第8話:反転堕天のブラックスワン 下
カラスといえば、どんなことを思い浮かべるだろう。
まず「黒」かな。あとは不気味さをおぼえたり、あのガーガー鳴く声におそろしさを感じたり。とりあえず第一印象として不吉という二文字が浮かんだりしないかな。
そして次に考えるのは、その頭の良さだとおもう。
カラスという生き物は同じ体格のニワトリに対して数倍の脳をもち、体重と脳の比率は犬や猫よりも高く、また知能のたかい生き物特有の細胞配列をしているそうな。
さらには独自のコミュニケーション方法があり、悪さをしてきた人間をおぼえ、仲間に伝えることができるらしい。
しかも、それを年単位で忘れることがない。二十五年も育てているのに毎日が、
「はじめまして」
なアホのダチョウとは、くらべものにならないくらいのかしこさを持っているのだ。
でも、この頭のいい生き物には、ちょっとこまった面もある。
イルカなんかがいい例だけれど彼らは頭がいいから生きるのに必要のない、そのくせどうしようもないほど迷惑千万なイタズラを思いついてしまう。頭のいい生物にしかイジメがないというのがなんだか虚しいね。
そして頭のいいカラスもシカに対し、どうしようもないほどド畜生な悪さをはたらくんだ。
なんとカラスは、シカの耳に糞を詰める。
なんの意味があるのかわからないし、シカもあまり気にしていないようだけれど、でも側からみていると悪魔の所業でしかない。
そんな頭が良くて、でもちょっと邪悪な存在。
それがカラス。
そこで一つ質問だよ。この世にはたして「白」いカラスというのは存在するのでしょうか。
まるで「黒い白鳥」が存在するのかみたいな、とても奇妙な質問だね。
でも、僕はみんなにこのカラスのパラドックスを押しつける。
だってそれは、とても大事なことだから。
「さてと、どうしたものかなあ」
僕はめずらしく、なにか用があるわけでもないのに真っ昼間の校庭でのんびりしていた。
ミサキちゃんが倒れてから一日がたった。唯一おみまいに行ったナインちゃんの話では、今日は帰るのも禁止ということらしい。
それに焦るでもなく、絶望するでなく、どこかホッとしたような空気がながれるのが僕たちチーム「ミサキちゃんズ」である。うん、ポンコツだね。
まあ、よくある光景だ。
とりあえず借金返済の催促を乗りきった、みたいな。結局、なにも解決していないんだけれど。
試験期間はのこり三日。でも、僕たちはなにも成し遂げていない。
まだクリアできていないのは僕たちチームミサキだけだ。僕たちにチラつくゲームオーバーの文字。ああ、つらい。もうちょっと、イージーモードにしてほしいよ。
アチョに一つ仕事をたのむと、小包をかかえ、僕はひとりとぼとぼと医務室にむかっていた。
学生時代、ずっと保健室でサボっていたからかな。僕はこの秘密の隠れ家的場所と親和性がたかいとおもっていたのだけれど、この学園はそうじゃないみたいだ。
病院のような白、病院のようなすっぱい匂い。僕が知っているはずの保健室はそこになく、ただひえびえとした無機質さがただよっている。うーん、なんだかオバケがでそう。
僕がとびらをノックして入った。返事は聞かなかった。だって、たぶん無視されるし。
医務室のなかはとても簡素なベッドたちがならんでいた。その一番奥にいるのがミサキちゃんだ。
彼女はベッドから身体だけをおこし、ひざのうえで本を開きながら窓の向こうをながめていた。
そういえばお見舞いの品わすれたなあ。彼女はそんな僕をちらりと一瞥しただけで、また窓のむこうに目をむける。
僕もなにも言わず、ベッドわきのイスに腰かけた。
「聞いたよ。授業中に倒れたんだって?」
彼女はなにも答えなかった。ただ結んでいたくちびるを自嘲気味にゆがめただけだった。
