがそんな事を言ってくるが、それとこれとは話が違うのだ。
『ならどう言う事なんだ?』
「いいか、ラノベで起きることは確かに面白みがあっていい―――が、それを自分がするとなると面倒でしかないんだよ。それに此方は1回クラス転移と言う異世界ファンタジーの出来事を体験してんだから」
普通の人生なら絶対に無縁な出来事に既に1回遭っているのにどうしてまた面倒な事に巻き込まれなければいけないのか。
これが17歳の時なら、俺TUEEEEとかで盛り上がっていたかも知れないが、今の俺の精神年齢は既に27。
もうそんなイキる時代はとっくに過ぎている。
と言うか異世界で1度イキって散々な目に遭っているからもう2度と自惚れないと決めたのだ。
『……まぁ確かに主は昔は物凄く弱かったからな』
「それはしょうがないだろ? だって俺は戦いとは無縁な平和な国で暮らしてたんだから」
逆にそんな国に住んでいる俺たちが英雄になれるまでに強くなれるチートがおかしいんだよ。
まぁ結局俺だけ女神からはチートなんて貰えなかったけど。
それに死ぬ気で努力しても俺より強い奴は結構いたしな。
『主は
「
全力なんて出した日には物理的に俺の体が壊れる。
そんな事になったら回復魔法がないこの世界だと一生寝たきりになってしまう。
『はぁ……全く面白くない主だ……』
「勝手に言ってろ、我儘剣が」
『なっ!? それは———』
俺は何か言い出したカーラを無視して眠りにつくことにした。
そう言えば今度ラノベ好きな友達に異世界転移系のラノベ全部あげようかな……。
もうそういう系はもう懲り懲りなんだ。
「……何で俺がお前と登校しないといけないんだ?」
俺がいつも通り遥が作ってくれた朝ごはんを食べてから学校に行く準備をして玄関の扉を開けると、清々しい朝となる予定だった所に今一番会いたくない人が来ていた。
「いいじゃない別に。どうせ行く人いないんでしょ?」
今一番会いたくない人―――宮園は、全く悪びれもせずにそう言い放つ。
コイツには人の心情を読み取る能力が皆無なのだろうか。
それに行く人なら俺には遥と言う可愛い妹がいるのだが?
「後、組織の上司に引き続き監視を依頼されたのよ」
俺はその言葉を聞いてある程度自分の組織への立ち位置が分かった気がする。
成程な……俺は組織から危険人物とされているのか。
これで断れば家族に手を出す輩が出てくるかもしれないな。
どの組織にも腐った上司と言うのはいる物だ。
異世界ですら愚王が統治している国だってあったのだから。
まぁそんな国は目の前にいるコイツが滅ぼしてたけど。
1人で大国を相手にできるとか恐ろし。
俺だったら多分決死の覚悟で戦っても半々の確率しか無いぞ。
「…………はぁ……分かった、なら一緒に行くか」
「ありがとう。これで私のお咎めは無しになったわ」
それが狙いだったのか。
だからわざわざこんな朝から知らない筈の俺の家まで来ていた訳ね。
俺は自分の家を光輝以外にはアイツの幼馴染である紗奈にしか教えていない。
何せ我が妹が学校でモテ過ぎて、男子から俺の家は何処にあるかとしきりに俺のクラスの奴らに聞いて回っているのを知っているからな。
それを言ったら光輝も何だが、アイツは散々ストーカーされ過ぎたせいで慣れたらしく、聞かれれば素直に答えているらしい。
その事を聞いた時は思わずゾッとしたのを覚えている。
「ねぇ、何でダンマリを決め込むのかしら?」
俺が必死に宮園に意識を向けない様にしていたのに、宮園から話しかけてくる。
「で、何だ?」
「…………どうして私からそんなに離れるのかしら? ……もしかして私が嫌いなのかしら……」
後方10mにいる俺に向かって顔を向ける宮園。
心なしか……と言うかめちゃくちゃ不機嫌そうな顔になっていたのだが、突然何をひらめいた顔に変化する。
ああ……何か嫌な予感が。
俺の予感は見事的中し、宮園が突然ズンズンと此方に近付いて隣に並んできた。
そして俺の顔を覗き込みながら、
「また私から離れないでよ?」
と言って来たので俺は笑顔で告げる。
「嫌だ」
「な、ど、どうして……?」
断られた事に動揺する宮園だが、そんな宮園に周知の事実を突き付ける。
「だってお前と一緒にいると嫉妬の強い視線を感じるんだもん」
「――――――え?」
宮園が辺りを見回すと、俺たちを衝撃的な物を見る様な目で見る同じ学校の男女達。
まぁその大半が俺への怨みや嫉妬の篭った睨み何だが。
「……な? 俺の言った通りだろ?」
「……そうね……今度からは離れていても何も言わない事にするわ」
俺たちは朝から精神的に疲労困憊になりながら教室へと向かった。
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