第2話

 教室には放課後どうするーとか、帰ろうぜーって声があちこちから聞こえる。

「つくるグッドラック」

「任せろり」

「緊張して変なことすんなよー」

「しねーよ」


 ひかりと健と別れをつげる。

 目指すべきは彼女の席へ。

「小林さん。教員室行きましょう」

「佐藤くん。急にごめんね」

「大丈夫」

 か、かわいい。申し訳なさそうにする小林さんかわいすぎ。後藤お前学校夏休み明けまで来なくて良いからな。


 小林さんの隣で教員室まで歩く。まるでカップルみたい。

「佐藤くんあほの顔してるけど大丈夫?」

「あ、えーっとね、甘いケーキ食べるの考えてた」

「ほんとー?数学の時も何か考えてたよねー」

「それもケーキだよ」

「ケーキ大好きなんだねー」

 笑っている彼女と目が合う。ああ、吸い込まれちゃう。俺今めっちゃ幸せ。


「じゃあ小林と佐藤この荷物を旧校舎まで持って行ってきてくれ、ごめんな」

 そこには重そうな段ボールが二つあった。このままでは小林さんが片方持つことになってしまう。

「じゃあ佐藤くん一個ずつ持とっか」

「いや、小林さん」

「?」

「俺が二つ持つから小林さんは交通整理をお願いしたい」

「えー、大丈夫だよ」

「いや、これだけは譲れないんだ」

「わかったよー」

 強引になってしまったが彼女の負担を減らせた。ああ、俺かっこいいかも。

「あ、あれ。何これ軽すぎ」

「ふふっ。佐藤くんそれ中身雑巾だからね」

「んな」

「だから私も持つよって言ったのに」

「佐藤かっこつけてるいとこ悪いけど、重い荷物だったら重い荷物だったらお前呼ばない」

 は、はっず。俺はっず。

「し、知ってたし。小林行くぞー」

「あー、佐藤くん逃げないのー」


 ***

 無事軽い荷物を運び終えて俺と小林さんの共同作業が終わった。

「佐藤くん色々とありがとうねー」

「ぜんぜん大丈夫だよー」

「佐藤くんって面白いねー。今日可愛かった」

「数学の時だったり、張り切って荷物運んだり。なんかアホなワンちゃんて感じで可愛かったよー」

「あ、ありがとうございます」

 やばい。顔がめっちゃあつい。多分外から見たらトマトみたいなんだろうな。

 ああ、恥ずかしい。

「小林さん、「美雨今帰りー?」

 な、なんとそこには金髪の男がいた。

「まだだよ」

「一緒に帰らね?」

「いや、まだ時間かかるから先帰ってて」

「ほいよー」


「小林さんあの金髪の人彼氏だったら遠慮しないで」

「いや、あれは幼馴染で家も近いだけ」

「あ、そうなの」

「佐藤くんってこのあと暇?」

「めっちゃ暇」

「今日手伝ってもらったし、ケーキ奢ろうか?」

 こんなチャンスを見逃すわけにはいかない。

「いく、いや行かしてください」

「じゃあ教室帰ろうかー」

 ああー、俺めっちゃ幸せー。


 小林さんと一緒に下校する。

「小林さんって部活入ってないの?」

「うん特に入ってないよ」

「でも足めちゃめちゃ早かったよね?」

「なんで知ってるの?」

「実は去年のクラス対抗リレーで小林さんに追い抜かれちゃって」

「あ!あの時バトン落とした人って佐藤くんだったの!」

「そう、落としちゃったね」

 バトン待ちの時に小林さんの隣にいて、嬉しすぎてバトンが落ちたなんて絶対に言えない。

「佐藤くんって意外とドジなんだね」

「いやー、そんなことないよ。家では頼れるつくるお兄ちゃんて言われてるよ」

「ぜったいうそ!朝とか一人で起きれないからよく遅刻して武田先生に怒られてるじゃん」

「そ、そんなことないよー。元神童だったし。」

「元神童くん、数学解けなかったじゃーん」

 小林さんと過ごす時間がずっと続けば良いのになー。


「よし、ついたよ」

 まさかのケーキ屋さん永だった。ここって確かひかりのバイト先なんだよなー。




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