散り芥

物部がたり

散り芥

 アジアのどこか――ゴミ山で生計を立てる、ソフィアという少女がいる。ゴミは世界中から集められ、様々なゴミが分別なく捨てられていた。

 その中には、お金になる電化製品の部品や、時計などのブランド品から貴金属などが捨てられていることもあった。

 ソフィアは家族の為、毎日ゴミの山に登りお金になりそうな物を探していた。ゴミの山を探索するのはトレジャーハントのようで楽しかった。

 お金になる貴重なゴミが見つかったときなどは、美味しいものを食べたり、欲しいものを買ったり贅沢もできた。

 周囲には自分のような境遇の家庭や子供たちしかいないので、他者と自分を比べて不幸を感じることもなかった。


 家族に必要とされ、仲間に必要とされ、ソフィアの心は満たされていた。

「このゴミ山におれたちの秘密基地を造ろうぜ!」

 ソフィアの仲間の少年がある日、そんなことを言い出した。

「それいいな」

「ぼくらの秘密基地を造ろう」

「あたしたちも仲間に入れて」

 と、誰もが賛同した。ソフィアと仲間たちは、ゴミ山のゴミを集めて、基地を作ることにした。ゴミ山をちょっと探せば、屋根や壁、ドアに使えそうなゴミがすぐに見つかった。

 ソフィアたちは力を合わせて、ゴミを運び、絶妙なバランス感覚で積み上げた。


 重くて運べないゴミは、知恵を絞り、工夫して運んだ。仲間と協力して問題を解決するのは達成感があった。

 それから数ヵ月後、ソフィアたちはゴミくずでカカシを作り秘密基地のシンボルとして、秘密基地は完成した。小さなバラック小屋のような秘密基地だった。

「やっとできた! ここには、おれたちの宝物を隠しておこう」

 ソフィアたちは、ゴミ山で見つけた宝物を秘密基地に持ち寄った。ぬいぐるみもあれば、綺麗な石もあった。貴金属類や鉄くずなどもあれば、わけのわからない物もあった。

「今日からここがおれたちの基地だ」

 ソフィアたちはその秘密基地を拠点として、探索に出たり、食事をとったり、休んだり、遊んだり、寝たり、楽しいひと時を過ごした。


 だが、秘密基地での生活は長くは続かなかった。

 政府の方針で、悪臭や治安、環境問題からゴミ山が撤去されることになったのだ。ゴミ山で生計を立てていた人々は当然抗議した。

「俺たちはこれからどう暮らしていけばいんだ!」

「そうよ。勝手だわ!」

 だが抗議活動も虚しく、政府はゴミ輸入を制限し、ゴミ山撤去に乗り出した。ゴミ山は重機でみるみる片付けられ、政府の勝手な理由でソフィアたちの秘密基地は壊された。

 ソフィアたちはこれから、どうすればいいのかわからなかった――。

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