あなたに心配されるなんて私も堕ちたものだわ、とか考えているのだろうか。
たぶん、考えているんだろうなあ。ああ、やっぱり僕ってダメダメだったらしい。妄想でかってにへこんだ僕だった。
でもそんなことおくびにも出さず、彼女はそっぽを向いたまま言った。
「迷惑かけて悪かったわね。明日からはもどれるから」
とても冷静な声だった。とてもいつもどおりな声だった。
たぶん、言いたいことはあったんだと思う。いや、なくちゃおかしい。倒れるなんて、抱えこみすぎてなきゃおきっこない。自分だけじゃ背負えない重荷がずるずると足を引きずっているなんてこと、うすうす頭のどこかでわかっているはずだ。
ここにいたのが僕だから、っていうのはもちろんあるだろう。
でも彼女はたぶん、誰にだって自分をみせない。つるが機織りのすがたをみせないように、魔法をかけるための努力を彼女はさらさない。
自分を理想の姿にペタペタとぬりつぶすんだ。
僕には、なんだかそんな声にきこえた。
「そっか。じゃあこれ」
そう言って、かかえていた包みを手渡す。
唐突だったからだろう。彼女はとてもけげんな顔をした。
けれど、つっかえすのもどうかと思ったのだろう。眉をひそめ、何度も確認をとるようにいぶかしみながら受けとった。
いや、いくら僕だって何も持ってこないわけないじゃん。どれだけ常識知らずなんだよ。
彼女がゆっくりとその包みをあける。
そして、その包みのなかからビンにはいった黒の染色料がでてきたとき、彼女はとっさに髪の毛の根元をおさえようとした。
僕はおだやかに言った。
「こっちの方がいいよ。あの黒は、ちょっとつやつやしすぎだから」
ミサキちゃんはおおきく目を見開くと、ピタリとその手をとめた。
さあさて、最初の質問に答えようかな。聞いたよね。「白」いカラスが存在するのか、と。
正解は、まあいうまでもないか。
白いカラスのその正体。このミサキという少女こそが、ありもしなそうないきものの写身だった。
白変種。英名ならリューヒシュティックかな。眼皮膚白皮症、いわゆる先天的色素異常のアルビノとはちがって色素をつくらないことを選択した、突然変異種である。
つまりは、どんなときもつややかでそのカラスのような黒髪はウソなのだ。真っ白な上からぬり重ねたいつわりなのだ。
近づいてみればわかる。
睫毛も白くて、肌も白くて、産毛まで白くて、ムダ毛は一切生えていない、どこまでも白くて、まるで白鳥のようにキレイなんだ。
でも、彼女はカラスなんだ。真っ黒なはずの、鴉なんだ。
これがどういうことかわかる?
これがどんなに残酷なことかわかる?
彼女は生まれながらにして一人なんだ。孤独という運命を背負ったんだよ。こんな細身の彼女には、とても酷なことにね。
「昔聞いたことがあってさ。名家の落胤に凶兆のきざしがあったって。すぐかき消えたから、本当だとおもってなかったけど」
ミサキちゃんはわなわなくちびるを震わせると、とても真っ青な顔でこちらを見た。なんで、かな? 心配しなくてもおどしたりしないのに。僕って信用ないなあ。
「でも、ここはとても割りきった実力主義だからね。いくら禁忌といえど、実績さえあれば許されるかもしれない。ま、キミはもっと単純な目的のためなんだろうけれど」
そもそもおかしいのだ。鳥類というのは、空を飛ぶという力のかわりとして、メンタルが弱く、身体が弱く、力もなく、とても真っ向からの戦いにむいている生き物ではない。
なのに、彼女は現段階でそこそこな強さをもつ。もちろん最終段階までいけば最下層だろうし、今だってポツポツ粗はみえる。
でも本当なら、もっとブチ抜けて最下位にならないとおかしいのだ。
だったら、それを覆すには魔法しかない。
世界をひっくり返してしまうような、そんな魔法を。
