悪役貴族Tレックス 〜エロゲの悪役になったけど、開き直って『獣』のまま女の子狙います〜
原田孝之
プロローグ
第1話:悪役貴族Tレックス 上
人の本性は獣である。どこぞの偉い人の言葉だ。
たぶん、それは真実だと思う。
恋愛初心者で、
魔法使いになり、
釈迦になった僕でも、性も欲もないわけではない。
うん、ごめん。カッコつけた。
めちゃくちゃあります。
欲望むき出しなんです。
むき出しどころかこじらせてしまって、二次元、それもパツキンアメ車とか、銀色スポーツカーとか、たとえ国産でも乗ったら即人生の免停になりそうな、架空の存在しか愛せなくなってしまったのだ。
でも、ちょっと待ってほしい。
「獣」って、そういう意味じゃなくない? と。
そう思ったのは転生して十五年目。
結局ヒキコモリな僕が、平民にしてはまあまあな豪邸で窓枠に肘を付き、ズボンに片手を突っ込んでいたときのことだ。
感性だけ純正日本人な僕は陰翳礼讃の精神を尊べるので、
「あー、月きれい。あと世界滅べ」
と、影が相手でも満足できる。
……はずなのだけれど、今日はちがった。
小さな違和感だった。
けれど、その前に自分語りをさせてくれないかな。
僕には、ひとつだけ自慢がある。
なんていうかな。
常勝不敗のエクスカリバーというか、
暗黒深淵のゲイボルグというか、なんだろう。
つまり、アレが硬い。
とってもカタイのである。
おっきくはない。
比べたことないけど、硬さも比べたことないけど。
ただ、通勤中に眠りこけていた僕を見て、女子高生が、
「うわぁ、ガッチガチじゃん」
と言っていたので多分硬い。
うん、死にたいね。
少し脱線したけれど、僕は自慢の息子に少しでも家族サービスしてやりたいと思っている。
なので、ぬくぬく布団に包まりながら春画片手にガサゴソしていると、ふと気づいたのだ。
あれ、マジで硬くない?
というか、なんかチクチクするんだけど……。
そろーりと下穿きをまくって、ホウケイ(中国風)な僕のマイさんをみると、そこには本物にしてモノホンな獣が居た。
誇張なしにガチ獣が居たのである。
筋肉質な体躯、
白地に黒の縦縞、
針金のような全身を覆う毛。
かわいらしさなどカケラもない、王者の姿だった。
――というか、Tレックスだった。
僕は布団から出ると、家中を駆けまわった。
真夜中なので親がうっとおしそうにおきてくる。
僕が下半身丸出しではね回っていると、父が忘れていたとばかりにポンと掌を叩いた。
「あ、定期的にエッチしないと獣に戻るから、俺ら」
豚相手にヤってたときは笑ったなあと父が大爆笑しているけれど、僕は全然笑えなかった。
だって童貞だよ?
前世も併せて半世紀もの、
国宝級の天然記念物だよ?
それが、豚?
豚みたいな女の子でもやなのに、本物の豚って。
自殺通り越して、天寿を全うするくらいショックだ。
っていうか、豚の兄弟がいるの?
とても混乱したのだけれど、だからこそ決断は簡単だったのだろう。
僕はヒキコモリをやめた。
余裕でやめた。
そして決意したのである。
女の子とのエロエロを目的に、
暴虐非道で極悪凶猛な天に弓ひく無法者、
その名も悪役貴族Tレックス。
この世のクズに、オレはなるっ! と。
バカみたいな話だろう。
でも、本当の悪役ってこんなもんかな、って思ったのである。
ということで僕はディードリット君のように家に火をつけ、故郷をあとにすると、運命の恋人を探して旅立ったのだった。
……あ、やっぱり火つけるの、
「体は大丈夫なの?」
とか心配してる風に見せかけてヒキコモリをバカにしてくるオバはんの家にしとこ。
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