俺とあいつが幼馴染にもどる方法
パンドラボックス
🔳プロローグ
自由とは孤独である、by俺。
まあ何が言いたいかというとだ。高校に入学してからまだ友達のひとりも作ろうとしていない俺は限りなく自由に近い存在というわけだ。
友達が“出来ていない”のではなくて“作ろうとしていない”、そこがポイント。
俺の精神衛生上ここは譲れない。
つまり俺は己の意志で友達を作っていない。
そう、
むしろ伸びしろしかない。
我ながらこの潜在能力は空恐ろしい。
俺はやる時はやる男だ、だがそれは今じゃない。
「たかが一週間さ……」
自分に言い聞かせるように独りごちる。
まだ焦るような時間じゃない。
それにクラスメイトと話す機会が一切なかったわけでもない。
プリントの受け渡しとかで「あ、うん」くらいの会話はあった……心ない人はそれを「会話じゃなくて相づちじゃね?」とか言うかもしれないけど。
あとあれだ、天気の話とかしたわ。いやー、びっくりするほど話広がらないな、あれ。「挨拶は天気の話から☆」とか最初に言い出した奴を小一時間ほど問い詰めたい。
ちなみにこれでも中学校時代に比べればはるかにマシだったりする。
この調子なら友達ができるのもそう遠い日ではない……たぶん。
と、俺のことはさておきだ。
このクラスにはもうひとり、ぼっち――じゃなくて限りなく自由に近いやつが存在する。
教室の中央、まるでそこだけ隔絶されたかのように誰も寄り付かない空間があった。
その中心の席にはひとりの女子が座っている。
目立つように派手に髪を染めている奴なんていくらでもいる中、誰よりも人目を惹く黒い長髪。
涼やかを通り越して氷点下にいたる瞳。
目元と口元にはほくろがあり、その整った顔を艶やかに彩っている。
透けるように白い肌に、華奢な体躯からすらりと伸びた四肢。
百六十センチ後半だろうか、クラスの女子の中では身長は高い方だ。
教室の賑わいなんてまるでないかのように背筋を凛と伸ばし文庫本に視線を落としている。
俺の席からは後ろ姿しか見ることは出来ないが、ここからの光景はまるで触れることさえ禁忌とされた名画を彷彿とさせる。
彼女の名前は
奇しくも同じクラスの中で互いにソロプレイヤーをやっている俺と柊都子だが、実は面識があったりする。
――『今日でお前とは絶交だ』
昔の記憶が脳裏に過る。
そう、あいつは――……都子は小学五年生の時に俺が絶交を突きつけた幼馴染だった。
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