——白変種は、能力値が五倍になる。
こんなのゲームの設定でしかないけれど、たしかに特別感はある。納得感はある。
だから神という存在は、メインヒロインにふさわしい姿と力を彼女にあたえたんだ。
とても残酷な、つらい過去とひきかえに。
「当ててあげようか。復讐でしょ?」
びくっと肩をふるわせたミサキちゃんは、動揺をさとられないようにうつむいた。握りしめられた膝もとの毛布にシワがよっている。
でも、手をゆるめたりしない。
だって、僕がなぐさめたところで何も生まれないから。
「この学園を主席で卒業すれば、好きな部隊を選べるからね。ううん、もしかしたらその相手がこの学園にいるのかな?」
なんて。僕はぜんぶ、知ってるんだけれど。
子供のころ、ミサキちゃんには将来を誓った相手がいた。
現代風にいうなら従兄弟のお兄さんといったところかな。四つうえで、頭が良くて、ハンサムで、幼い彼女のあこがれそのものといっていい人だった。
そしてミサキちゃんの家は貴族としてはすこし特殊で、宗家とよばれるものはなく、いくつかの分家のなかですぐれた人がトップに立ついわゆる立憲君主制のような仕組みをしていた。
そんななかある分家の一人娘として生まれたミサキちゃんは、白変種ということを隠して育てられた。
両親とその将来の良人。その三人しか知らない、だれにも明かさない秘密をもつ少女として。そんな瑕疵を感じさせない、とてもまっすぐな少女として。
けれど、その日は突然おとずれた。
あかく燃える空、稲穂のなかでうごめく影、きらりと光を照りばえさせる無数の刃。
バレたのだ。彼女が、禁忌の子であることが。
そこで回想はとばされる。僕が知っているのは、燃えさかる館と泣きじゃくる少女というCGだけ。
そして彼女は報復を誓い、信頼できる唯一の相手を頼るんだ。
けれど、そこで知ることになる。
信じた人こそが、手引きした仇だったことに。
うつむいていたミサキちゃんは、まるでこころをしぼるように言った。
「……無意味だって、言いたいの」
「どういうこと?」
僕はとてものんきに聞き返す。これが、彼女の琴線にふれたのだろう。
ミサキちゃんは身体をつよくふるわせると、ばっと顔をあげて胸ぐらにつかみかかってきた。
「復讐なんて無意味だって、そう言いたいのかって聞いてるのよっ! ふざけないでっ! あなたに、あなたなんかに、私の何がっ。私のなにがわかるっていうのよっ!!」
彼女はぽろぽろ大粒の涙をこぼしながら、それでも僕の目をまっすぐ見つめて叫んだ。
「私はこのためだけに生きてきたっ。私はこのためだけに生まれてきたっ。他は何もいらないっ! いらないのっ! こんな命、なくなったっていいっ! あいつさえ、あいつさえ道連れにできるならっ……!」
ミサキちゃんがすべてを拒絶するように首をふる。
でもね、僕はそうは思わない。キミ自身は覚悟をぶち決めているつもりかもしれないけれど、そんな風には見えないんだ。
キミが本心から、そんなことを言っているようには見えないんだ。
だって、そうだろう。
キミは主人公くんをたらしこんだりできたじゃないか。
イケメンくんから譲歩を引きだしたりできたじゃないか。
もっとずるく、かしこくやれたはずじゃないか。
でもそうはしなかった。堕天できたはずなのに、キミは真っ白のままだった。白くあろうとしたんだ。
だったら、心の底はまだあきらめちゃいないはずなんだ。
僕は言った。
「僕はね、白鳥の歌がきらいなんだ。だって腹が立つじゃない。なんだか人生のすべてが伏線みたいでさ。僕たちは生きてるんだ。今を生きてるんだ」
それが転じて、亡くなる直前こそもっともすぐれた作品を生み出すという意味になった。
これを聞いて、どうおもう? 美しいと感じるかい?
