堕落と至美

川崎ゆき

序章

「人は誰しも美しく純白である天使の喜びを知っている。しかし、人は時にそれを穢す悪魔の悦びを知る。」

――そう言ったのは誰であったろうか。


持たざる者は常に"高み"を求めて心を悩ますが、

"高み"にある者もまたさらなる“高み”を求めて心を悩ます。

すなわち“高み”とは、最高の刺激(スパイス)であり、最高の快楽(エクスタシー)なのだ。

つまり人々は不変を嫌う。

それはどんなに完璧な人であっても同じこと。

“不変を望む者”が存在するのではなく、

“己の渇きに気づかない者”が存在するのみなのだ。

その“不変”が壊されたとき、彼らは悲しみに暮れるかもしれない。

しかし、一度ベールを剥された者は、たちまち己の執着していたことの愚かさに気が付く。


彼らが鏡を覗いたときに映るのは、

牙を研いだ悪魔か、羽根を削がれた天使か。

それを知るのは彼ら自身のみ。

しかしそここそが我々の求める“高み”なのかもしれない。

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堕落と至美 川崎ゆき @yuki_kawasaki18

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