でも僕はね、クソ喰らえっておもうんだ。
バカにしたいんじゃない。でもわかるだろう。人生の最後が一番美しいだなんて、そんな幻想的なことが現実にあるわけない。年老いて、傷つきもがいた死に際がすばらしいわけがない。ボロボロで掠れるような悲痛の叫びが、泥沼から這いあがるような声が、どこまでもすみわたるわけがない。
みんなわかってるんだ。結果にドラマはあっても、過程にドラマがないなんてこと。
とっくのまえにイグノーベルが証明した。すぐれた論文と科学者のキャリアに関連性がないことを。デビュー作が、晩年の大作が、ふとした拍子に誕生した手慰みが、その作者の傑作になるということを。
ぜんぶ関係ないんだ。知ってるはずなんだ。この世のストーリーなんてぜんぶ後付けだってことを。じゃなきゃ僕たちは空想に恋焦がれたりしないじゃないか。現実から逃げたりしないじゃないか。
みんなわかってるんだ。この伝承がウソだって。
でもいつわりだとわかっていて、それが幻想的で非現実的で空想上のストーリーだとしても真実だと願っているんだ。
だって怖いじゃないか。
僕たちのゴールが、そんなみじめでつめたくて、どん詰まりだなんて、だれだって認めたくないんだ。だからありもしないストーリーをこしらえてすがったんだ。
それはごまかしじゃない。悪じゃない。本能なんだ。こころというもろくてありもしないものを守ろうとする、人間というよわさのあらわれなんだ。
だから、あえて言うんだ。
クソ喰らえってね。
「あなた……」
なんだか戸惑ったような表情でまじまじとこっちを見るミサキちゃんに、僕は目をほそめた。
「僕も、帰れないんだ。永遠にね」
永遠。うん、とてもいい響きだね。
それは人の夢だ。呪いも、占いも、魔法も、錬金術も、科学さえも。
僕たちおろかな人間が恋し、追いかけ続けてきたファムファタル。
片思いをしてきた黄金という名の究極。
でも、逆なんだ。
永遠じゃないから、永遠にこがれる。ときがながれるから、僕たちは一瞬を切り取ろうとするんだ。
だってそうだろう。僕たちの人生は各駅停車だから、あらがえない運命という名の車窓をながめることしかできないから、その一瞬に感動するんだ。美しくおもえるんだ。
だから、僕たちは生きなきゃいけない。どれだけ苦しくても、どれだけみじめでも、やかましくわめき続けなきゃいけない。いけないんだ。それこそが、もっとも美しんだと信じて。
なぁんてね。
喘ぎ声がうるさいのは、勘弁だけど。
「知ってる? あのアホなアチョはね、のんきだけれど、だからってなにもなかったわけじゃないんだ。血が強すぎたんだろうね。ただバカにされていることに気づいていないだけなんだ。アチョだけじゃない。みんな、なにかしらあってここにいるんだよ。キミは特別かもしれないけれど、根っこはちがうかもしれないけれど、でも何もかもちがうわけじゃない」
ごめん、これはウソだね。
でも、僕はキミを毟ったりしない。キミを丸裸になんてしない。そのうえでより添ったりなんて絶対しない。
とてもぶ厚いコートのうえから頑丈なくさりでがんじがらめにして、そして僕たちというカスみたいな錘をつないで、そのうえで言うんだ。
戦えって。
キミが死んだら僕たちも死ぬんだぞ。だから戦えって。
守ったりしない。庇ったりしない。断崖絶壁のぎりぎりで背水の陣をひかせ、キミの足を引っ張りながら叫ぶんだ。助けてって叫びつづけるんだ。
それが、キミを強くするってわかってるから。
ごめんね主人公くんじゃなくて。でもね、僕はイチャイチャなぐさめてもらうキミじゃなくて、一人ひたむきなまま羽ばたくキミがみたいんだ。
こんなのぜんぶ、僕のわがままなんだけれど。
「僕たちはさ、もう一蓮托生なんだよ。キミがぜんぶ背負うなんてムリなんだ。いまさら降りるなんて許されないんだ。そんなのキミはもうわかってる。そして僕らもわかってる。そうでしょ?」
そう言って僕がうしろをみると、そこにはどこかバツが悪そうな三馬鹿らチームミサキちゃんズの姿があった。
さっきアチョに頼んだのがこれだ。まあでもナインちゃんの姿をみるに、さっさと彼女を頼ったらしい。
うーん、冷静な判断とほめたらいいのか、人をあつめることもできないことを責めたほうがいいのか。困ったものだ。
そして僕はすでに説明しておいた。彼女がどうして倒れたのか、その本当の理由を。
「あなたたち……!」
彼女はすこし責任感が強すぎだ。まあ原因こそあおったせいだけれど、そのあとは主人公くんがわるい。でも責任をとるため彼女は、彼とたたかう約束をして、そのうえで昼も夜もこそこそトレーニングをしていたのだ。
イケメンくんにも頭をさげて協力をお願いしていたらしい。よくやるものだ。僕にはどっちもできない。
……いやまあ僕だったら最初っから助けてもらおうとしただろうけれど。
で、情によわそうな三馬鹿たちはこうやってしゅんとしながら集まっているのである。
ちなみにモブBは呼ばなかった。モブAは最初からミサキちゃん派なので無視した。でもなんかいるけど。
そのうしろからナインちゃんがどこか申し訳なさそうに出てくる。まあ想像するに、彼女は過労の事情とかを聞かされていたのだろう。だって、オーバーワークの理由とか医者あたりに問われてそうだし。
でもそこで引っ込まないのがナインちゃんのいいところだ。
彼女はこれまでミサキちゃんがどれだけ頑張っていたか、自分たちがこれからなにをするべきか、とても情熱的にかたった。
実際にそうなのだ。
ミサキちゃんはがんばっていたし、僕たちは足を引っ張っていた。五割ぐらいはあの主人公くんのせいだけれど、最初からもっと団結していればうまくいったかもしれない。
これを言ったのが僕だったらうまくいかなかっただろうけれど、そこはさすがナインちゃんだ。彼女に任せていればなんとかなるだろう。あー、つかれた。
僕はほっと肩の荷をおろすと、隅っこのほうでダラーンとしていた。
「ご主人っ! どうしたっ!」
アチョがかけ寄ってくる。うーん、そんな変な感じだっただろうか。このアホはびっくりするぐらいアホだけれど、なんだかときどき鋭いときがあってドキッとさせられる。
なんだよ、ずっとアホでいてくれよ。って、ちょっとひどいね。でも人間、ないものねだりしかできないんだ。
そのまま僕がボーっとしている間にいろいろとあり、いくばくかの話し合いがあったあと、
「私たち全員そろって、ぜったいにクリアするぞぉっ!」
とナインちゃんのかけ声にあわせ、チームミサキちゃんズは円陣をくんだ。
恥ずかしそうなミサキちゃんも、バツの悪そうな三馬鹿も、何のことかわかってなさそうなアチョも、そしてとてもやる気なナインちゃんも。チーム一丸になれば、チームがまとまりさえすれば、まるでまばゆい未来が開けんばかりに決意を叫んでいる。
でも、でもね。
でも僕だけは、とても冷めた目でその光景をみていたのだ。
「ああ、なんだかとってもむなしいなあ」
ってね。
いやいや、べつに団結とか友情とかを否定したいわけじゃないんだよ。そりゃもちろんそんなキラキラしたものから見捨てられてきたし、なんだったら自分から捨ててきたのだけれど、じゃあそれが無価値だとまで思い込んじゃいない。
でもさ、じゃあ僕は思うわけだよ。こころがびゅうびゅうするわけだよ。原作だなんて人のなかを神さまみたいにのぞいてしまっている僕だからこそ、そんなことを思ってはいけない僕だからこそ、思ってしまうんだよ。
ああ、人ってなんて残酷なんだろうって。人ってなんて、汚いんだろうって。
ね、そうは思わない?
キミだけは同じ気持ちじゃないかな、ナインちゃん。
——だってキミは「裏切り者」なんだから、さ。
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